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No.296(2015/2/13)
チュニジアの労働事情

 2014年11月14日に行われたアフリカチームの労働事情を聴く会で、チュニジア労働総同盟(UGTT)から報告された労働事情について紹介する。UGTTから2人が参加した。

【チュニジアの経済、雇用の改善は、リビア危機の克服がカギ】
 チュニジアの雇用問題には、量的な問題と質的な問題がある。雇用は不安定であり、失業者数が増加し続け、失業率は15.2%に達していることに加え、非常に脆弱であるという問題がある。チュニジアの生産年齢人口は約400万人で、この内失業者数は70万人と憂慮すべき事態となっている。また、労働者の基本的権利の侵害が続いており、差別もまだ根強く残っている。
 最低賃金は、2014年5月1日から11%引き上げられた。週48時間労働(労働法では週48時間を超えてはならないと規定)で、月額(基本給)319ディナール904ミリーム(約1万9204円)となる。最低賃金は、年金生活者にも適用される。最低賃金は2種類あり、全産業一律最低保障賃金(SMIG)は非農業部門で働く労働者の最低賃金を保証し、農業最低保障賃金(SMAG)は農業従事者に対する最低保証を行なっている。最低賃金は、基本給のほかに通勤手当と精勤ボーナスが支払われる。農業が対象のSMAGには、普通労働者、専門労働者、有資格労働者それぞれを対象とする3つ最低賃金額が決まっている。最も低い普通労働者の場合、改定後は1日12ディナール304ミリーム(約739円)となる。
 チュニジアの経済活動は縮小しており、外国の直接投資による産業プロジェクトが停止状態となっている。この背景には、混迷するリビア情勢の問題がある。リビアで生活をしていたチュニジア人の多くが強制送還されたことにより、雇用情勢はさらに悪化している。リビア危機は、チュニジアの商業、エネルギー、観光に悪影響を及ぼす恐れがあり、経済発展の機会を危うくする可能性がるとの報告書も出ている。エネルギーはリビアへの依存度が高く、チュニジアの燃料需要量の25%がリビアから供給を受けている。また、リビア危機の影響でチュニジアの1万~1万5千世帯の収入が途絶えているとの指摘もある。
 チュニジアでは、社会経済発展5カ年計画を作成しているが、その計画に示された年間新規雇用創出数や失業率改善の目標が達成されておらず、計画期間中にもかかわらず年間新規雇用創出数は、毎年下方修正されている。失業問題が解決せず、むしろ悪化している状況は、チュニジアの社会や経済の発展の基礎を揺るがしかねない状況にあるといえる。現在の経済成長では、雇用問題を解決することは難しく、適切な雇用創出を考えると年間経済成長率7~8%の成長が必要とのシミュレーション結果も出ている。
 単なる雇用創出だけではなく、高学歴者の高失業問題を解消する必要がある。そのためには、経済成長の質自体についても構造的な改革を行なうことが必要である。チュニジア経済は、農業、衣料、皮革、農産加工、自動車部品、観光で成長しているが、これらの部門は高学歴者を必要とせず、求められているのは低資格の労働者である。

【政府の経済振興策】
 チュニジア政府は、UGTTとの合意(2014年の10月7日)にもとづき雇用問題を解決するために次の施策を行なっている。最も失業率が高く貧しい地域を対象に経済社会振興緊急計画を策定し、官・民合わせて、雇用18万人を維持することに加え、新たに4万人の雇用を生み出すというものである。また、資格を持たない失業者に対して、公共工事等の仕事を紹介するとともに、学歴があり、資格を持つ失業者に対しては、積極的な再雇用計画を進めることとした。
 特に貧しい地域を中心に発展させるため、別に開発計画を策定した。このことは、アラブの春の革命後の優先課題となっている。2014年は、国の予算における投資額の8割がこの貧しい内陸地域に割り当てられた。その投資は、インフラ開発のために充てられることになっている。
 また、研究開発部門の構造改革を加速させるということに取り組むとともに、教育の全てのレベルで、技術科学部門の強化を進めている。また、教育プログラムも、民間企業と協力し、教育内容が企業のニーズと合致するように変更している。
 UGTTとチュニジアの経営者団体であるUTICAは、経済や社会へ影響を及ぼす様々な問題の解決策について議論し、提案を行なうための合同委員会を設立することを決定した。

*1ディナール=60.03円(2015年1月26日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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