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No.316(2015/6/3)
フォルクスワーゲン工場のUAW加入署名、55%獲得

 全米自動車労働組合(UAW)は労働省に対し、フォルクスワーゲン(VW)テネシー州チャタヌガ工場のUAW加入署名者が、ブルーカラー労働者816人の55%に達したと報告した。報告の数字が正しいとなると、UAWは米国南部で初めて外国メーカー工場に労働組合を結成することになる。
 VWドイツ本社では、社長任期をめぐる権力争いの結果、ヴィンターコーン現社長と対立したオーナー一族であるピエヒ会長が退任して、副会長で労働代表のベルトルト・フーバー氏が暫定会長に就任したばかりである。ちなみにVW労働組合は、現社長の経営路線を支持している。
 UAWは、同工場の労働組合結成キャンペンに際して共和党関係者からの激しい反対に遭遇し、昨年2月の投票では626対712の僅差で過半数を逃して失敗したが、暫定会長に就任したフーバー氏はUAW支持を強く訴えていた。
 テネシー州の知事及び共和党は、労働組合の進出が企業投資を阻害するとしてUAWに反対し、チャタヌガ工場の新型車生産導入に伴う州補助金の拒否も有り得るとしてきたが、最終的には今月初めにその支出を認めた。
 VWは世界の各工場に労働者協議会を設置して、労使協議による経営を志向しているが、チャタヌガだけには協議会がなかった。VWでは賃金は労働組合との交渉により決定するが、雇用保障や労働条件などは労働者協議会が決定する。
 そこでチャタヌガ工場は、VW労働組合からの圧力もあり、労働者の参加割合に応じた協議会制度を設けたが、UAWは45%の労働者、UAWに反対するアメリカン従業員協議会(ACE)は最低基準の15%の労働者を集め、それぞれの定期協議に参加している。会社が55%の署名を認めれば、UAWは正式な労働組合として賃金交渉を行うことになるが、正式な投票を行うかどうかは明らかでない。
 
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黒人射殺事件に対する警察官労働組合の対応

 米国では昨年以降、白人警官が黒人男性を死亡させる事例が相次いでいるが、南部サウスカロライナ州で4月4日に白人警察官が黒人男性を射殺した事件で、警察官労働組合の対応が問題になっている。
 当初警察は、黒人男性が白人警察官のスタンガンを奪おうとしたため発砲につながったと説明したが、その後通行人撮影の映像で、白人警察官から逃げる丸腰の黒人男性の背中に向け銃弾8発を発砲したことが明らかになり、4月8日、地元市長によってその白人警察官は解雇された。
 警察官労働組合は4月9日に声明を発表し、この事件について、遺憾と悔恨を表明しながらも事態が理解を超えるものであったこと、一部批判が事実に反することなどを述べて「この機会を捉えて人種差別をアジるプロ達が自分に有利な言い分を通そうとしている。懸命の努力を続ける警察官を痛めつけることがあってはならない」と述べて警官を擁護した。
 警察官労働組合は過去にも、警官が誤りを犯した時に身内を擁護することが多く、最近ではニューヨークやミズーリ州などでも同様なことが起きている。しかし世論の怒りが厳しさを増し、ビデオ撮影で言い逃れができなくなった中で、警察官労働組合も対処の仕方を変えなければならない状況にある。
 米国内の識者からも「警察内部にメスを入れて、誠実に自己批判する必要がある。盲目的に警官同士を擁護する時代は過ぎた。警察は労働組合に対しても正しい方向性を示す必要がある」との見解が示されている。
 米国の公務員の中でも高い賃金と年金を受け取る警察官は、市民からの尊敬と好意が不可欠である。そのためにも、単なる反応ではなく効果的なメッセージの発信が重要であり、こうした人材の育成が重要とされる。
 クリーブランド州警察官労働組合のある幹部は、「警官は外部批判を浴びると自分たちが理解されていないと感じて、悪意に対しては自力で守ると考えるようになる。労働組合も労働者の代表というよりは同僚代表の意識が強くなる」と指摘する。
 米中西部オハイオ州の裁判所は5月23日、2012年に州内を車で走っていた丸腰の黒人カップルを追跡した末に射殺し、殺人罪に問われていた白人警官に無罪判決を言い渡し、州内では抗議デモが起きている。
 ニューヨークでは黒人を絞殺した警官が不起訴にされ、それを市長が批判した事があった後、警察官2人が黒人少年に射殺される事件が起きた時に、病院を訪れた市長に対して労働組合幹部が背を向け、警察学校の卒業式では警官たちがブーイングをする事態が起きた。警察関係の弁護士は「同僚を守ろうとするあまりに社会との関係を損なう」と言う。
 ワシントンの警察関係調査機関は「警察官労働組合はもっとコミュニケーションのやり方を研究しなければならない。サウスカロライナの対応の遅れも、ビデオがなければ現場が改ざんされたのではないかいう疑念を抱かせる。警察官労働組合が射殺せざるを得なかった強い理由をきちんと説明すれば、市民は聞いてくれるはずだ」と強調する。

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