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No.246(2014/6/16)
不法移民収容所での労働1日1ドル

 米国には現在約250か所の不法移民収容所があり、そのうち連邦政府運営が55、地方自治体が21、残りは民営であり、年間13万5000人が収容されているといわれる。また特に911事件以降、収容所の数が増加した。
 米国では、自由市場至上主義と、連邦および州政府の財政難が新しい刑務所ビジネスをもたらし、1990年には5カ所しかなかった民営刑務所が、わずか10年の間に100カ所以上にふくれあがっている。
 不法移民収容所においては、所内の料理や清掃などの労働に収容した移民を使っているが、報酬は1日1ドル(約102円)であり、ところによっては無給の例もある。仕事を拒否すると、独房に入れると脅されるケースもあるという。
 罪を犯した刑務所の囚人が規定に従って働きながら、賃金補償権を放棄していることとは違って、不法移民の収容は民事の問題で、しかもその半数は滞在を認められて釈放されている。その中には、レストランで働いていた人で一部書類の間違いだけで収容され、15ドル(約1530円)の収入が1ドル(約102円)に減り、訴訟費用も含めて7万5000ドル(約764万9250円)の借金を抱えた人もいる。
 しかし連邦政府担当者は「1950年に決められた時給1ドル(約102円)は1979年に改定が見送りになった額であるが、所内で行なわれている実態は違法ではない。収容者も働くことでモラルと規律の維持に役立つ。またその労働で年間20億ドル(約2040億円)の費用が節減されている」という。
 他方、民間企業の収容所が儲からない事業だと言われながら、911事件以降の状況変化から収入が大幅に増加しており、民間収容所を運営する主要2社の昨年の利益はそれぞれ3億ドル(約306億円)、1億1500万ドル(約117億2885万円)を記録して、前者の株価が10年前の3ドル(約306円)から30ドル(約3060円)以上に上昇した。

*1ドル=101.99円(2014年6月12日現在)

全米農業労働組合の怪、労働組合加入20年にして労働協約締結できず

 米国最大のカリフォルニア州の果樹園、ジェラワン・ファーミング(5000人)において20年前に労働組合が結成され、全米農業労働組合(UFW)に加入した。
 しかし今に至るまで労働協約が締結できないことから、加入継続の是非を問う組合員投票が6か月前に行なわれたが、労使の論争の中で開票ができていない。
 農業が盛んなカリフォルニア州では、過去750の農業労働組合が結成された。しかし労働協約を締結できたのは350だけで、残りの400はジェラワンと同じ状況にある。労働専門家は「ミシガン、メイン、ノース・カロライナ、それにカリフォルニア州北部の農場の組織化は非常に難しい」という。
 ジェラワン氏は「家族経営の中で、私の果樹園は業界最高の賃金を出している。しかし労働組合と州労働委員会は共謀して、憲法に違反する州法により、私の事業を支配し労働者からは労働組合選択の自由を奪おうとしている。UFWは20年間、手紙、電話、ファックス、Eメール等何の音沙汰もなかったが、突然戻ってきた」という。
 一方、UFWイレネス副会長は、「ジェラワン労働組合が結成されたのは1992年だが、労使交渉は1回行なわれた。しかし相手が非常に手強いと知り、UFWは労使合意が出来ないときの強制仲裁裁定法の制定に力を注ぎ、2002年に法律ができた。UFWはこの裁定法による協約を試験的に3か所の小農場で成立させて数百名の組合員を獲得し、2012年にジェラワンとの交渉に再着手した」と説明する。
 こうして昨年には再三の協約交渉が行なわれたが合意に至らず、UFWは裁定を申請した。しかしジェラワン側は「仲裁裁定を協約にすることは憲法上疑義があり、また会社と労働者に対して不当に労働組合を押しつけることになる」とする訴訟を起こした。
 他方、州の農業労働委員会では「UFWはジェラワン側が労働者を脅迫してUFW反対の投票をさせたと訴えたため、開票を見送っている。委員会は独立機関として不当労働行為があったかどうかの調査をしている。UFWに味方していることはない」と述べているが、ジェラワン側は「脅迫の事実はない。早く開票してほしい」と言う。
 米国では失業率が高い時でも、農場の求人には米国人労働者がなかなか集まらない。そうした中でも、UFWは積極的に米国人農業従事者の組織拡大の取り組みを行なってきた。
 UFWの共同創始者、シーザー・チャベツ元会長(1027-1993)は伝説の労働組合指導者で、今年映画化もされたメキシコ系の人物だが、激しい労使紛争の中で非暴力主義を貫きながら、過酷な労働条件のもとで働く農業労働者を守り、UFWを大きくした。カリフォルニア、コロラド、テキサスの各州には、シーザー・チャベツ氏を称える州の休日がある。
 また、組合員の減少に見舞われたUFWは2006年にAFL-CIOを脱退してChange-to-Winに加盟した。その後、サービス労組や食品商業労組(UFCW:2013年にAFL-CIOに復帰)などの脱退労組の地方組織とAFL-CIO地方組織との連携活動が許されている中でも、AFL-CIOはUFW地方組織との連携は許していない。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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