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No.241(2014/5/21)
自由貿易協定に悪夢を抱く米国労働組合

 日米政府が環太平洋経済連携協定(TPP)早期決着をめざし、交渉を重ねる中で、米国の経済学者の間では20年前に締結した北米自由貿易協定(NAFTA)の功罪をめぐって、評価がまちまちとなっている。雇用に対する評価も、数十万人の雇用が生まれたとの評価と、70万人もが失業したと評価が別れている。米国商業会議所では「農業と牧畜産業に大きな利益があった」としているが、いえることは数百万人の雇用と賃金を減らしたということだろう。
 特に労働界にとっては、NAFTAが間違いなく雇用を減らし賃金を低下させたとの印象が強く、TPPや欧州自由貿易交渉に反対の空気が強い。
 このような状況の中で3月27日、AFL-CIOはNAFTAに関する報告書を発表したが、そこでは「NAFTAが企業の利益を増進させながら賃金を低下させたこと、協定にうたわれた労働者保護が無視され改善が見られなかったこと、環境保護にも失敗したこと、通商拡大の恩恵は企業だけにもたらされたこと」をあげて「NAFTAにうたわれた関税撤廃や規制緩和、投資の保護ということは、結果的には米国の労働集約的雇用を法的整備が弱体で規制の緩い国へ移転させるに終わった」と指摘している。アメリカ労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)はTPPに完全な反対ではないが、危機感はかなり強いものがある。
 AFL-CIOトラムカ会長はその点について「TPP交渉や欧州との協定について賛成できる新たな形ができて欲しいと希望しているが、今のところは従来と変わらない企業中心の内容だ」と述べている。
 オバマ政権は「新貿易協定はNAFTAの欠点を補って、米国経済に必要な新たな市場を作り出し、輸出を増進させるものだ」と述べているが、共和党や産業界も同意見である。フロマン通商代表も「米国の通商政策は20年前とはかなり違っている。批判は旧態依然として1994年の事例を引き合いに出すだけで、2014年の現実を無視している」というが、多くの民主党議員と労働組合に賛同の空気は薄い。
 5月7日には、全米通信労働組合(CWA)など各労働組合を含むTPPに反対する各団体が、米連邦議会前で反TPP集会を開き、米政府・議会に対し「TPPは雇用をなくす」「公正な貿易を求める」などの要求を行なった。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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