ウクライナ労働組合連盟(FPU)の方向性を巡る熱い討論が進む
―労働法典改正問題と帰還兵受け入れ問題―
ウクライナ最大のナショナルセンター、労働組合連盟(FPU)が5月21日第9回定期大会を開催する。ここでは次期会長の選挙も行われることになっており、今ウクライナの労働界はこの選挙の予想で沸き立っている。
およその見方は、現役のヴィゾフ会長の続投であるが、他に2人の候補者がいる。原子力産業労組プルトニコフ副会長と元国会議員のカプラン氏である。
選挙を前にして、各候補はその政策を発表しており、それらを読むとウクライナの労働事情が垣間見れる。(註 ウクライナには二つのナショナルセンターがあり、もう一つは自由労働組合総連合(KVPU)。JILAFの招へいプログラムに参加している。両組合とも国際労働組合連合(ITUC)と欧州労働組合連合(ETUC)の加盟組合である。)
まずヴィゾフ氏の政策を見よう。ウクライナでは今労働法典改正を巡り、議論が続いているが、すでに政府による労働法典の改正案は出ている。これに対し、ヴィゾフ氏は次のように述べている。「現行の労働法典(1971年制定)は現在の経済的現実に完全には一致していないので、労働法典の近代化は必要という点は同意する。ウクライナには労働分野で近代的で明確かつ公正なルールが必要だ。」「そのためにも、我々は労働法典の改正について、政労使の開かれた意味ある対話を強く求める。」「労働組合が労働者の権利を守る手段として役割を果たすこと、ストライキ権の弱体化は認められないこと、雇用主による圧力メカニズムの創出を防ぐことが基本である。」「最低賃金は生活賃金に連動し、平均賃金の50%以上でなければならない。」「有期雇用契約の原因を明確に規定すべきである。その任意の拡大の可能性を認めてはならない。」(UNN2026年4月15日号「労働法典改正に関し、労働側はあくまで労働者の利益を守ることに固執」)
これに対し対抗するプルトニコフ氏は、妥協的ポーズを取るのではなく、徹底的に闘うことを呼び掛けている。「もし我々が労使関係を見れば、経営者は奴隷主で、働く者は人間ですらない。低賃金のために働き、休暇も休日もなく、しかも12時間でさえ働かなければならないのだ。」(ソツポルタル4月11日「前線での戦いの後、組合員が最大の労働団体の会長に立候補」https://en.socportal.info/en/news/trade-unionist-after-the-front-runs-for-the-position-of-head-of-the-federation-of-trade-unions-of-ukraine/
次の大きな課題は、帰還兵・疾病兵の受け入れである。ウクライナ戦争が続く中、疾病兵をどのように職場に受け入れるのかというテーマは、現在のウクライナ社会では大きな問題である。
ヴィゾフ氏は次のように述べる。「我々はこれまで疾病兵のリハビリに万全を尽くしてきた。我々が持つサナトリウムなどの施設は3万2800人の疾病兵を受け入れ、リハビリなどに従事した。さらに我々は、帰還した疾病兵を職場で受け入れるよう努力している。我々は既に帰還兵を企業の人事部に配置し、どのように帰還兵を各職場で活用するかを検討している。遅かれ早かれ戦争は終わるであろう。軍に残る者は、さらに軍務につくだろう。彼らにも労働組合が必要だ。又職場で動員された者たちは、同じ職場に帰るだろう。帰還兵の受け入れと言う問題が出て来るが、これを担うのは職場とそこで活動する組合だ。この時社会的パートナーとしての組合の地位が重要だ。我々はどのようにこの問題を議論するのか。今後この問題が大きなテーマとなる。」(UNN4月20日「FPUは帰還兵のリハビリと雇用問題を拡張する」)
プルトニコフ氏はこの問題にさらに踏み込んでいる。彼自身が帰還兵ということもあり、職場に帰っての苦労が彼の発言からはにじみ出ている。まず職場復帰トレーニングから始め、徐々に職場に慣れていくこと、さらに戦争に行っている間に彼の技術がもう使えなくなっていると言う問題もある。彼は、労働組合を中心にし、職場、企業、州政府、政府を貫く受け入れ計画を作り上げる必要を訴える。(ソツポルタル同上インタビュー)
FPUに加盟する通信労組のエレーナさんに話を伺うと、「すでに多くの人々が前線から職場に戻ってきている。しかし彼らは前線で過酷な体験をしているので、すぐに職場復帰できるわけではない。それぞれ様々な経験をしているので、戦争神経症の現れ方も異なる。彼らの面倒を見ることも組合の重要な仕事である」との話だった。すでにウクライナ軍の死傷者・行方不明者は50~60万人で、戦死者は10~14万人に達している重い現実が背景にはある。。FPUの選挙戦に関しては、エレーナさんによれば、「お互いに熱くなり過ぎている」とのことだった。
さらに今回の選挙を巡っては、労働組合の組織拡大、民間スタートアップとの連携、福祉活動のデジタル化など多くのテーマがある。現在の所、ヴィゾフ氏が圧倒的に有利に選挙戦を進めているが、勿論どうなるかは5月21日になって見なければ分からない。いずれにしても逆流に抗して闘うウクライナ労働運動の発展を望むばかりである。(I)
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