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No.233(2014/3/25)
フォルクスワーゲン(VW)工場組織化で労働組合が選挙のやり直しを提訴

 テネシー州チャタヌガのフォルクスワーゲン工場の組織化に僅差で失敗した全米自動車労働組合(UAW)は投票に当たって外部関係者による脅迫と威嚇行為があったとして、2月21日にそのやり直しを全国労働関係委員会(NLRB)に提訴した。提訴には会社も共同で加わっている。
 2月12~14日にかけて行われたUAW承認投票は、会社側の支援もあって可決が確実で、近年の労働運動史上最も重要な意義を持つと見られていたが、共和党議員や知事による強い反対活動などによって、挫折した。
 しかしこの提訴が広い論点で論議する政治家に勝利するのは容易でない。今回はVW経営陣も労働組合の組織化を支持するという前例がないケースだっただけに、提訴受理には困難性が予想される。過去にも政治家が労働組合承認投票に絡んだケースはあるが、いずれも労働組合側か会社側にたつもので、今回のように両者と対立するものではなかった。
 こうした中でUAWが問題にしているのは、共和党議員たちが「労働組合ができると、会社への税制上の恩典がなくなる」、コーカー上院共和党議員が「労働組合ができなければ、チャタヌガに新型車の生産が導入される」などと主張し、労働組合結成が雇用を危険にさらすかのようなキャンペーンを行なった点である。
 しかしNLRBは政治ないし工場外部への権限はなく、こうした発言を禁じることもできない。投票が公平に行われたか、脅迫行為があったかのみが焦点になる。脅迫行為が実際にあったかどうかは、そのように感じたとする従業員の証言が必要になるが、投票が秘密投票であることで該当者が探せるかどうか、また従業員の労働組合反対理由には新規採用者への割安賃金など多くの理由があることも問題を難しくしている。
 仮に再投票が行われたとしても、ダメージの修復が出来るかどうか、税制上の優遇措置停止の可能性はどうか、コーカー議員の発言を撤回できるのかなど、困難な課題が待ち構えている。チャタヌガでの新型車生産の決定は予定された2月28日を過ぎた今、未だ出されていない。
 UAW会長ボブ・キング氏は、労働組合の勢力が弱く、政治的にも労働組合を排除する傾向が強かった南部で、VW経営側に協力するというUAWの組織化戦略をたて、ドイツ金属産業労組(IGメタル)との緊密な連携のもと組織化の準備を進めてきただけに、巻き返しを図りたいが、事態を変えるにはいまひとつ大きな展開が必要な情勢である。

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AFL-CIO評議会、賃金引上げが労働運動再生への道と確認

 昨年4月、独自調査によって、米大手経営者の報酬は一般社員の354倍の平均12億円もの所得を得ていると、所得格差の問題点を指摘したAFL-CIOは、評議会会議で、賃金引上げが労働運動再生への道であり、また今年秋の選挙へのテーマであることを確認した。
 同時にAFL-CIOは、2010年の選挙で多くの州知事、州議会が共和党に奪われて労働組合への迫害を招いたことから、州・市町村への対策に力を入れることにし、特にミシガン州、オハイオ州、ペンシルバニア州、ウィスコンシン州およびフロリダ州を最重点地域とした。これらの州は知事、上院、下院も共和党が優勢を占めている。
 この点いついてAFL-CIO政治委員会のサンダース委員長(州地方自治体労働組合会長)は「ミシガン州の共和党・スナイダー知事は労働組合への加入と組合費支払いを従業員の自由意志とする労働の権利法に署名して、労働組合を弱体化させた。またウィスコンシン州の共和党・ウォーカー知事は公務員の団体交渉権制限法を成立させた。労働運動全体が生存の危機に立たされている」と述べている。
 またAFL-CIOのポッドーザー政治局長は「最高裁決定による政治資金規正法の緩和で、企業と共和党が有利になった。それに対抗する資金を集めなければならない。2010年に労働組合は3億ドル(約304億円)の政治資金をつぎ込んだが、それ以上の努力が必要だ」と強調した。
 オバマ大統領が大統領令によって連邦最低賃金を現行の7.25ドル(約735円)から10.10ドル(約1024円)に引き上げることを提案してから、各州の世論調査では最賃引き上げに好意的な意見が増えており、ウィスコンシン州では賛成62%、反対35%、フロリダ州でも賛成73%、反対24%という結果が出ている。また、ポール・クルーグマン教授など著名な経済学者らも最低賃金引き上げ支持の表明をしている。
 こうした状況に労働組合指導者たちは、最賃を含めた経済問題に焦点を合わせることで、今までアピールできなかった白人労働者層をも引き付けることになると考えている。
 他方、議会予算局は「連邦最低賃金の引き上げで、90万人が最低生活レベル・ラインを上回り、1600万人の賃金が上がるが、50万人の職が失われる」との調査結果を発表した。これを受けて共和党は、オバマ提案は雇用を失わせていると主張している。
 今年11月に予定されている米上院中間選挙は、3分の1の20人改選のうち10の州で接戦が予想され、民主党に不利な状況であり、下院議会では民主党が過半数を占める可能性は低い。
 なお賃金については最近、ギャップやウォルマートなどの大手企業が、優秀な労働力を確保するためとして賃金の引き上げを発表している。

*1ドル=101.40円(2014年3月3日現在)

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