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No.287(2015/1/6)
インドの新政権と労働法制の動向

 インドの新政権誕生から半年が経過し、その新しい政策や今後の展望についての記事が各国のマスコミなどを賑わせている。2014年5月、前グジャラート州首相であるインド人民党(BJP)のナレンドラ・モディ氏が第16回総選挙で大勝したのだが、インドでの25年ぶりの単独過半数政権として注目を集めた。
 インドでは、独立以降1984年の総選挙まで、一時期を除き、ネールやインディラ・ガンジーなどが率いた「会議派」が過半数を占めていたが、それ以降は連立政権が続いた。今回、政権の座についたBJPは、前政権下の最大野党であるが、1998年から6年間、連立政権を率いたこともある。ヒンズー教をベースとする民族主義的な面を持つとされるが、今回は経済活性化を前面に打ち出し、外資導入と規制改革の推進を掲げる。就任以降に受け入れた直接投資は24%増となり、株価(SENSEX)は15%上昇して過去最高値を更新、「モディノミクス」とも云われている。
 労働法制の分野では、新政権による「規制改革」に対して、強い懸念と大きな期待が交差している。労働界の大勢は解雇規制などの労働条件や労働組合権が切り崩されることを警戒し、全国的なアピールや行動を辞さない構えである。一方、産業界は、四半世紀ぶりの単独過半数政権が規制改革による経済活性化を打ち出していることを歓迎し、長年の要求である労働法制の規制緩和を実現するよう働きかけを強めている。
 インドは労働法制の長い歴史と積み重ねを持つ「労働法大国」である。現行の「労働組合法」は、アジアでは最も早く1926年に制定された。英国の1871年労働組合法をベースとしているが、労働組合を事実上の登録制とするなど、独自の修正も加えている。労使関係のベースは、1947年の「労働争議法」であり、団体交渉、労働協約、不当労働行為、労働裁判所などを規定し、解雇について100人以上事業所は行政の許可制としている。雇用関係では、「間接雇用規制法」ともいうべき1970年の「請負労働法」がある。請負労働を一時的な業務にのみ認め、請負業を許可制としている。
 インドの労働法制の特徴として指摘されてきたことは、その改正の難しさである。中央、地方の審議会での検討が続けられ、労働法学からの提言も続いているのだが、労働組合のナショナルセンターが13に分立し、支持政党が与野党に分かれていることなどもあり、このところ20年以上、大きな法改正は実現していない。産業界は、新政権がこれまでの壁を乗り越えることを強く期待しており、労働規制の緩和、なかでも、解雇、労働時間、請負労働などについての改正の速やかな実現を求めている。
 モディ政権による労働法制改革については、その前哨戦としての州労働法の改正が動き出しており、解雇規制の緩和などを先行したところもある。経済政策の面で比較的順調な滑り出しを見せている同政権であるが、就業者の9割以上が働くインフォーマルセクターの対策を含め、中央政府による今後の労働対策が注目される。

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