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No.289(2015/1/14)
モロッコの労働事情

 2014年11月14日に行われたアフリカチームの労働事情を聴く会で、モロッコ労働組合(UMT)から報告された労働事情について紹介する。

【3つのナショナルセンターの連携で政府との社会対話を復活】
 モロッコ労働組合は、1995年3月に創設され、現在、国内で最も規模が大きく影響力を持つナショナルセンターである。このほか2つのナショナルセンターが存在する。3つの組織が共通に掲げている目的は、統一による影響力の拡大である。3組織は、2014年1月に組織を統一するという意思を確認している。
 モロッコは正常な好ましい統治のもとに経済が発展しており、主な産業である観光、農業などの発展は著しいものがある。特に2011年のアラブの春を契機に、さらなる安定がモロッコにもたらされている。また、憲法が改正されたが、この憲法改正に当たり、モロッコ労働組合(UMT)は大きな影響力を発揮した。特に社会的な側面、また労働組合の権利、そして組合員のストの権利を勝ち取ることができた。
 しかしながら、モロッコにおける労働市場の現状は、年々、非正規化の動きが顕著になるなど問題を抱えている。モロッコでは、人口の増加による求職者増を吸収できる雇用機会が不足していることから、期限付き雇用契約が憂慮すべき規模で拡大傾向にある。使用者側は、雇用の柔軟性というまことしやかな口実のもとに、労働者にとっては極めて過酷な賃金、労働条件を強いている。労働者は正規雇用機会の不足から、これを受け入れざるを得ないのが現状である。現在、モロッコの失業率(約10%と推定)は減少しているが、その背景にはこのような非正規雇用の増加がある。モロッコ政府は、この難しい状況の中、雇用創出のために投資を奨励し、投資家に対する優遇措置をとっている。失業率を減少させる唯一の有効な手段である投資については、さらなる促進努力が求められている。
 また、インフォーマルセクターの問題も大きい。最新の統計によると、モロッコの社会全体がインフォーマルセクターに従事しているという結果が出ている。インフォーマルセクターは、既にGDPの14%を占めるに至っている。また、インフォーマルセクターは毎年6.5%増加している。インフォーマルセクターにおける労働は、国内経済に悪影響を及ぼしており、国庫の税収不足を招き、財政に悪影響を与えている。
 民間部門の賃金は、公共部門の賃金と比較し、非常に低いレベルにとどまっている。社会対話、労使協議、あるいは政府も含めた3者協議において、労働側は10%の賃上げを獲得できた。政府は最低賃金を設定しているが、民間部門の給与水準は依然として低いままである。さらに悪いことに、この最低賃金でさえ多くの中小企業は遵守していないのが現状である。同時に、多くの多国籍企業も、この最低賃金を守っていない。
 現政権が発足してから3年間、我々と民間産業団体との労使協議、我々と政府との社会対話は停止状態にある。そして、もう一つの問題が、自由な労働組合活動への侵害である。政府が介入することによって、労働組合が分散し、十分な活動ができない状況となっている。さらには、組合活動家が刑法第288条の対象となっている問題や、労働者の既得権が侵害されているという問題もある。
 これらの課題を解決するために、3つのナショナルセンターは連携して取り組んでいる。まず、政府と責任のある社会対話を始めるために、首相宛ての覚え書きを3つの労働組合名で送付した。
 しかし、政府は姿勢を変えようとしないため、我々3組織は、2014年4月6日に平穏なデモ行進を組織し、10月29日には24時間のストライキを決行した。このストライキには、業種にかかわらず、さまざまな産業、業種から労働者が参加した。この結果、ストライキへの参加率は83.7%と、非常に大きな成功をおさめた。この結果、政府の方から、協議に応じるという書簡が届けられた。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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