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No.269(2014/10/7)
パキスタンの労働事情

 8月31日から2週間の日程で、JILAFの招へい事業にパキスタン労働者連盟(PWF)から6人が参加した。9月5日に行なわれた労働事情を聴く会から、パキスタンの労働事情についてその一部を紹介する。
 
【児童労働、格差、インフォーマル労働など課題山積】
 パキスタンの人口は1億8100万人(2010年6月末)で、労働力人口は5800万人を数える。経済の三つの主要部門は農業、工業、サービス部門で、サービス部門は国内総生産の53.8%を占める最大の産業である。農業部門は21.8%、工業部門は18.2%となっている。労働力人口の45%は農林水産業部門に従事し、13%は製造部門、6.6%は建設業、16.5%は卸売・小売部門、11.2%は地域・社会・対人サービス業で雇用されている。パキスタンでは、インフォーマル部門が雇用の74%を占めている。
 貧富の差が急速に拡大している。これは、3年に及ぶ高いインフレ率がもたらした貧困拡大の結果であり、社会の調和を損ねている。過去5~6年続いた経済発展の果実は、主として裕福でより教育のある人々が享受した。経済成長の大部分は金融、電気通信、IT、石油・ガス、セメント、自動車やオートバイ等の資本集約型産業を含む相対的に技術集約的な部門で生じ、労働力人口の大半を占める、限られたスキルしか持たない人々は排除されている。
 労働条件は、産業やその下位部門により異なる。労働者の地位を決定する最も重大な要因は、国の労働法の適用範囲から除外されるかどうかである。労働人口の最大部分を占める農業や漁業は、賃金、労働時間、社会的保護、衛生、安全関連のあらゆる労働権から除外されている。
 パキスタンでは、最低賃金法が実施されておらず、非常に不規則なものである。カラチの最低賃金は1万4000ルピー(約1万5008円)となるが、現在は実現されていない。この決定は今年6月に行なわれたが、まだ実現されていない。9月23日のパキスタンからのニュースでは、政府が3カ月前につくった法律を、再度発表したため、近日中に実現されると思われる。「社会保障制度」は鉄道員、地方公務員、自治体や駐屯地の職員等、公共サービス従事者を除外している。また、老齢年金法については実施に向けた政治的意志を欠いている。一部の者のみを対象とした全体として排他的、差別的な法律である。女性労働力に関しては、依然として立ち遅れたままである。
 パキスタンでは、児童労働が大きな問題である。この問題を私たちは15年前から取り上げてきたが、まだ完全には解決できていない。1991年には、法律で14歳未満の子供の雇用を禁止し、危険職種においてはすべての子供の雇用を厳格に禁じている。しかし、1992年ILO報告では、パキスタンでは絨毯織り産業で働く子供の約半数が、栄養失調や病気が原因で、12歳に達する前に亡くなることが明らかになった。その後のILO報告 (1996)の推定によれば、330万人の児童が「経済活動に従事している」としている。児童労働を強いられている子供たちの職種としては、煉瓦造り、修理関係、レストラン等があり、7~8歳から働いている。ILOが進める児童労働撤廃に関する国際プログラム(IPEC)は、監視やリハビリテーションによる児童労働との闘いで、サッカーボールや外科用手術用品、カーペットの生産部門において一定の成功を収めてきた。こうした取り組みや、当局の取り締まり等により児童労働の数は減少しつつある。

*1ルピー=1.072円(2014年10月1日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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