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No.148(2012/10/18)
パキスタン・カラチの繊維工場火災による悲劇

 パキスタンの主要な繊維企業であるアリ社のカラチの工場で9月11日、火災が起こり300人弱の労働者が死亡した。窓には鉄格子がはめられ、スプリンクラーも設置されておらず、しかも施錠されてなかった出口は1箇所だけなど、安全基準の設定に問題があったことが被害を大きくした原因となっている。かつて1911年、ニューヨークで同様に繊維工場の火災があり、多くの死者を出したが、被害者はその時の倍とニューヨークタイムズも大きく報じた。
 同工場ではドイツのチェーン店KiK社向けのジーンズを生産しており、この悲惨な事故はパキスタンの主要輸出品である繊維産業に大きなダメージを与えた。パキスタン政府は原因を究明するために、調査委員会を立ち上げ、経営者は逮捕されるには至っていないものの殺人罪で起訴されており、銀行はアリ社の口座を直ちに閉鎖した。
 この工場は安全衛生や職場環境などでSA8000の認定を受けるため、1ヵ月前に認証実施団体であるSAI(Social Accountability International)が調査に入り認証を受ける予定になっていた。SAIはニューヨークの非営利団体(NPO)として、主に企業や産業団体からの寄付で活動をしている。
 SA8000(Social Accountability 8000)は1997年、国際労働機関(ILO)の中核的労働基準を中心に企業の自主的な取り組みを定めた国際的な規格であり、GAPやカルフールなど欧州企業や日本でも多くの企業が取得している。
 SAIはこのパキスタンの火災事故に関して、認証機関(Certification Body)であるイタリアのRINA社に調査を委託していたが、パキスタンでの活動を直ちに中止し、認証制度のプロセスを再検証するとしている。また、この認証制度のあり方についても疑問が投げかけられている。
 アリ社には労働組合がなく、RINA社の調査が入る日にはすべてのドアが開けられ、労働者へのインタビューも会社の筋書きどおりの応答を強制されたと生き残った労働者は証言している。
 IndustriALLのニュースによると、アリ社は政府への労働者登録をしないまま不法操業をしており、労働契約もずさんで労働者の氏名も把握しておらず焼死者の特定もできない状況であった。このような問題に対して、死者の家族に500万ルピー(5万3000米ドル)、負傷者に200万ルピー(2万1000米ドル)の補償をパキスタン政府に要求している。さらに、経営者の殺人罪での逮捕と、この火災事故を防げなかった労働省や監督当局の責任も明らかにする必要があると主張し、労働者を守るためには職場に労働組合が必要であると明言している。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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