バックナンバー

No.98(2012/1/12)
アメリカン航空の破産をめぐる労働組合の対応と産業界の批判
 米国では、ほぼすべての航空会社が、日本の『民事再生法』にあたる『連邦破産法11条』が適用された歴史を持つが、ついに「アメリカン航空」の親会社であるAMRは、『第11条』を申請することとなった。
 この破産を受けて、約1万人の組合員を組織する、連合パイロット協会労働組合(APA)は、新たな「労働協約」の締結をめざすため、破産手続きが終了するまで労使交渉の指南役として、世界的な投資銀行であるラザード社と顧問契約する。
 APAはホワイトハウスで製造業政策担当・上席顧問を務めたロン・ブルーム氏とも接触したが、US郵便サービス社再建で全国郵便配達協会労働組合(NALC)への支援の最中であるため、快諾は得られなかったとしている。
 同氏は過去に航空パイロット協会労組(ALPA)や鉄鋼労組(USW)、チームスター労組を支援した実績がある。過去にラザード社と連携してGM やクライスラー再建のため、全米自動車労働組合(UAW)を支援した経験をもつ。
 その一方で産業界からの反応は全く違ったものだ。AMR社の破産がGMやクライスラー、ギリシャに次ぐ、労働組合に甘い経営の失敗例だとする報道もある。2008年から赤字続きだった同社が依然として業界最高の賃金や労働条件を維持しているからだ。航空業界の現状は、『連邦破産法11条』でなく会社清算(倒産)を意味する『連邦破産法7条』を申請する状況となっている。
オバマ大統領 全国労働委員会の委員選出に大統領任命権を行使
 労働問題を監視する連邦政府の独立行政機関である、全国労働関係委員会(NLRB)は、大統領が指名した5人の委員で構成されるが、委員の指名には上院議会の承認が必要である。またNLRBでは「最低でも3人の委員が選出されていなければならない」と定めている。
 最近までNLRBは、最低人数の3人で構成(民主党選出2人・共和党選出1人)されていたが、2011年12月末、民主党選出の委員1人が退任となり、新たな委員の選出が急務となった。
 このような状況の中、オバマ大統領は上院議会の休会中に行使できる「大統領任命権(リセス・アポイントメント)」を行使し、新たに3人の委員を任命した。
 まず、民主党選出の委員は、オペレーティング・エンジニア労組で法律顧問を務める弁護士のリチャード・グリフィン氏、労働省・議会局で副局長を務めるシャロン・ブロック氏である。共和党からは、NLRBの顧問弁護士であるテランス・フリン氏を任命。NLRBは新たな委員を加え5人で構成されることとなった。この3人の委員の任期は2013年末までとなっている。
 これに対して、共和党や産業界は、「現在のNLRBはあまりにも労組寄りだ。議会審議を無視した憲法違反の任命である」として、この決定に反対しており、訴訟を起こす構えである。その一方で労働組合は、「オバマ大統領の優れた指導力の結果だ」と評価。次期大統領選挙にも大きな影響を与えることになる。
 オバマ大統領の「大統領任命権」はこれだけではなく、消費者財務保護局の局長任命でも行使され、以前に共和党が否決した、リチャード・コードレイ氏が再度任命された。
 オバマ大統領の「休会時任命権」の行使は3年間で32件。これは対してブッシュ前大統領は8年間の任期で171件、クリントン元大統領も同じ任期で139件も行使している。
発行:財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.