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No.200(2013/10/9)
AFL-CIOが数百万人の非組合員との連携活動へ

 4年に1度のアメリカ労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)定期大会が9月8日から12日までロサンゼルス行われた。
 トラムカ会長は数百万人の非組合員、環境団体、移民団体などとの協力・連携活動を提案した。その趣旨は、労働組合が衰退する中で、幅広い協力関係を築くことによって労働者のための政治的、経済的問題解決に役立てようとするものである。そのため、労働組合に所属しない人たちにも共通の問題について協力、連携を呼びかけた。
 米国の労働組合は組合員を失い、過去100年間で最低の11.3%という組織率に落ち込み、賃金は数年にわたって凍結を余儀なくされている。かつては労働組合の牙城であったウィスコンシン州やミシガン州で労働権を制限する法律の成立を許し、また、オバマ大統領誕生と下院、上院における民主党多数の時も労働組合結成を容易化する法律が制定できなかった。
 トラムカ会長は「労働運動の危機はまことに深刻だ。今までと違った実験を試みる必要がある。関係者全員の力を結集しなければ事態は変えられない。多くのことを試みてその中から取捨選択してゆくしかない」と語った。
 しかし、労働組合の新たな取り組みも成果を挙げつつある。ウォルマートでは労働組合の支援を受けたアワー・ウォルマートというグループが、賃金労働条件の改善を求めて抗議活動を展開しており、国際サービス従業員労働組合(SEIU)はファストフード労働者のスト支援活動や、ボストンで低賃金の助教授の労働組合結成に動いている。また全米自動車労働組合(UAW)は、南部地方で日産やフォルクスワーゲン(VW)、ベンツの組織化を進めており、とくにVWではテネシー州の工場でドイツ流の労働者協議会結成に向けて活動中である。反組合色の強いテキサス州でも多くの労働組合が結成に動いており、議会への働きかけを強めている。
 これに対し実業界や保守派は、賃上げや生産性を阻害するとして労働組合の活動に反対しており、労働組合の衰退は現代の労働者が労働組合の必要性を認めないためだとして、組合員数の減少を歓迎している。また労働組合は組合費の力で政治や立法面で権力を持ちすぎたとも公言している。
 しかし、自由主義者や労働組合関係者は、労働組合が衰退すれば所得格差が広がり、実業界や保守派の億万長者への対抗力がなくなると指摘する。この点で、AFL-CIOのクレイグ・ベッカー顧問(前全国労働関係委員)は「現状が不平等であり賃金も上がらない中で、問題解決には活力のある労働者組織の再生が必要だという一般的な認識がある。希望の持てる点はここだ」と語る。
 AFL-CIOの外郭団体であり、選挙のときに非組合員を動員したワーキング・アメリカ(WA)のナスバウム理事長は、こうした見解の底流にあるのは、労働組合が現在の衰退傾向を逆転させるとしたら、アメリカ人を再度団体行動に駆り立てる必要性で「団体の力についての信念を回復できない限り、労働運動や進歩活動の問題は解決できない」とする認識を述べている。
 1990年代半ば、AFL-CIOのスウィニー前会長は労働運動を再生させるために傘下労組に対し多数の組合員獲得を要請した。しかし多額の資金をつぎ込むなどして真剣に取り組んだ労働組合は少なく、多くの労働組合は危機感を持っていなかった。それに加えて、多くの労働者が労働組合加入の利点を感じておらず、使用者側も労働組合結成を阻害する各種知識を習得していた。
 しかし現在の認識は労働組合関係者の誰もが追い立てられる状況にあり、何か大きなことをしなければという切羽詰った感覚にあるだけに、成功の可能性が強く出てきたと言われる。トラムカ会長の理念は、数百万人の非組合員を労働運動に参加させることだが、それにより労働安全衛生や最低賃金、富裕層への増税などの労働組合の取り組みが支援できる。非組合員に組合費を支払わせるかどうかは分からないが、支払うことになれば労働組合財政にも大きな力となる。
 AFL-CIOの役員たちは今、労働組合結成が49%の賛成に終わって失敗したとしても、49%を見捨てるのでなく、労働関係立法などに向けてその協力をどう仰ぐかを考えようとしている。また、彼らに向けて低金利クレジットカードや割安な生命保険の提供なども考え始めた。
 その中で、今労働組合関係者が注目しているのは米国西部のワシントン州における、労働組合が女性グループ、移民団体、宗教団体、そして退職者やゲイ・グループと一緒になって行っているコミュニティ活動である。彼らは共同でシアトル市議会に対し有給病気休暇の制定を働きかけて成功した。代わりに労働組合は同姓婚の法律制定に大きな役割を果たしている。また、黒人牧師たちと協力して刑務所出所者の職探しや抵当家屋の競売回避に取り組んでいる。チームスター労働組合は、シアトルのタクシー運転手への法律相談や法律制定、またタコマ市ではマムズ・ライズ(立ち上がるママの会、110万人)と協力して有給の病気休暇法制定に動いている。
 その他シアトル南方のシータック市では、同州の最低賃金は米国最高の9.19ドル(約899円)であるが、労働組合と市民団体が協力して最低賃金を15ドル(約1468円)に引き上げようとして、11月に住民投票を準備中である。これに対し使用者側は、署名の不備を理由に無効を申し立てたが、裁判所が申し立てを却下することも起きている。使用者側は15ドル(約1468円)ということになると中小企業は労働者のレイオフを迫られるとしているが、住民投票を支援するある教会牧師は、「空港に働く労働者でさえ、多くの人たちが教会のフード・バンクに列を作って、食糧の配給を受けているのが現実だ。発言の機会が無いこうした人たちのために、15ドル(約1468円)はぜひ実現させたい」と述べている。

*1ドル=97.93円(2013年10月2日現在)

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