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ドイツ商業部門の産業別労組ヴェルディは賃上げを要求、小売業使用者団体(HDE)との交渉不調で、5月15日全国一律の警告ストに突入

2026.05.19掲載

ドイツの労組は多くの場合高い賃上げを達成しているが、商業部門も賃上げ要求を決定、経営側との交渉に乗り出した。

「ヴェルディ商業部会は4月14-15日フランクフルトで協約調整会議を開催、小売業16協約適用地域、卸売業・外国貿易業20協約適用地域で、7%の賃上げ要求を決定した。要求の中心は期間1年の間に7%のベアを実現するものである。賃率表に反映されない一時金といった形での賃上げを組合は拒否する。」(DGBニュース2026年4月16日「ヴェルディは7%の賃上げを商業部門で求める」)

これを受けて4月17日ノルトライン・ウェストファーレンとバーデン・ヴュルテンブルク卸売業協約適用地域で交渉が開始されたのを皮切りに、交渉は進んできたが、5月11日ハンブルクとノルトライン・ヴェストファーレン小売業協約適用地域でヴェルディ商業部門と小売業使用者団体(HDE)の交渉が行われた際、提示された額は「最初6ヵ月間は賃上げゼロ、その後2026年11月から2%、2027年8月から1.5%というものだった。

「これは毒に満ちた提案だ。2年間働いてようやく3.5%だ。これはインフレ率にも対応していないし、物価上昇に見合わない」とヴェルディの商業部会トップであるシルケ・ツィンマーは述べた。」(ヴェルディ・ニュース5月13日「商業部会賃金交渉2026:レジでの最初のストライキ」)ヴェルディの予定表には、各地の交渉予定がずらっと並んでいるが、ヴェルディ商業部会は全国的な警告ストに打って出ることを決定、5月15日多くの小売店が店を閉めることになった。

「ハンブルク、シュトゥットガルト、フランクフルト、ドゥイスブルクでは組合員が参加する集会も開催され、全国5,000人の組合員が気勢を上げた。小売店で当日店を閉めたのは、エデカ、カウフハウス、ザラ、H&M、メトロ、イケヤなど200店にのぼった。」(ヴェルディ・ニュース5月15日「ヴェルディ商業部会全国で5,000名が警告スト突入」)

警告ストというストライキは、労組がスト権投票抜きで、比較的簡単に発動できる戦術で、全く合法である。大抵は時間単位か、長くて1日実施されるが、それでも使用者側は嫌がる。

ドイツの商業部門は520万人を雇用する大きな業態だが、パートタイマーが多く、小売部門では65.1%、卸売り部門でも27.6%がパートタイマーである。

ツィンマー女史は言う。「彼らは好んでパートタイマーという働き方を選んでいるわけではない。使用者がパートでしか職員を募集しないので、仕方なくパートで働いているのである。最近のガソリンやディーゼルの値上げで最も苦しんでいるのは、商業部門の労働者である。。。ライフスタイルとしてのパートという言葉があるが、これはインチキで、大抵の場合パートで働くことを強制されているのである。」(ヴェルディ・ニュース同上5月13日)

さらに組合にとって問題を深刻化させているのは、労働協約適用率(Tarifbindunng)の低下である。ドイツでは産業別で労使関係が作られているので、小売業使用者団体(HDE)が大きな力を持つ。しかしヴェルディとの協約締結を避けるため、HDEから抜ける企業がある。これに対しHDE側は使用者団体に入っていても、協約締結は必要ないという規定を設けるようになった。これがOTである。

こうした動きが広まると、産業別労使関係は弱体化する。今「2024年末でヴェルディの商業部会の組合員は22万9,000万人、組合員減少率は5%」という。(繊維経済紙2025年1月28日号「ヴェルディ商業部会は引き続きメンバーを失っている」)これに対し起死回生を狙う労組が掲げるのが労働協約の一般的拡張実施要求(AVE)だ。次の文章がある。

「1990年代の終わりまで、ドイツでは労働協約の一般的拡張実施が一般的だった。これが変わるのはHDEなどの使用者団体が協約導入を必要としないメンバーシップ(OT)を認めてからである。それ以来商業部門における協約適用率は劇的に落ちていくことになる。2014年AVEの導入には当該領域の50%以上の事業者が協約を適用しているという条件が取り払われ、労働交渉委員会(労使同数)での過半数の賛成で発動となったが、必ず使用者側が反対するため商業部門のAVE は全く実現することが無くなった。」(ヴェルディ商業部会文書2019年10月「20年の協約忌避はもう御免だ!」)

今回の賃上げ交渉では、このAVE 復活が賃上げと共に要求項目に入っていると言う。しかしこれは相当困難であろう。今年2026年の賃上げ交渉がどう推移するか、さらに問題意識をもって注視したい。(I)

以上