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No.291(2015/1/21)
南アフリカの労働事情

 2014年11月14日に行なわれたアフリカチームの労働事情を聴く会で、南アフリカから報告された労働事情について紹介する。南アフリカからは、南アフリカ組合連盟(FEDUSA)、南アフリカ全国労働組合協議会(NACTU)から3人が参加した。

【高い失業率を背景にインフォーマル労働者の増加、格差拡大】
 南アフリカの労働市場における一番の特徴は、失業率が非常に高いことにある。熱心に職を求めている人の失業率は25%となっているが、職探しをあきらめて求職活動を行なわない人まで加えた失業率は35%に達する。この高い失業率の背景は、我が国の政治的な歴史が関係しているといえる。南アフリカは、かつてイギリスの植民地であったことや、アフリカーナーと呼ばれるオランダ人定住者によるアパルトヘイト(人種に基づく差別的な制度)があったことで、その影響を労働市場も受けてきた。こうした歴史的背景が影響し、人種差別的な人材の優遇や開発が定着している。また、このように高い失業率が原因で、国内の犯罪率も非常に高くなっている。
 高失業率を背景に、労働者も不安定雇用の状態に置かれており、非正規雇用やインフォーマルセクターで仕事をせざるを得ない人も多く、インフォーマルセクターが拡大している。インフォーマルセクターの拡大は、政府からすれば、税収に結びつかないという問題となり、労働者にとっては劣悪な労働条件、低賃金の問題となる。労働者数は、フォーマルセクターに従事する労働者が839万人5000人、インフォーマル部門で働いている人たちは476万9000人となっている。
 南アフリカは、世界でも最も格差が大きい国であり、2008年のジニ係数は0.7(0は完全平等、1は完全不平等)となっている。社会保障、無料サービス、対人課税等による給付等を加えてもジニ係数は0.59で依然として不平等な状態に変わりはない。富の分配からも不平等さがわかる。高所得層10%の人々が、国の全所得の58%を得ているのに対して、最下層10%の国民は、全所得の0.5%を得ているにすぎない。
 南アフリカでは、労使交渉がこじれた場合はストに突入することが多い。インフォーマルセクターで働く労働者は、賃金が低いことから労働組合をつくるケースも多く、組合をつくって何とか生活を改善しようと運動をしている人たちも多い。高い失業率から考えると、現在職に就いている労働者1人で、就労していない人の面倒を、最低8人見ることになる。こうしたことを背景に労働側の要求も高くなり、紛争につながっている。ほとんどの大手組合は、少なくとも年に一度はストを打っている状況にある。このほかの比較的小さな労働争議は、CCMA(労使調停委員会)で扱われ、ここでは和解、もしくは仲裁というかたちの解決策が模索されることになる。

【課題解決に向け、労働法が改正】
 最近、労働法が改正され、これは我々にとっては好ましい方向に向かっているといえる。例えば、労働ブローカー(労働者を斡旋する業者)による不法行為、多数決主義、労働組合の承認、同一労働・同一賃金の原則など、これまで労働組合が直面してきた問題について、解決できる方向に労働法が改正された。1998年に制定された雇用均等法には、企業内における賃金格差を縮小する計画の提出を義務付けているが、企業がこの法令に従わないため、鉱山・建設労働者組合連合(AMCU)は、2014年に5ヵ月間(6月に終結)にわたる賃金改善要求でストライキを実施した。
 スト時における暴力の問題やストの期間についても改善される見込みであるが、この問題については、現在はNEDLAC(全国経済開発労働協議会)で議論が進められている。NEDLACは、労働法案の作成や社会問題に対応するために設置され、政労使三者構成のフォーラムとなっている。
 最後に、国際社会の支援(投資)がアフリカにも多くの雇用創出が可能となる。その結果、失業率が下がれば、南アフリカの社会問題も改善されていくと考えられる。

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メルマガNo.263(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2014/263.html
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