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No.188(2013/8/6)
エジプト労働力・移民省大臣に独立エジプト労働組合総連盟(EFITU)前会長

 エジプト暫定政府は7月16日、独立エジプト労働組合総連盟(EFITU)のカマル・アブ・エイタ会長を労働力・移民省大臣に任命した。これを受けてアブ・エイタ会長はEFITU会長を辞任した。
 アブ・エイタ前会長は就任後の活動として、[1]自由な労働組合活動[2]最低賃金の増額[3]最高賃金の低減[4]年金の増額[5]閉鎖工場の再開[6]解雇労働者の再雇用[7]政府関係機関における身障者の採用を規定した関係法の実施――などを優先課題として取り組むとしている。
 国際労働組合総連合(ITUC)シャラン・バロウ書記長は「今回の大臣任命は、真の民主化に向けた転換点になり得る」と、歓迎の声明を発表した。 
 EFITUは2011年1月に結成されており、その指導的役割を果たしたのは初の独立系労働組合として2009年に設立された不動産税務署一般労働組合(RETA)のアブ・エイタ委員長であった。アブ・エイタ委員長は2007年から賃上げ交渉と、所属していた官製労働組合である銀行・保険労働組合からの独立分離闘争を展開し、ゼネストを指導した。
 2011年の国政選挙では、自らも創立者の一人である「ナセル主義カマーラ党」から立候補した。ムバラク大統領退陣後、暫定政権から労働力・移民相就任を求められたが、断った経緯がある。
 今回の労働力・移住省大臣任命に対し、EFITUと対立するエジプト労働組合総連合会(ETUF)は7月15日、カイロ市内に数百人の労働者を動員して今回の労働力・移民省大臣任命に抗議するデモを行なった。さらに暫定政府に対して「今回の大臣任命を白紙に戻さない限り、当局との対話の路は閉ざされる」と宣言した。
 アブ・エイタ前会長は「民主化への困難な移行期の中で、政治的な自殺行為になるかもしれないが、このポストをあえて受ける」と述べた。
 なお、RETAは、国際産業別労働組合組織(GUF)の一つである国際公務労連(PSI)に加盟しており、その上部団体であるEFITUは国際労働組合総連合(ITUC)の準加盟組合である。
 国際労働財団(JILAF)の招聘プログラムにより、今年1月に来日したEFITUの執行委員は「エジプトすべての労働者はETUFへの加入が義務づけられ、組合費は月給から天引きされていた。しかし、ETUFは革命の結果、解散が命じられた」と報告しており、エジプトの民主的労働運動の行方は混沌としている。

過去の関連記事:
メルマガNo.70(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2011/070.html
メルマガNo.67(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2011/067.html
メルマガNo.64(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2011/064.html
メルマガNo.62(http://www.jilaf.or.jp/mbn/2011/062.html

米国の大手小売企業がバングラデシュの繊維工場の安全対策を発表

 北米のウォルマート、ギャップ、LLビーン、ターゲット、メイシーなどの大手小売企業17社は7月10日、今年4月のバングラデシュの繊維工場が入居するビル崩壊事故による1129人の死亡事故を受けて、バングラデシュの繊維工場における安全対策計画を発表した。
 この計画は、安全性検査や労働者からの匿名情報提供のために4200万ドル(約41億9700万円)を予算化し、バングラデシュの工場主が行なう安全対策に1億ドル(約99億9900万円)をローンなどで貸し付ける内容となっている。
 この企業グループは「バングラデシュ労働者の安全のための同盟(Alliance for Bangladesh Worker Safety)」と呼ばれ、企業の生産高に応じて年間100万ドル(約9990万円)を上限に5年間にわたり拠出し、4200万ドル(約41億9700万円)の基金を創設する。
 これにより、取引する500の繊維工場に対して、必要な安全対策を講じるため、12ヶ月以内に視察・検査を実施する。また、今年10月までに共通の安全基準を設け、現地企業や政府、各種支援機関とも緊密に連携して、各工場に労働者参加委員会(Worker Participation Committees : WPC)を設立することとしている。
 しかし、安全対策の責任は工場主にあり、ローンは支援するがそれ以外の資金援助は行なわず、安全対策を講じない工場との取引は停止することとなっている。全工場の検査、救助計画の策定、労働者への安全教育などについては配慮する内容を盛り込みながらも、訴訟が多発する米国事情をふまえ、賠償責任は負わないと規定している。ただし、この計画は金額を明記すると共に、参加企業はいつでも脱退することが可能で、2年以内に脱退するときは5年間の拠出金を支払う義務が生じるなど、具体的な内容となっている。
 一方、 欧州企業もバングラデシュの繊維工場への安全対策についての協定を5月に締結し、取引先の工場に消防や建築上の問題があれば対策資金を援助することなどを決めている。
 欧州協定の策定には、140ヵ国、組合員5000万人を擁する、国際産業別労働組合組織のインダストリオールが主要な役割を果たした。この協定は、70企業が参加し、すべての取引工場について9ヶ月以内に検査を終え、安全に問題のある工場には救助計画や改修、安全性改善のための必要資金を確保することとなっている。この協定には、米国のアバクロンビー&フィッチや、カルバン・クライン、トミー・ヒルフィガーも参加している。
 インダストリオールのユルキ・ライナ書記長は、「米国の計画は、法的拘束力を持つ欧州協定を表面的にまねたもので、自主的な対策である。過去の経験からみても、このような自主対策は成功しない」と語る。
 バングラデシュの繊維・衣料品業界は、安価な労働力により急激に拡大し、現在では中国に次ぐ世界第2位の衣料輸出国となっている。1980年代半ばには400弱であった工場が、2012年には5400まで増え、その雇用者は400万人に上り、国全体の輸出の8割を占めるまでになった。
 主な輸出先は、60%が欧州、25%が米国で、低価格品への需要は強く、事故後の6月の輸出は16.3%増加の27億ドル(約2698億245万円)を記録している。

*1ドル=99.935円(2013年7月24日現在)

過去の関連記事
No.177(2013/6/14)http://www.jilaf.or.jp/mbn/2013/177.html

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