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No.38(2010/6/21)
欧州従業員代表委員会(EWC)の機能強化

 欧州連合(EU)域内の多国籍企業における欧州従業員代表委員会(EWC)の設立が、1994年以来、進められてきた。EWCは発足から10年以上を経て、組合側はその機能強化を求めており、2008年にEWCの改定交渉が集中的に行われた結果、2009年5月、改正案が発表され、実施は2011年春とされている。
 EWCは「欧州従業員代表委員会指令(Directive)」により、EU域内で1000人以上を雇用し、かつ加盟国2ヵ国以上で、それぞれ150人以上の従業員を雇用する企業には設立義務がある。EWCに対しては企業の経営方針に関する情報の提供と協議が経営側に求められる。
 これは国境を越えた問題のため、労働組合は欧州労連(ETUC)と欧州産業別連合(EIS’s)が積極的にEWCの設立を進めてきた。しかし、国によってEWCは、「労働組合の伝統的な活動領域である賃金や労働条件まで入り込んできている」と憂慮する声も出ており、「この状況を経営者側も後押ししているのではないか」といった批判もある。この問題について労働組合は、「EWCとお互いに良きパートナーとして、その補完関係を認識すべきである」として、EWC担当者の教育・訓練を促進することとした。そのための訓練コースを欧州労組研究所(ETUI)・教育局が実施し、ETUCの教育活動を行っているが、EUの財政的支援を得ている。EWCの特別交渉機関(SNB)メンバーの訓練プログラム参加費用は会社負担となる。また、技術的な問題として「言葉や文化的な違いによる相互理解の難しさや当該企業の従業員への周知徹底については問題がある」との指摘もされてきたが、これらの問題を克服するためにETUIは同時通訳付きのコースも開催している。欧州労連は、傘下の組合から指摘されてきた問題に留意し、EWCの権限を強化すべく「EWC指令改訂交渉」を続けてきた。組合側は、[1]EWC対象企業の従業員数を現行の1000人から500人にすること[2]2ヵ国以上でそれぞれ150人の従業員数を100人にする――など要求していたが、同意は得られなかった。改正案には、「リストラや工場閉鎖などについて会社側は、従業員に十分な検討・対策の時間を与えること」を義務付けることなどが含まれている。かつて、英国の小売業大手であるMarks & Spencerが従業員への事前通告もなく、フランス店の閉鎖を発表して大きな社会問題に発展し、フランス政府が介入したことがある。少なくともこのような事態はなくなるものと期待されている。

 EWC指令はEUと欧州自由貿易連合(EEA)の3ヵ国を含む30ヵ国に適用される。現在は約841のEWCが設立されているが設立義務があっても設置されていない企業もある。EWCを持つ日系企業もある。欧州産業別労連には、国際産業別組織(GUFs)のヨーロッパ地域組織やその欧州機構も含まれる。

独立国家共同体(CIS)の労働組合プロジェクト

 独立国家共同体(CIS)諸国の労働組合プロジェクトが国際労働組合総連合・汎欧州地域評議会(ITUC-PERC)と国際産業別組織(GUFs)によって推進されている。
 国際金属労連(IMF)は、2009年10月27~28日、「新たな行動計画2009-2013」に関する会議をモスクワで開き、CISの5ヵ国から労働組合指導者40人が参加した。
 また、この会議に先立つ2009年6月2日、ITUC-PERCとGUFが「東欧・中央アジア・トランスコーカスにおける労組の近代化と組織化2009-2011」に関する合同会議をモスクワで開催している。
 合同会議では[1]CISの6ヵ国における組織化[2]多国籍企業対策[3]組合の近代化[4]同一雇用機会[5]法律面の取り組み――について議論された。具体的なプロジェクトは各GUFによって行われるが、プロジェクト対象国のナショナルセンターは欧州労連(ETUC)に加盟していないが、ITUCとその地域組織PERCに加盟している。
 各国の産業内における組織化にはナショナルセンターの法対部が支援を行い、相乗効果を図ることができるとPERCは考えている。
 また、組織化では[1]アゼルバイジャン[2]ベラルーシ[3]カザフスタン[4]キリギスタン[5]ロシア[6]ウクライナ――の多国籍企業を主眼に置いて進められる。合同会議では労働組合教育の評価や職場の安全衛生、EU東欧パートナーシップ枠組みにおける労働運動の強化など、ITUC-PERCが進めている活動についても報告された。
 合同会議には[1]国際金属労連(IMF)[2]国際食品労連(IUF)[3]国際運輸労連(ITF)[4]国際建設林業労連(BWI)[5]国際化学エネルギー鉱山一般労連(ICEM)[6]ユニオン・ネットワーク・インターナショナル(UNI) ――などのGUFが参加している。

*国際労働組合総連合・汎欧州地域評議会(ITUC-PERC)は、55ヵ国・87組織、8500万人を代表する地域組織で、すべてITUC加盟組織から成る。欧州労連(ETUC)加盟組織とアルバニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、グルジア、カザフスタン、キリギスタン、コソボ、モルドバ、モンテネグロ、ロシア、タジキスタン、トルクメニスタン、ウクライナ、ウズベキスタンの組織で構成。書記長はETUC書記長のジョン・モンクス氏が兼任している。

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