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No.158(2012/12/21)
労働権を守る米国各州における労働組合の活動

 オバマ大統領再選となった大統領選挙と平行して、各州で労働権を守る労働組合の動きが活発化している。
 
 【ニューハンプシャー州】
 労働組合に不利となる 『労働の権利法』に反対するマギー・ハッサン知事を、前任のリンチ知事に続いて民主党から選出するのに成功。
 【ミネソタ州】
 民主党が過半数の議会実現に成功して、国際サービス従業員労働組合(SEIU)がめざす1万2000人のデイケア労働者の組織化に関する法律改正にめどがついた。
 【ミシガン州】
 公務員の団体交渉権擁護を憲法に規定する提案の住民投票には敗れたが、財政困難の地方自治体が非常事態責任者を選んで労働協約を破棄できる法律は撤廃させた。
 【カリフォルニア州】
 政治目的に使われる組合費の自動徴収を禁じようとした「提案32」について、通過を阻止した。カリフォルニア州からメイン州に至る各地で民主党知事や民主優位の議会選出に力を発揮している。
 【ウィスコンシン州】
 労働権の制約と労働組合弱体化の動きを進めてきたウォーカー知事に対する今年6月のリコール選挙には失敗したが、9月には『団体交渉権制限法』が州憲法に違反するとの判決を獲得した。
 
 このように労働組合は、各州で持ち前の動員力と巨額な資金による広報活動により成功を収めている。しかし、各州の財政逼迫による影響は大きく、レイオフや給与、年金の減額を受けており、組合員数の減少も顕著で、130万人を擁する地方自治体労働組合(AFSCME)では2009年から10%の減少、320万人を擁する全米教育協会 (NEA)も2010年から10万人以上の労働組合員を失った。また、従業員の労働組合加入と組合費支払いをその自由意志に任せる 『労働の権利法』は米国23州で採択されていたが、全米自動車労組(UAW)の拠点でもあり労働組合の力が強いミシガン州が遂に24番目の州として承認した。ミシガン州の『労働の権利法』は民間だけではなく公務員にも適用される。
 AFL-CIOは強い反対運動を展開する中で、『労働の権利法』を採択した各州では労働者の年収が平均よりも1500ドル低く、年金や健康保険も低水準にあると警告を発している。
 こうした状況の中で、設備拡充と115人の新規雇用を発表したミシガン州にあるダイムラー社・エンジン工場を12月10日、オバマ大統領が訪問した。
 オバマ大統領は、「『労働の権利法』制定の動きは経済の停滞でなく、政治的理由によるものであり、賃金や労働条件改善のための団体交渉権を奪ってはならない。この『労働の権利法』は賃下げを加速させることになる。訓練され、信頼性と生産性が高く、転職率の低い健康的な労働者がアメリカに成功を導く。高い所得による消費が必要だ。現在重要なのは、道路や橋などのインフラ整備のための雇用の創出であり、新規雇用を造り出す企業への優遇税制である」と訴えた。
 
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ウォル・マートへの抗議活動が拡がる

 米国最大の小売企業であるウォル・マートは、何年にもわたって労働組合結成の動きを阻止してきた。しかし、労働条件改善を求める従業員の声がますます拡大しており、最も忙しい金曜日に休暇を取得するなどの抗議活動が多くの店で発生している。
 これに対し、ウォル・マートが始めて11月15日、全国労働関係委員会(NLRB)に訴状を提出し、背後に従業員の意思ではない労働組合による操作が行なわれていると訴えた。抗議行動を主導しているのはOURウォル・マートと呼ばれるグループだが、労働組合などとの関係は明らかでなく、活動も低賃金や厳しい労働時間などの労働条件、会社規定に触れた懲罰などに関するもので、労働組合結成の動きにまでは至っていない。しかし今回の提訴によって、会社が始めて事態を深刻に受け止めていることが明確になった。
 OUR ウォル・マートによると、先月は28店舗で88人が休暇を取得による抗議活動が発生し、このグループの数十人が本社に出向き抗議行動を行なっている。当初はこれに取り合わなかった会社も、管理職に対して合法的な対処方法を指示する通達を出し、OURウォル・マートだけではなく、労働組合支持グループである全米食品商業労働組合(UFCW)の友好団体、ウォル・マート変革などに対しても、会社敷地内への不法侵入者は逮捕されるとの警告を出すようになった。
 UFCWは、長年にわたりウォル・マートの労働組合結成に取り組んできた。これはウォル・マートが多くの労働組合容認企業を倒産に追い込み、競争企業の賃金や労働条件引き下げの原因となったからである。カナダでは労働組合が結成された店舗の閉鎖、テキサス州の店舗では2000年に食肉裁断部門が労働組合を結成しようとしたことで、会社側はその部門を突然廃止し、職人たちを解雇してパックに入ったスライス肉を外部に発注したことも、UFCWの激しい怒りを買った。
 一方会社は、「再三、弁明のできない休暇の取得や意図的な営業妨害により、顧客や従業員の安全を侵害することがあれば雇用規約に照らして処分される」と述べている。また、NLRBへの訴状では、UFCWが背後から労働法違反行為を行なっているとして、「労働法はピケ活動や怠業を30日に限定しており、その後は正式な労働組合の結成投票を実施することになっているが、ピケ活動や怠業などの活動は数ヵ月に及んでいる」と指摘した。
 会社の主張に対しUFCWは、OURウォル・マートの取り組みは、自発的な経営に対する抗議活動だと反論している。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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