2018年 ザンビアの労働事情

2018年10月25日 講演録

ザンビア労働組合会議(ZCTU)
ムホンゴ リリアン グレカ(Ms. Muhongo Lilian Nguleka)
エネルギー関連労働者組合 財政管理担当
ブライアン ミラ(Mr. Brian Mwila)
ザンビア教職員組合 地方事務局長
チソラ サマカイ(Ms. Chisola Samakayi)
ザンビア司法関連労働組合 地方副会長

 

1.労働情勢

 実質GDP(対前年増減率)は、2017年が4.3%、2018年の予測は5%となっている。
 インフレ率は、2016年が17.9%であったが、2017年は6.6%に下落している。2016年から2017年にかけて物価上昇率が大きく減少したが、これは政府が生活必需品の物価を抑えるため直接的な介入を行ったことによるものである。
 失業率は、2016年~2018年(見通し)まで横ばいの各年7.4%となっている。  最低賃金は月額となっており、現在米ドルにして42ドルであるが、われわれが来日する同じ時期に労働大臣が新しい最低賃金額を発表した。この金額は現行のほぼ2倍になる見込みだ。

  2016年 2017年 2018年(見通し)
実質GDP(%)
(出典元)
3.6
( 財務省 )
4.3
( 財務省 )
5
( 財務省 )
物価上昇率(%)
(出典元)
17.9
( 財務省 )
6.6
( 財務省 )
6~8
( 財務省 )
最低賃金
(時間額・日額・月額)
(出典元)
□月額( 42米ドル)
( 労働省 )
□月額( 42米ドル)
( 労働省 )
□月額( 42米ドル)
( 労働省 )
労使紛争件数
(出典元)
データなし
データなし
データなし
失業率
(出典元)
7.4
(国家開発計画省
2014-2018)
7.4
(国家開発計画省
2014-2018)
7.4
(国家開発計画省
2014-2018)
法定労働時間
(出典元)
8 時間/日
( 労働省 )
48 時間/週
( 労働省 )
時間外/割増率
時給の1.5倍
( 労働省 )
休日/割増率
( )
通貨:10ザンビア・クワチャ(ZMK)=約1米ドル(2018年11月6日現在)

2.ザンビアの労働法制と社会保障制度の法的枠組み

 労働法制の枠組みは、雇用関係を定義する「雇用法268章」、全ての労働者の最低雇用条件を定義する「最低賃金・雇用条件法276章」、職場の安全衛生の確保のための最低安全基準を定めた「2010年労働安全衛生法」、労使関係の活動の条件を規定する「労使関係法269章」などで構成される。
 一方、社会保障制度を規定する法律としては、国民年金制度法、公務員年金基金法、地方自治体退職年金法、労災補償基金法などがある。

3.労働組合の主な(重要な)取り組み課題

(1)組織拡大

 ザンビア労働組合会議(ZCTU)は各加盟組織の組織拡大に取り組んでいる。なお、他の労働組合団体との間で組合員の獲得競争が起こり、このことによって組織が分裂することになれば団体交渉において力が弱くなることへの理解を求める活動も行っている。

(2)実質賃金低下への取り組み

 現在、労働者の実質賃金が下がってきている。その背景としては、金利の上昇、増税、燃料価格の上昇が挙げられる。これも重要な取り組み課題となっている。

(3)労働法制の改革(案)への対応

 現在、ザンビア労働組合会議(ZCTU)と政府の間で労働法制の一部改正を目指した協議が行われている。それは、雇用の非正規化を非合法化すること、全ての雇用関係法令を調和すること、最低賃金決定のメカニズムを強化すること、などであり、ザンビア労働組合会議(ZCTU)は現行法の欠陥部分やまだ対応しきれていない部分の改革を求めている。

(4)社会保障に関して

 ザンビア労働組合会議(ZCTU)は全ての社会保障に関する機関を一つの機関のもとに統合するよう提案している。そして、社会的保護の対象をインフォーマル経済にも拡大する趣旨の提案も行っている。また、健康保険に関して、出産の際に活用できる出産保険制度の導入も検討している。