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No.177(2013/6/14)
バングラデシュで歴史的な安全協定締結

 バングラデシュの首都ダッカ近郊で4月24日に起きた8階建てビルの崩壊事故は、5月13日現在1127人の労働者が亡くなる世界最悪の産業事故のひとつとなった。
 バングラデシュは、2012年度6.3%の経済成長率を達成したものの、一人当たりのGDPは766.5ドル(2012年度暫定値)と、最貧国のひとつとなっている。労働者の8割は法律の保護対象とならないインフォーマルセクターで働くことを余儀なくされている。工場で働ける繊維労働者は良い方で、多少の危険な職場でも頼らざるを得ない状況にある。昨年も火事で100人以上の死者が出ており、企業側の安全管理が問われている。
 崩壊したビルの労働者の賃金は、月37ドル(約3591円)から50ドル(約4852円)で、北京の約8分の1、ニューデリーの4分の1程度である。このビルにはイタリアのベネトンの下請けやH&M、ZARA、GAPなど、世界の有名ブランドが最低水準の賃金を利用しており、いまや繊維加工業はバングラデシュの主要産業となっている。
 バングラデシュには約5000の縫製工場があり、約450万人の労働者が働いている。その労働者の8割が低賃金の女性である。日本のユニクロも中国一辺倒のリスクを回避する「チャイナプラスワン」としてダッカ郊外に工場を持っており、バングラデシュの悲劇は華やかなファッション産業の裏面を象徴している。
 キャラクター製品を製造している米国ディズニー社は、火災とビル崩壊の悲惨な状況に、バングラデシュから早々に撤退することを表明した。各工場は形の上では監査会社やNPOの安全審査を受け、ブランド各社はこれをうのみにして、自ら現場を確認していないことが昨年の火災事故で判明した。ディズニー社のように撤退し、他の途上国で同じものを作ることは簡単だが、それではバングラデシュの労働者の生活は守れない。
 そこで繊維産業を組織する国際労働組織インダストリオール(IndustriALL)と、NGOであるクリーン・クローズ・キャンペーン(Clean Clothes Campaign)、労働者の権利連合(Workers Rights Consortium)は5月15日、スウェーデンのH&M、ZARA、オランダのC&A、英国の小売り大手プライマーク(Primark)、テスコ(TESCO)、イタリアのベネトン(Benetton)などと「防災・建物安全協定(Accord on Fire and Building Safety)」を締結した。
 協定では、安全基準を満たしていない工場での製造を禁じるとともに、必要な修繕と改修への支払いを企業に負担させることになっており、バングラデシュの繊維産業を維持していくことを努力するとしている。
 インダストリオールは、まだ協定に同意してないウォルマートやGAPなどにも圧力をかけている。また、バングラデシュの内閣は5月13日、工場に労働組合が組織しやすいように労働法*を改定し、繊維労働者の新最低賃金を労使で協議する賃金委員会を立ち上げることを表明した。
 なお、ユニクロをはじめとした日本のメーカーは、この安全協定への参加を6月7日現在表明していない。

*現行の労働法では、工場労働者の3割が賛成しないと労働組合は組織できない。
 しかし、この3割の名簿を会社側が確認することになっている。このため会社側は、労働組合組織化のリーダーを解雇したり、サインした労働者を切り崩したりすることなどが生じて、労働組合が結成できないことが多い。改正法では会社の事前確認は必要無いとしている。

1ドル=97.055円(2013年6月7日現在)

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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