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No.207(2013/11/6)
インド・インドネシア・ベトナムの労使紛争の現状
~労使紛争未然防止セミナー基調講演より~

 2013年9月26日、JILAF主催の労使紛争未然防止セミナーの基調講演、「アジア諸国の労使紛争の現状について」(香川孝三 大阪女学院大学教授・神戸大名誉教授)の概略を報告する。

 10年ぐらい前から、アジアに進出した日本の企業で労使紛争が起きている。
 インドネシア、インド、ベトナムの3カ国は、好調な経済成長、一人当たりGNPの規模、あるいは日本と経済連携協定(EPA)の締結などで共通している。さらに、日本企業の直接投資も拡大しており、日本にとっても重要なパートナーである。
【インドネシアの紛争の特徴】
 1998年5月、開発独裁を進めてきたスハルト大統領の辞任後、結社の自由や言論の自由など民主化が進み、労働法も整備された。また、ILOの中核的労働基準に関する8つの条約を批准した。2004年10月には、インドネシア史上初の大統領直接選挙が実施されユドヨノ氏が選ばれ、現在2期目となる。
 このような民主化を背景に、労働組合に対する規制も徐々に弱まったことから、組合活動が活発になり、ストライキ件数、参加者数も、少しずつ増えている。
【インドの紛争の特徴】
 インドは統制の強い社会主義型社会であったが、1991年より経済の自由化が進められ、外国資本を積極的に導入してきた。インドにおいても、大規模なストライキが目につくようになってきた。
 インドの場合、コントラクトレーバーと言われている外部委託、いわゆる請負労働がある。こうした非正規の労働者が増え、それが紛争をより激化させる原因にもなっている。
【ベトナムの紛争の特徴】
 ベトナムは社会主義国であるが、1986年にドイモイ政策を採用し、社会主義市場経済化を目指している。しかし、労働組合自体はベトナム共産党の一党支配のもとにあることから、労働組合は企業寄りの立場をとり、労使協調的な側面が強い。
しかし、ベトナムは低賃金政策のため一般の組合員の生活は苦しい。このため、企業寄りの立場に立つ組合幹部に対する反発から、突然ストライキ(山猫スト)に入るグループが現れる。
【労使紛争の原因】
 労使紛争の原因は[1]組合結成後、組合を団体交渉の相手として認めるかどうかという認証をめぐる紛争[2]事業所の閉鎖等で人員整理が行われる場合(紛争が厳しくなる)[3]最低賃金を含めた賃金をめぐる紛争[4]非正規労働者をめぐる紛争――である。
また、日ごろから非常に不平不満がたまっていることから、感情に駆られて暴力を伴う紛争となることもある。
【労使紛争の未然防止策】
 労使紛争の防止策の基本は、労働組合と使用者との団体交渉によって労働条件を改善するというシステムを定着させることにある。こうした労使交渉を前提に、現地の労働者との意思疎通を図ることが必要である。
 戦闘的な労働組合を結成されることもあるが、このような場合でも団体交渉の相手と粘り強く交渉していく覚悟が必要である。
 日本企業はグローバル人材を育てる必要があると言われているが、そのグローバルの中に労働法、労働問題、あるいは労務管理の知識も含めた人材養成を行うことの重要性を呼びかけた。

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