バックナンバー

No.278(2014/11/19)
インドの労働事情

 10月24日に行なわれたアジア・太平洋チームの労働事情を聴く会から、インドの労働事情について報告する。インドからは、インド全国労働者会議(INTUC)から2人、インド労働者連盟(HMS)から2人が参加した。

【州ごとに異なる労働組合関連法規】
 インドでは、基本的な労働組合の権利は保障されているが、州ごとに様々な規制がある。インドでは、登録された労働組合は法による権利と保護が与えられるが、企業に対して労働組合を交渉相手とする義務は多くの州で定めていない。このため、交渉相手として承認を求めて紛争が起きる場合もある。また、労働組合の幹部や組合員に対して、企業が裏で糸を引くと考えられる暴力事件の報告もある。労働組合幹部の多くがハラスメントを受けたり、逮捕されたりしている。労働組合の存在や団体交渉権を認めない経営者に抗議行動を起こせば、組合員の中には刑事告発を受けたり、逮捕されたりする者も多い。
 インドでは5~6%の高い経済成長が続いているが、労働者の生活水準はそれに見合う改善を示していない。政府計画委員会の発表によれば、1日1ドル未満の極度の貧困の中で暮らす国民の数は増えている。さらに、最近の物価上昇も一因となって、政府や使用者に対する労働者の苛立ちや不満が高まっている。2001~02年度以降、企業の利益は急増したにもかかわらず、賃金に対する分配は大幅に下がり、購買力を低下させてきた。インドは物価スライドによる最低賃金を導入しているが、多くの州で最低賃金の拘束力をもたないままになっている。インド全国で1億7300万人の賃金稼得者がいるが、このうち約7300万人は最低賃金に届いていない。こうした低賃金労働者の約30~40%は貧困家庭に属している。
 このように低所得層が大部分を占めるインフォーマルセクターで働く人々に対する働きかけが、大変重要な組合運動となっている。各ナショナルセンターは協力して、インフォーマル部門で働く従業員のさまざまな心配事や悩みに応えるため、組織化に取り組んでいる。そのためには、物心両面にわたる一層の投資が必要であり、そのための資金が必要となっている。我々は、また、年少者、女性、家内労働者、移民労働者などの未組織労働者の組織化に関心をもっている。インドは若年人口が世界で一番多い国であり、35歳以下の人口は8億800万人で、人口の66%を占めている。今後も増え続けると予測されており、若年層が労働市場に参入することによって労働人口が増えることになる。また、女性労働者の組織化にも積極的に取り組んでいる。しかし、女性の組合員の数は少なく、我々は女性委員会を中心に様々な活動を行なっている。
 インドにおける団体交渉は、現行法で対象範囲が限定されているため、フォーマル、インフォーマルセクターの組織化、あるいはそのための集中的なキャンペーンとともに、団体交渉でカバーされる権利の拡大を求めて運動している。最低でも、現行法を確実に遵守させる、あるいは最低賃金の確保、雇用の保障、あるいは職場の設備を充実させることなどが必要であると考えている。

【10項目の各ナショナルセンター共通要求】
 こうした問題を解決するために、各ナショナルセンターは協力して共通する10項目の要求をまとめ、政府と交渉に当たっている。この10項目の要求を達成するための運動として、2013年2月には、2日間のストライキを打った。

<10項目の要求>

  1. 物価上昇に歯止めをかけるための具体的対策
  2. 企業家に提供されるコンセッション/インセンティブ・パッケージ(税金などの優遇措置)に雇用保護を関連づけるための具体的対策
  3. すべての基本的労働法に対する、一切の例外や免除のない厳格な執行と違反に対する厳しい罰則処置
  4. 未組織部門の労働者も対象とする無制限の普遍的な社会保障と国家社会保障基金の創設
  5. 国および州の営利PSU(公営企業)への投資引き上げの中止
  6. 常雇/長期雇用の性質をもつ仕事の契約化の禁止(正規雇用の職場を有期雇用などの非正規雇用に置き換えることを禁止する)と、同じ産業/企業における契約労働者と常勤労働者の同一労働同一賃金・給付を保障する
  7. 最低賃金法の改正―賃金表に関わりなく一律の適用を確保し、法定最低賃金を月額1万ルピー(約1万8900円)(HMSは1万5000ルピー=約2万8350円)以上とする
  8. ボーナス、積立基金の支払いに対するすべての上限と受給資格の撤廃と、退職慰労金額の引き上げ
  9. 全員(HMSは全労働者に月3000ルピー=約5670円以上)に対する年金の保障
  10. 45日以内の労働組合の登録義務付けとILO条約第87号および第98号の即時批准

(JILAF注)
 組織部門とは労働者10人以上が働く企業の労働者と公務員を指し、未(非)組織部門は生産、販売やサービスを提供する個人企業、農業労働者、自営業者、労働者10人未満の企業で働く者を指す。
 インドの労働法では、労働者の10%以上または100人以上のいずれか少ない方(7人以上必要)の組合員を有する労働組合は、登録することができる。また、登録された労働組合の権利と保護についても定めている。

*1ルピー=1.89円(2014年11月17日現在)

過去の関連記事
メルマガNo.208 (http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/208.html)
メルマガNo.183 (http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/183.html)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.