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No.109(2012/2/23)
デフレ克服には内需を喚起する賃上げが必要

 2011年の全国消費者物価は、前年比-0.3%となった。この結果、3年連続してマイナスとなり、デフレからの脱却は達成できなかった。物価の下落は、消費者にとってはメリットも多いはずだが、労働者から見れば喜んでばかりはいられない。物価の下落は労働者の賃金にも影響するからである。
 厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によれば、労働者の現金給与総額(残業、一時金込みの総額)は下落が続いている。最近では、2010年に前年比プラス0.6%となったものの、2009年は-3.8%、2011年も-0.2%であった。
 賃金が下落する背景には、海外経済の低迷や円高などによる企業収益の圧迫もある。一方、国内消費の弱さによる価格引き下げが、そこで働く労働者の労働条件引き下げ圧力にもなっている。しかし、経営者は、景気が良かったときも労働者への配分を減らしてきた。2002~2008年までは、輸出を中心に戦後最長の景気拡大が続いた時期であったが、そのときも賃金は下落傾向(別表参照)だ。
 日銀は、2月14日、インフレ目標を中・長期的な物価安定の水準として、消費者物価の前年比上昇率で「2%以下、当面は1%」をめざす方針を決定した。日銀の白川総裁は、「デフレ克服には潜在的な成長率を高めることが必要」とも述べ、金融政策だけでは限界があることを認めている。
 日本における需給ギャップは15兆円とも言われており、この需給ギャップを解消するためには内需を掘り起こさなければならない。しかし、日本の労働者の賃金は、長期間下落するとともに、非正規といわれる低賃金層も増大している。このため、財布の紐を固く締め買い控えをして生活防衛をしているのが現状である。
 EUの債務危機を背景に海外経済は低迷、円高も加わり、日本経済は足踏み状態にある。こうした中で原油や穀物価格などは上昇し、燃料費や原材料費は高止まりしている。2011年は、ガソリン価格が9.6%、電気代が2.8%上昇しており、今後の生活への影響も懸念される。
 今、春季生活闘争の労使交渉が行なわれている。経営側の代表である日本経団連は、賃金水準を引き上げるベースアップを「論外」と否定。こうした姿勢は、総額人件費を抑制しコストを削減、短期的な利益を求めているにすぎない。わが国の経済社会をいかに再生していくのか、何をもって内需を増やし、デフレから脱却していくのか――。というマクロの課題にはまったく応えていない。

 
消費者物価と賃金の動向
消費者
  物価上昇率
所定内賃金
  増減率
現金給与
  総額増減率
1999 -0.3 -0.4 -1.5
2000 -0.7 0.3 0.1
2001 -0.7 -0.9 -1.6
2002 -0.9 -1.7 -2.9
2003 -0.3 -0.7 -0.7
2004 0.0 -0.7 -0.7
2005 -0.3 0.2 0.6
2006 0.3 -0.3 0.3
2007 0.0 -0.5 -1.0
2008 1.4 -0.1 -0.3
2009 -1.4 -1.3 -3.8
2010 -0.7 -0.2 0.6
2011 -0.3 -0.4 -0.2
資料出所:総務省統計局、厚生労働省(すべて前年比%)
(注)所定内賃金は、時間外労働や一時金を含まない。現金給与総額には、時間外労働や一時金が含まれる。
発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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