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No.107(2012/2/13)
日本の労働時間の実態と働き方の問題
 厚生労働省は2月1日、2011年の年間総労働時間を発表した。この調査は、常用労働者5人以上の3万3000事業所を対象としている。
 2011年は東日本大震災により被災地の回収率は低下したが、年間総実労働時間は、1747.2時間と前年比で7.2時間短くなった。1990年の調査開始時の統計と比較すると、316.8時間短縮したことになる。
 この結果からみれば、日本人の働き過ぎも大幅に改善され、ワーク・ライフ・バランスの確立に向けて大きく前進したかにみえる。
 しかし、現実はどうなのか、別の角度から労働時間の実態について検証してみよう。
 2011年の結果を一般労働者(フルタイム労働者)とパートタイム労働者に分けると、一般労働者は2005.2時間、パートタイム労働者は1089.6時間と大きな開きがあり、一般労働者の労働時間はさほど短くなっていない。
 平均数を下げている理由は、[1]パートタイム労働者がフルタイム労働者よりも短時間労働である[2]パートタイム労働者の増加――などがあげられる。
 パートタイム労働者の時間あたり賃金は、フルタイム労働者に比べ相当低い水準にある。このため、日本の労働者は、フルタイム労働で比較的高い収入を得てワーク・ライフ・バランスをあきらめるか、収入の低いパートタイム労働者として自由な時間を得るか、いずれかの選択を迫られてきたといえる。
 収入は低くてもパートタイム労働者として働き、自由な時間を享受する人も多い。しかし、パートタイム労働者の中には、正社員(無期雇用)として働くことができないため、パートタイム労働者として働くことしか選択できなかった人も多い。
 また、パートタイム労働者の賃金だけでは生活できないことから、その穴埋めのため二重就労せざるを得ない労働者も存在する。
 連合は、すべての労働者が「年間総実労働時間1800時間」の実現を図るため、労働協約の改定と適正な労働時間管理を行なうことによる、時間外労働の削減に取り組むことを方針化した。
 また、仕事を終えてから次の勤務開始までに、休息や生活時間などを確保するための「インターバル規制(EU労働時間指令では最低11時間)」についても労働協約化することを検討している。
 連合は、パートタイム労働者の処遇改善のため立法によって、[1]有期労働契約(パートタイム労働者の多くが有期契約)には、「同一価値労働同一賃金」の原則を確立する[2]処遇については、就労形態にかかわらず合理的な理由のない差別的取り扱いを禁止する――など、均等・均衡待遇の実現をめざすとしている。
欧州産別労連が合併、新統合組織誕生へ
 欧州労連(ETUC)に加盟する3大欧州産業別労連は、欧州レベルの統合に向け準備を進めてきたが、新組織結成大会までのスケジュールが確定した。参加組織は 欧州繊維被服皮革労連(ETUF:TCL)と欧州金属労連(EMF)、欧州鉱山化学エネルギー労連(EMCEF)の3欧州産業別労連である。
 3欧州産業別労連の最終的な統合作業は、昨年12月から始まった2011年12月に企業対策作業班、2012年1月には団体交渉作業班、2月には団体交渉・社会政策委員会、産業政策委員会、社会的対話委員会、3月には企業対策委員会が開かれ運動方針を論議する。
 1月31日に開かれた3組織合同執行委員会では、新組織の活動綱領、執行体制、規約、執行役員候補――を決定し、「新組織の結成によって欧州700万人の労働者を代表してより強力な行動を行なう」と宣言した。3組織は解散大会をそれぞれ5月15日に開き、欧州産業労連(EIWF)は5月16日の結成大会で誕生する。
 EIWFを結成する欧州産業別労連と密接不可分の関係にある当該国際産業別組織(GUF)である国際金属労連(IMF)と国際化学エネルギー鉱山一般労連(ICEM)、国際繊維被服皮革労組同盟(ITGLWF)も統合し新国際産業別組織の結成大会が2012年6月、コペンハーゲンで開催される。
ネパールと中東の労働組合が移住労働者の連帯支援
 経済のグローバル化にともない、国境を越えて仕事を求める移住労働者は世界的に急増している。中東湾岸諸国はその労働力の多くを外国人労働者に依存。自国の労働者のほとんどが公務員で民間部門は外国人労働者となっている。湾岸諸国の外国人労働者の比率は6~8割に達する。
 一方、南アジアの開発途上国には一家の生活を支えるため、国外に出稼ぎに行く労働者が多い。外国でより高い賃金と労働条件をうたい出稼ぎ労働を斡旋している多数のブローカーが存在しているが、雇用契約書の条件が守られていない、賃金の不払い、劣悪な労働条件――など、現地で困難に遭遇することが少なくない。パスポートを没収されて強制労働に従事させられた例もある。組織化や団体交渉も拒否され、賃金の遅配や移動の自由も制限される。
 国際労働運動は移住労働者の問題にも取り組んでおり、国際労働組合総連合(ITUC)は特別支援計画として送出国と受け入れ国のナショナルセンター間の協力によって問題解決を図るため仲介役を果たしている。 
 クウェート市では、移住労働者送出国のネパール労働組合総連盟(GEFONT)と受け入れ国のクウェート労働組合連盟(KTUF)、バーレーン労働組合総連盟(GFBTU)との間で2012年1月11日、覚書が交わされた。
 GEFONTと KTUF、 GEFONT とGFBTUの2組織間の覚書となっているが、いずれもほぼ同様の内容である。ネパール側が移住労働者の事前教育を実施し、受け入れ国の情報提供を行ない、送出国としての活動を進めると同時に、受け入れ側のナショナルセンターのネパール人労働者の組織化に協力する――との具体的な連帯行動を記載している。また移住労働者に関連するILO条約にも言及し、批准と実施を求める運動も進めており、協同で労働契約書の統一的なモデルを作成することも含まれる。
 クウェートには約4万人のネパール人労働者が働いているが、その半数は女性であり、主に家事労働で、男性は主に警備や清掃、建設関係に就いている。バーレーンでは、民間部門の労働者80%以上を外国人に依存しているが、ネパールから1万5000人以上の移住労働者が働いている。約半数が女性で製造業や小売・卸業、男性は建設関係である。
 覚書では移住労働者のガバナンスに関する両国政府間の協力促進や政労使三者構成における協議から労働現場の査察強化、クウェートにおいてはネパール大使館労働担当官とKTUFとの定期的な情報交換を開き、両組織の労働市場に関する定期的な情報交換や使用者団体との社会的対話の促進までと広範囲の活動を進めている。
 バーレーンのGFBTUは受け入れ国として移住労働者を組織化するために建設部会をつくり組合活動への参加や組合員としての法的な支援や保護を受けられる体制を構築し、必要な資料はネパール語で作成するなどの項目があげられている。
発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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