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No.271(2014/10/14)
韓国での「社会的企業法」の展開

 10月14日から3日間、韓国のソウルで、「第7回・社会的企業世界フォーラム(Social Enterprise World Forum)」が開催されている。「社会的企業」とは、貧困、失業、環境などの社会問題の解決を目的とした企業体であり、英国では協同組合、クレジットユニオンなどのコミュニティでの事業も含まれる。2000年代、欧米の取り組みが世界にひろまり、2008年には「世界フォーラム」がスタートした。今回、アジアでは初めての開催地にソウルが選ばれたことは、2007年に「社会的企業法」を制定し、その後も事業を拡大してきた実績が評価されたものであろう。
 韓国の社会的企業制度は、1997年のアジア通貨危機をきっかけに、雇用におけるセーフティーネットの拡大をはかる政策から生まれたものである。その狙いは、「ぜい弱な人々に社会サービスまたは雇用を提供し、地域の生活の質を高めるための営業活動を行なう」(「社会的企業法」第2条)とされる。この制度は拡大を続けており、対象企業数とスタッフ数は、2007年の発足当初には、それぞれ、50社、400人のレベルであったが、2013年には830社、2万人強に増加した。事業の内容は、2013年では、就労提供型が62%、社会サービス型が7%、混合型が16%などである。企業の形態は、商法上の会社が50%、民法上の法人が23%、NPOが13%などである。
 一方、韓国の社会的企業の現状には課題も少なくない。事業基盤が弱くサービスの提供に限界があること、助成金への依存傾向が強いことなどが指摘されている。韓国労働部は、これらを踏まえ「第二次5か年計画」(2013~2017年)を展開している。事業所数3000への拡大が掲げられており、新しい政策として、社会的企業からの公共調達への1兆ウオン(約1000億円)の支出、「一企業一社会的企業キャンペーン」の展開などがある。
 日本では、労働金庫、全労済などが労働者の自主福祉事業としての独自の社会的事業を展開しているが、近年、労働者協働組合の事業なども拡大している。日本型の「社会的事業法」の構想もあるものの、法制度の整備では韓国が先行している。今回のソウルでの「世界フォーラム」の参加者は、韓国のほか、日本、シンガポール、台湾、バングラデシュなどアジアからが半数以上と見込まれている。今回の論議が、この地域の社会的企業の将来にどのようなインパクトを与えるかが注目される。

*「社会的企業世界フォーラム」のHP http://www.socialenterpriseworldforum.org/

*1ウォン=0.10円(2014年10月9日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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