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No.141(2012/9/4)
メキシコの労働組合事情

 金属や鉱業、化学、エネルギー、繊維などの国際産業別労働組合組織(GUF)であるIndustriALLのニュースによると、メキシコにおける自由な労働組合結成に対する障害との長い闘争の末に今年7月6日、既存の労働組合の妨害を乗り越え、ディメンションメタル社(DMI)の新労働組合として金属労働組合(STIMAHCS)が誕生した。新労働組合が結成されるまでに、2回の投票と多くの裁判闘争を伴った。最初の労働組合結成投票は2010年10月8日に実施され、既存の労働組合の意義申し立てにより不成立となった。その後、連邦仲裁調停委員会は、今年7月6日に再投票を実施するよう裁定し、今回の結果となった。
 STIMAHCSは、会社が投票に対し中立的な立場を維持したことに対して評価し、既存の労働組合を排除したことは今後の労使双方にとってプラスになるとしている。
 STIMAHCSは真正労働者戦線(FAT=Frente Autentico del Trabajo)に加盟し、 国際産業別労働組合組織(GUF)のIndustriALLに加盟した。STIMAHCS結成には、メキシコのマキラドーラ(保税輸出加工区)で活動を展開している米国の全米電機ラジオ機械労働組合(UE)が支援していたことは注目される点である。
 メキシコの労働組合事情は複雑で政党との関わりも深く、特殊な歴史を持っている。最大政党である制度的革命党(PRI= Partido Revolucionario Institucional)は、2000年まで71年間に渡り大統領職や議会を支配してきた。PRIは労働組合を政党組織に組み込むことで安定した労使関係と選挙の基盤を築いてきた。そのPRIの最大支持基盤であるメキシコ労働組合連盟(CTM)は、多くの工場や職場で巨大な勢力を維持してきた。
 第二次世界大戦後の混乱期や経済成長期には労働者の賃金を生産性の上昇を超えない水準に維持し、ストライキも起こることなくインフレなき成長に寄与し、コーポラティズム体制は確立された。しかし、1970年代にストライキや賃上げを抑制する労働組合指導者は非民主的な慣行を批判された。1980年代には、政府が公的部門と民間部門の双方において、生産性の大幅な向上と効率化を促進。その結果、産業の再編および縮小により、大量のレイオフが発生し、労働組合は雇用を守ることに多くのことを譲歩する結果となった。
 こうした中で、独立系労働組合として労働者全国連合(UNT)やFATが結成される一方、メキシコ電力労働組合(SME)のようにCTM加盟組織の中にも自主的な労働運動を展開する労働組合も出現したが、PRI-CTMの関係は強固で、新労働組合結成には多くの困難が伴う。メキシコは、ILO87号条約(結社の自由及び団結権の保護に関する条約)を批准しているが、労働組合は社会保障省の承認が必要となっており、組合結成の投票では既存の労働組合からの妨害もある。
 PRIの後に政権を獲得した右派系の国民行動党(PAN)・カルデロン大統領は労働組合に関心を示さず、国際的な支援を得た独立系労働組合が勢力を増してきた。しかし、今年の大統領選挙でPRIのエンリケ・ペーニャ・ニエト前メキシコ州知事が勝利を収め、12月には大統領に就任することから労働組合に新たな動きが出て来るか注目される。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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