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No.337(2015/9/1)
チリの労働改革の動向

 南米の先進国、チリが労働改革問題で揺れている。7月11日の土曜日、首都サンチアゴや主要都市では、チリ中央統一労働組合(CUT)の呼びかけで、労働改革を求める大きな集会とデモ行進が行われた。サンチアゴでの集会で、CUT のフィゲロア会長は、「国会で労働改革が論議されているが、内容が後退することがあれば、ゼネラルストライキを行う。今後、全国で行動を積み重ねていく」とアピールした。14日には、同会長が首相府に労働大臣を訪ね、労働組合の要求と活動方針を伝えた。
 チリは南米では唯一のOECD加盟国であり、経済成長は、最近では主力産品の銅の国際価格低下により伸び悩みが見られるものの、4~5%程度(GDP)が続いており、消費者物価の上昇も2%以下に安定している。一人当たりGDPは約1万6000ドル(約192万1440円)に達し、中南米各国からの外国人労働者の流入が社会問題となっているが、最近では、旧宗主国スペインからの移住労働者の急増が話題となった。今日のチリの経済や財政は「南米らしくない健全性」(三菱UFJコンサルティング)などとも評されている。
 一方、労働関係の制度は、現在なお軍事政権時代(1973~1989年)の骨格を残している。労働組合は、労働法制が団体交渉やストライキを抑制し、民間労働者の約4割を事実上、対象外としていることなどを強く批判、基本的な改正を求めてきた。使用者側は、現行制度は、請負労働者の親会社の責任を重視し、労働裁判では9割以上が労働側勝訴であることなど、労働者を過度に保護しているとして制度の改正を求めており、この動きには日系企業の商工会も参加している。
 2014年3月の大統領選挙では、決選投票で、中道左派のバチェレ氏が、それまでの与党の保守系候補を破り選出された。2014年12月、大統領は、選挙での公約を踏まえ、労働法制の改革法案に署名、チリ国会は3月から審議を開始した。同法案は、団体交渉において交渉代表制度(最も代表的な組合が交渉の当事者となる権利を持つ制度)を導入すること、ストライキに参加した労働者の配転など、不利益取扱を禁止することなどを規定。また、ビジネス界への配慮として、法律違反の労働争議の制裁強化や労働時間規制の緩和などを盛り込んでいる。労使双方から修正要求が出されており、国会審議は、9月がヤマ場といわれる。

*1ドル=120.09円(2015年8月27日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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