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No.301(2015/3/10)
中国の労働事情

 2014年12月5日に開かれた中国・韓国チームの労働事情を聴く会から、中国・中華全国総工会の労働事情について紹介する。中華全国総工会から5人が参加した。

【中華全国総工会の近年の重点活動と5ヵ年計画】
 中華全国総工会の5つの重点活動について報告する。
 まず、第1は、企業における労働組合の組織化の普及と賃金の団体交渉の普及、中国では2つの普及と言われている。2006年には、中国においてウォルマートの組織化に成功した。2013年の末までに、全国の労働組合数は276万に達し、その組合員数は2億9000万人に達した。団体協約については245万件の締結となり、この協約でカバーされる企業数は612万社となる。また、賃金先行の団体協約では133万件締結し、カバーされる労働者数は1億6000万人となる。
 第2には、我々は組織化するからには、よりよい労働者の権益を守ることが必要であると考えている。近年、中華全国総工会と各レベルの労働組合は、労働組合法、労働契約法、女性権益保障法などの法律を施行、監督活動に参加し、労働者の法律援助センターなどで権益を擁護するサービスも完備してきた。ここ5年、各レベルの労働組合は、労働争議の案件の受理が約194万5000件となり、その中で調整に成功したのが94万9000件となった。
 第3は、幅広く資源を獲得し、貧しい労働者を支援することである。1992年から毎年、元旦や春節の期間に、各レベルの労働組合は広く貧しい労働者の家庭を訪問し、その救済や支援、つまりぬくもりを届ける活動を行なってきた。今日まで、23年間続いており、この活動に要する資金を累計で481億5000万元(約9225億5400万円)を集め、この恩恵を受けた貧しい労働者は、農民工なども含まれ、延べ1億1000万世帯となった。さらに小口融資を貧しい労働者に提供し、40万人以上の労働者の起業を支援してきた。2011年からは、全国で就職支援月間を設け活動を展開してきた。昨年までに、技能訓練や就職あっせんなどの活動を通して、無料で就職サービスを受けた労働者は920万3900人となった。
 第4の重点活動は、労働者の技術・技能訓練を強化していくことである。この3年間、中国各レベルの労働組合は、技術・技能コンテストを20万回以上開催し、延べ6460万人が参加した。また、労働者技術訓練協会は、延べ25万回以上の技術研修やセミナーを開催し、延べ2200万人が訓練・研修を受けた。これにより589万人の技術レベルの向上をはかることができた。また、労働者から合理化改善提案を募集し、合わせて3300万件以上の合理化改善提案が集まった。労働者による発明も41万件以上にのぼり、労働者との間で技術契約を7万件以上結んだ。これらの経済効果は62億9600万元(約1206億3136万円)にのぼっている。
 第5の重点活動は、積極的に幅広い労働者の意見や要望を反映していくように努力することである。まず国レベルでは、中華全国総工会は全国人民代表大会の常務委員会(国会)、さらに国務院の関連中央省庁との間で定例の連絡会議を設けている。このようなメカニズムにより、積極的に労働者の要求・要望を声に出し、労働関連法制の立法や修正・改定などを進めてきた。近年では、重点的に労働契約法、労働紛争仲裁法、社会保険法、安全生産法、職業疾病防止法、労災保険条例、女性労働者労働保護特別規定など、数十件以上の労働者の権利・利益をめぐる法整備や改定、さらに条例の解釈などに関わってきた。特に労働契約法の改定案に対しては、社会一般に意見を募集したところ、55万件以上の意見が集まった。そのほとんどが労働組合、あるいは組合員からの意見であった。

【チャイナドリーム実現のために】
 現在、中国の国民は、中華民族の偉大な復興を目指し、チャイナドリームのために努力している。2014年10月に中華全国総工会第16回全体大会が開かれ、その中で、中華全国総工会は、労働者を幅広く組織し、この中国の夢の実現に向けて努力することを、中国の労働運動のテーマとして決定するとともに、今後5年間の労働組合の活動などについて計画をまとめた。
 目標の1つは、2018年年末をめどに、全国各レベルの企業で労働組合の数を820万に増やし、労働組合員数を3億3000万人に増やすことである。団体交渉についても、今後5年間で、労働者の収入の増加、所得格差の是正、労働関係の矛盾の緩和のために、積極的で徹底的な団体交渉の中で、その役割を果たしていくことで一致した。これによって労働者がより高品質な就職ができ、より合理的な所得が得られることを目指していく。さらに十分な社会保障を確保し、法律で決められた民主的権利が守られるようにしたい。
 文化的な生活、環境に優しい生活を実現し、ディーセント・ワークの実現を労働組合の目標として運動を進めていくこととしている。

*1元=19.16円(2015年3月6現在)

韓国の労働事情

 2014年12月5日に開かれた中国・韓国チームの労働事情を聴く会から、韓国・韓国労働組合総連盟(FKTU)の労働事情について紹介する。FKTUから5人が参加した。
 
 韓国の労働組合の組織率は、労働者全体が1824万人で、このうち10%となっている。このうち韓国労働組合総連盟(FKTU)に約90万人、民主労働組合総連盟に約60万人となっている。第3のナショナルセンターである国民労働組合総連盟は、12月3日に、我々FKTUに吸収統合された。残りの組合は上級団体に属しないか、または幽霊労組(名前だけ)と言われている。FKTUは26の産別連盟から構成されており、委員長の任期は3年となっている。
 韓国の経済動向は、2012年の経済成長率は2%、2013年の成長率も2.8%となっている。2014年の成長率は3.5%を目標としているが、第3四半期に入ってから下方修正が行なわれている。特に第2四半期の実質経済成長率が0.5%に過ぎず、内需市場の低迷は、いわゆる不況型の貿易黒字を生んでいる。
 韓国の労働者の状況をみると、青年失業(18歳~35歳)の問題が深刻化している。青年失業率は2014年1月に8.7%、2014年10月には10%に拡大している。また、労働時間も問題があり、韓国の年間勤労時間は2,092時間で、OECD加盟国の中で3番目に長く、このことは労働者の生活の質が大きく低下していることを示している。さらに、社会賃金の水準も、OECD加盟国の中で最低水準の12.9%(家計可処分所得比率、残りの87.1%は企業からの賃金となる)にすぎない。社会賃金とは、個人に提供される福祉の支援を全て金銭に換算したものである。このことは、社会のセーフティネットが整っていないことを表している。
 次に非正規労働者は837万人、全労働者に占める割合は46.1%となっている。非正規労働の形態は、有限契約の非正規労働者が50%、派遣やサービスが20%、特殊雇用が10%、時間制と臨時職が合わせて20%となっている。非正規労働者の割合は下がる方向にあるが、賃金勤労者の2人のうち1人が非正規労働者であり、このような不安定な雇用形態が韓国社会の安定と、持続可能な発展に最大の危険要因として作用している。
 韓国では、現在4つの主要な争点が存在する。第1は、公共部門の労働組合に対する政府からの攻撃である。公共部門とは、韓国電力や韓国ガス、鉄道、電気通信などの分野を指している。政府が個別企業の団体協約に介入をして、労働者の労働条件を後退させている。現在のパク・クネ政権は、前政権のイ・ミョンバクの失政と国家負債で問題が悪化していることを、全て公共部門の労働組合の責任であるとして攻撃をしている。
 2番目、公務員年金の大幅削減が推進されている。政府は一般国民の年金よりも公務員が高い年金を受給していることを口実に、約1000万人の公務員年金削減計画を発表した。公務員労組は当然反発をして、現在、その話は中断されている状況である。
 3番目の争点は、政府は労働基準法の改正を試みようとしていることだ。政府は労働時間を増やして賃金をカットする法案を国会に提出した。
 4番目の争点は、政府は2015年の経済の方向性について発表し、その主な柱として、正規職の解雇の柔軟化を掲げている。そして新しい形である中規職を新設するとしている。中規職というのは、我々も今回初めて接する造語で、政府がつくり出した耳なれない用語である。この中規職というのは、正規職と非正規職の中間を指す新しい用語である。
 FKTUの運動の方向性と課題については、第1に運動の方向性として、闘争と交渉を並行することによって、現場活動の復元と強化を図っていくことである。
 第2の重要課題としては、労働基本権の保障、通常賃金の拡大と賃金構造の安定性を確保することである。また、一方的な構造調整を阻止することと、労働時間の短縮への取り組みと労働市場柔軟化に対する対応が必要である。
 3番目として、FKTUの対応戦略であり、まず組織の内部的な強化と裾野の拡大である。組織に関連し、産別連盟を産別労組への転換をはかることも含んでいる。さらに、国会に対する交渉力、政府に対する交渉力の強化である。さらに、韓国国内での市民社会団体との連携を強化していくことである。

(※)産別労組には、団体交渉権と団体協約締結権が与えられている。産別労組は、使用者団体と産別の間で本協約というものを締結する。産別労働組合の委員長は、個別企業労働組合の委員長(支部長等の位置づけとなる)に対して交渉権を委任することができる。産別の本協約の内容は、雇用の安定と最低賃金の引き上げ、女性の労働条件の保障、非正規労働者に対する環境改善、それと労働組合の労働条件を産別と共通して協約を結ぶ内容となっている。企業別労働組合(産別労組の支部または分会の位置づけとなる)は、産別労働組合の本協約の内容を最低基準として、企業との間で協約(本協約を補完する協約)を結ぶこととなる。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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