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No.335(2015/8/25)
タイの労働組合が最低賃金改善キャンペーンへ動く

 タイでは、インラック政権時に大幅に全国最低賃金が改定されたが、その後の軍事政権下では改定されてない。ここにきて、バーツの対ドルレートがこの6年来最低に落ち、生活費の高騰に加え輸入品の物価の上昇予想、干ばつの影響などから、最低賃金改定の声が強くなってきている。また、県ごとの地域最低賃金の実現を訴える経営側と、あくまで全国一律最低賃金の維持を主張する労働側との対立が激しくなっている。
 7月14日、インダストリオール加盟のタイ労働組合が、全てのセクターを網羅する全国最低賃金(日給)である現行300バーツ(約1047円)を、360バーツ(約1256円)へ引き上げるキャンペーンを開始した。そして県ごとに決める最低賃金への復帰には、あくまで反対するとしている。
 現行の全国最低賃金は、インラック前政権により2013年に215バーツ(約750円)から引き上げられた。労働組合側の要求は、最近の生活コストが20%上がっていることを根拠としている。労働組合のキャンペーンは、タイ労働連帯委員会(TLSC)の参加メンバーが主体で、インダストリオール加盟の全ての労働組合、すなわちタイ製造業労働者総連合(CILT), タイ電子、電機、自動車、金属労働組合連合(TEAM)が参加している。
 6月25日、TLSC加盟の労働組合が首相官邸へデモ行進し、プラユット・チャンオチャ首相に要求書を渡し、7月9日にTLSCと全ての加盟組合は、各県の知事に最低賃金の改定と全国一律最低賃金制度を一斉に請願した。
 ヨンユット・メンタパオCILT書記長は「最低賃金の改定要求はいつも反対にあうが、TLSCの要求根拠は、人々の毎日の支出をきちんと調査したものに基づいているもので確信している。タイの経営者にとって、労働者は生産のための材料に過ぎない。ILOの中核的基準である87号と98号の条約が批准されてない。不平等の是正による社会的正義実現という意味でも、タイでは全国最低賃金が必要だ。また、移民労働者がより高い(最低賃金)地域に流れるということも減少する」と語った。
 インダストリオールのアニー・アドヴィエント地域担当者は「インダストリオールは、この地域(東南アジア)で生活可能賃金(リビング・ウエッジ)の実現を目指している。カンボジア、インドネシア、フィリピン、そしてベトナムの労働者は、公正な賃金実現へと動き出している。インダストリオールはその闘いの中心に位置し、そのゴールを目指している」と語った。
 タイ商工会議所とタイ貿易会議は、最低賃金の引き上げに強く反対し、将来的には県ごとに最低賃金が決められるべきと主張している。6月に行ったタイ製造業経営者調査でも、最低賃金の引き上げには抵抗を示している。タイ工業連盟は政府に対し、政労使会議を新たに立ち上げ、県ごとの最低賃金を新設することを検討してほしいと政府に最近要求した。
 タイの公式失業率は1%を下回っている。

*1バーツ=3.49円(2015年8月20日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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