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No.251(2014/7/8)
ネパールの労働事情

 2014年6月13日、当財団の招へい事業で来日したバングラデシュ・ネパールチームの労働事情を聴く会が開かれた。
 今回は、ネパールの労働事情について、ネパール労働組合会議(NTUC)のヨゲンドラ・クマール・クンワールさんと、ネパール労働組合総連合(GEFONT)のスムリティ・ラマ・タマンさんの報告についてその概略を紹介する。

【海外で働く労働者からの送金に頼るネパール経済】
 2012年のネパールにおける1人当たりの年間収入(※1)は735米ドル(約7万4588円)となっており、この水準は、1913年の日本人の収入と同じである。また、人口の半数以上は貧困ライン(※2)の下に置かれており、毎日の収入が米ドル換算で1ドル(約101円)以下となっている。こうした貧困層が多いのは、識字率(約65.9%)が低いことと無縁ではない。
 GDPの構成は、農業分野が38.1%、工業が15.3%、サービス業が46.6%となっている。ネパールの経済に大きく貢献をしているのは、海外で働く労働者からの送金で、GDPの25%を占めている。また、約30%の家庭で海外からの送金を受けており、その平均は、年間8万440ルピー(約8万4462円)となっている。この額は南アジアの中で最も多く、世界でも5番目に多い国となっている。
 ネパールの労働力人口は1180万人で、完全失業率は5%(※3)となっている。産業別に就業者の割合を見ると、農業と森林業に携わっている人たちが73.9%、それ以外の産業に従事する人々が26.1%となる。毎年30万人の労働力が新たに労働市場に入ってくるが、ネパール国内に良好な就労場所が無いため、不幸にも多くの若い人たちが海外へ出稼ぎに行かざるを得ない状況にある。現在、毎日1500人の若者が海外に働きに出ている。海外で働くネパールの若者は、約300万人に達し、48カ国で働いている。地域別には、中東とマレーシアが労働者全体の80%を占めている。しかし、労災事故などの犠牲となり、毎日3人ぐらいが遺体となって帰国している。
 また、就業者のうち96.2%の人たちがインフォーマルセクターで働いている。ほとんどの人が、危険、きつい、汚いという環境で働いている状況にあることに加え、最低賃金以下で働かざるを得ない状況にある。労働者のうち、最低賃金が支払われている割合は42%である。また、インフォーマルセクターでは、多くの児童(※4)が働いているという問題がある。
 ネパールの最低賃金は、月額8000ルピー(約8400円)、日雇労働者は1日318ルピー(約334円)となっている。茶畑の労働者は1日201ルピー(約211円)、このほか軽食と日当20ルピー(約21円)が支払われる。

【憲法制定への期待と女性差別撤廃へ共同行動を】
 2013年11月19日に2回目の制憲議会選挙が行なわれ。現在、ネパール会議派が、ネパール統一共産党や、他の小政党とともに連立政権をつくっている。この1年間で憲法を制定するため、党派間で調整を進め合意を目指している。制憲議会選挙というのは、一生に1回しか経験できないと思っていたが、ネパールでは2回起きたことにとても驚いている。
 1回目の制憲議会選挙(2008年4月)では、マオイスト(毛沢東主義派)が最も多い議席を獲得し、マオイストを中心にした政権が誕生した。2回目の制憲議会選挙では、ネパール会議派とネパール統一共産党(NUML)が合計で60%の議席を獲得した。ネパールでは、政府とマオイストによる内戦が1996年から続き、11年目の2006年に和平交渉が行なわれ、合意し、終結を迎えた。その後、1回目の選挙で最も大きな勢力を持ったマオイストであったが、2回の制憲議会選挙では、大きく議席を減らし第3党に後退した。
 私たち労働組合の期待は、現在5人の現役の議員がいることである。現政権のコイララ首相は、1年間で憲法を制定すると公約しているので、私たち労働者のこと(基本的権利)が、憲法に確保(明記)されることを、この5人の議員に期待している。
 ネパールの労働市場では、女性に対する報酬(賃金)差別がある。さらに、差別撤廃のために、先導的な役割を果たしている女性に対する差別がある。私たちの言葉では、「昔は壁がレンガで作られていたが、今はガラスの壁となり先が見えるものの、先へ進もうとすると壁にぶつかる」と表現している。こうした困難な問題に立ち向かうために、私たち労働組合は、複数ありそれぞれ組織の運動には相違があるが、女性に対する差別の問題は一緒に協力して行動していくべきである。

<JILAF注>
(※1)一人当たりGDPは約717米ドル(約7万2761円)(2013年度)
(※2)貧困割合は31%に減少、地域等により格差が見られる
(※3)公式な統計数値は公表されていない
(※4)2012年のILO報告によれば、160万人の児童(15歳未満)が働いている

*1米ドル=101.48円(2014年7月1日現在)
*1ルピー=1.05円(2014年6月30日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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