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No.122(2012/5/8)
東日本大震災における産業別労働組合の支援活動(自動車総連)
 組合員約77万人を擁する全日本自動車産業労働組合総連合会(自動車総連)は、「東日本大震災」発生後、直ちに「中央災害対策本部」を立ち上げ、被災した岩手、宮城、福島、茨城4県に設けた「現地対策本部」と連携しつつ、12の企業別労働組合連合や各企業別労働組合と一体となって救援・支援活動を展開した。
 第一に、連合の中核労働組合として、「連合救援ボランティア活動」に積極的に参加し、半年間に、延べ2194人を宮城県多賀城市・石巻市・東松島市、岩手県気仙沼市に派遣し、被災家屋の家財搬出、がれきの撤去、汚泥の除去などにあたってきた。
 自動車総連には全国の仲間や全米自動車労働組合(UAW)をはじめとした海外の友好組合から4億1000万円もの義捐金が寄せられた。これらはまず被災した組合員やご家族への見舞金として、また連合を通じた被災者への支援として活用されている。
   自動車総連は、社会進歩を担う労働運動の一環として、従来から福祉カンパによる物品・車両寄贈を実施してきたが、今回の震災において多くの車両が津波で流されたことによるニーズをふまえ、現地対策本部との連携のもと、被災地の社会福祉協議会を中心に車両34台と発電機8台を寄贈した。
 「東日本大震災」は戦後最大の犠牲者を生み、被災した方々に甚大な被害をもたらしたばかりか、福島第一原子力発電所の事故も相まって日本の経済・産業に大打撃を与えた。自動車総連は被災者支援に加え日本経済・自動車産業の復興を視野に、国に対する政策要求の取り組みを強化した。
 具体的には被災車両の車検期間の延長、被災車両買い替えに伴う税の減免などについて、各省庁や民主党への要請を機動的に進めた。その結果、車検期間は3ヵ月延長され、被災者の車両購入に伴う税金が大幅に減免されることとなった。
 連合とともに取り組んだ政策要請では、雇用維持対策・中小企業金融支援など、急を要する対策が補正予算に反映されるなど、経済再生のための施策を実現することができた。
 未曾有の大震災から1年を経てなお、復旧・復興、原発事故対応には長い時間を要する。自動車総連は、今後とも被災地の皆さんの思いと期待に応えられるよう、また、連合のめざす「働くことを軸とする安心社会の実現」に向け、総力を挙げ取り組みを進めていく。
中産階級を育てるメキシコ自動車産業
 メキシコの自動車産業は、トヨタ、日産、ホンダなどの日系企業、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード、フォルクスワーゲンをはじめとする、大手完成車メーカーが進出している。また、こうした完成車メーカーの下に数多くのサプライヤーも操業しており、多くの雇用が創出されている。
 メキシコ日産自動車・アグアスカリエンテス工場では5400人の労働者が働いており、その中のある組立工は、12時間・2交代制で勤務し、週130ドルの収入を得ている。この収入は北米日産・スマーナ工場で働く労働者の約7分の1程度だが、それでも1950年代に米自動車大手ビッグ3の労働者が中産階級への道を歩んだ時と同じ状況である。
 米国では第2次大戦後、自動車産業をはじめとする製造業は、数百万人の雇用を創出し、多くの労働者が中産階級の収入を得た。この中産階級は、自動車を造り、多くの自動車を買い、経済成長と生活向上の循環を掘り起こしてきた。メキシコの自動車産業も中産階級の育成に重要な役割を果たそうとしており、調査では人口の約53%が中産階級への分岐点にあると言われている。
 メキシコでは、政府の補助によって、食品、住宅、医療、交通などの出費はかなり低く済むが、工業製品や衣服、家具などには、高い税金が課せられ米国並みの価格となっている。しかし生計費を総合してみると、全体としては政府補助のおかげで低く抑えられている。中産階級の育成のため、自動車産業の発展が期待されるメキシコだが、自動車生産は本年2月に昨年同月比で24%増を記録し、増加傾向となった。
 メキシコは、米国とカナダとの間に北米自由貿易協定(NAFTA)を締結し、南米・北米ともに輸出に有利な地位を得たことから、米国との貿易は大幅に拡大している。こうした利点をふまえ日産は、メキシコでの生産能力を年産100万台以上に引き上げる計画であり、他の自動車メーカーも同様の方針だ。
 日産の初めての海外進出は米国ではなくメキシコであった。日産は今日、メキシコのナショナル・ブランドと呼ばれるまでに成長し、かつて街を走るタクシーの代名詞はフォルクスワーゲン・ビートルであったが、今や日産・Tsuru(鶴・2代目サニー)が大多数を占める。また農村地帯であった「アグアスカリエンテス」は、7万人が住む大きな街となり、多くのショッピング・ストアーが建設されるまでになった。メキシコ日産自動車・アグアスカリエンテス工場では、第2工場の建設が進むと周辺企業を含め、約3万2000人の雇用が創出される。
 しかし課題も多い。メキシコの人口1億1400万人に対して、自動車登録台数は2000万台程度で、普及を妨げているのは、[1]10%を越す金利[2]60万台を越す米国からの中古車輸入[3]メキシコで製造した自動車の3分の2が米国に輸出される構造――であるとされている。このような状況は、米国で中産階級が成長した環境と同じではないし、企業内組合という労働組合の現状も米国とは異なる。米国では生産性向上とともに産業別労働組合の力で賃金が上昇し、購買力の増加によって経済成長が加速した。
 メキシコ日産の場合は、労働組合はナショナルセンターであるメキシコ労働組合連盟(CTM)の傘下にあるものの、組合事務所は会社内にあるのが現状だ。そして組合幹部は日産の社員で構成されており、ストライキは行なわない。就職希望者も多く、離職率は年間1%に過ぎないとされている
発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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