李大統領が民主労総と懇談 労働者の権利保護へ「現実的な対案必要」~Kイニシアティブと労働改革~
2026.4.15
韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は10日、全国民主労働組合総連盟(民主労総)執行部と懇談会を開いた。
ソウル聯合ニュース(電子版)が4月10日に伝えている。
李大統領は、非正規社員を2年後に正社員へ転換させる現行の「期間制法」が、事実上「2年以上の雇用禁止法」と化し、かえって企業が正社員採用を敬遠する事態を招いていると指摘した。労働者保護のための法が逆に非正社員の地位を低下させ、大企業の正社員との格差を広げているとして、現実的な対案の必要性を強調したのである。
その解決策として、大統領直属の「経済社会労働委員会」への民主労総の復帰と、日常的な社会的対話の活性化を要請した。さらに、小規模事業者の労働者を含めた団体交渉権・団結権の保障や、交渉が決裂した際の集団行動権の行使にも一定の理解を示している。かつての労働運動に対する「共産主義者」といった偏見を克服し、政府として労働組合の組織率向上に向けた措置を検討するなど、労働者の権利強化に前向きな姿勢を打ち出した。(引用以上)
(注)民主労総は1999年に経社労委の前身である「労使政委員会」を脱退しているが、李在明(イ・ジェミョン)大統領は就任後の2025年9月4日にも、民主労総のヤン・ギョンス委員長および韓国労総のキム・ドンミョン委員長を招いて昼食懇談会を開催している。
李大統領の就任以降、韓国の労働市場は「働き方」そのものをゼロから見直す大きな転換期を迎えている。大統領が掲げる「K-イニシアティブ」という国家戦略の下、李政権は労働者の権利強化を進める一方で、従来の労働市場が抱えていた構造的な矛盾に鋭く切り込もうとしている。
李政権の目玉政策の一つが、「週4.5日制」から「週4日制」への段階的な移行である。韓国政府は2026年度予算に276億ウォンを計上し、約420社を対象に賃金を維持したまま労働時間を短縮するモデル事業「ワークライフバランス+4.5プロジェクト」を本格始動させた。2030年までに韓国の年間平均労働時間をOECD平均以下に引き下げる目標を掲げ、有給休暇も現在の15日から先進国水準の20〜25日へと拡大する方針である。単なる時短ではなく、生活の質向上と生産性アップの両立を国主導で推進している。
また、李大統領は現行の厳格な労働法が企業に正社員採用を躊躇させ、下請けや非正規雇用を増大させている「労働市場の二重構造」を問題視している。解決策として提示しているのが、デンマーク式の「柔軟安定性(フレキシビリティ・アンド・セキュリティ)」モデル、通称フレキシキュリティ(Flexicurity)である。企業の「雇用の柔軟性」と、労働者の「所得や再就職の安定性」を両立させる社会経済を目指しとしている。さらに、「みなし残業」の悪用を防ぐための出退勤記録の義務化や、深夜労働の連続勤務制限、「同一労働同一賃金」の法制化など、不合理な格差是正に踏み込んでいる。フリーランスやプラットフォーム労働者にも雇用保険・労災を適用するなど、保護の網を広げている点も特徴である。特筆すべきは、雇用労働相に戦闘的労組として知られる民主労総の出身者を大臣に抜擢し、労働者の権利強化に本腰を入れている点である。
日本も時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金を進めてきたが、韓国の動きはより急進的かつ国家介入の色彩が強い。日本では企業ごとの漸進的な労使協調がベースにあるが、韓国では政府が直接補助金を出して週4.5日制を牽引している。また、AI(人工知能)の導入に関しても、「雇用喪失を恐れるのではなく、労働界が主体的に研究して政府に提案してほしい」と大統領自らが働きかけており、技術革新を労働政策に直接結びつけている。
さらに、日本の労働組合が比較的穏健に労使協調を図るのに対し、韓国はストライキを含む労働運動が極めて活発である。李政権が急進的な労働運動出身者を閣僚に起用したことは、政策決定プロセスにおいて労働側の発言力がかなり高まっていることを示している。
韓国の労働改革が成功するか否かは、財源の確保と企業の国際競争力維持のバランスにかかっている。週4.5日制の補助金や社会安全網の拡充には莫大な国家予算が必要であり、元請け会社に下請け会社労働者の使用者性を認める「黄色い封筒法」などは、企業の活動を制約するとして経営側から強い反発を受けている。しかし、少子高齢化と労働力不足という日韓共通の課題に直面する中、韓国がこの柔軟性と安全網の両立や労働時間短縮という壮大な社会実験を成功させロールモデルを確立できれば、日本の今後の働き方改革にも多大な影響と刺激を与えることは間違いない。成長と分配の両立を図るイ・ジェミョン政権の今後の舵取りに、世界が注目している。(Y.T)
以上
