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ロシアで有数のEコマース企業ワイルドベリーズによる労組攻撃と国家保安機関の役割

2026.04.15掲載

 

今年2月のEコマース・ニュースによると欧州のEコマース企業トップ10は表のようになっている。( 流通総額/単位: 100万ドル)

この中で目を引くのはオゾンとワイルドベリーズというロシアの企業が2社入っていることである。(US, China and Russia dominate Europe’s ecommerce top 10)

余り知られていないが、ロシアのディジタル化では相当進んでおり、「国民のインターネット使用率は92,4%、これはおよそ1億3000~4000万人に相当する」(https://www.giuliogargiullo.com/ecommerce-russia/)と言う。そのような背景の中で、Eコマース会社は興隆を極めており、GDPの4~5%を占める重要産業だ。

ワイルドベリーズ(以下WB)社は、韓国系ロシア人の元英語教師タチアナ・キムによって2004年に創設された。ITエンジニアであった夫の支援もあり、会社は順調に発展、現在の地位を築き上げた。旧ソ連の各共和国に進出しており、規模は大きい。その後2024年夫婦は離婚を巡って、警備員2名が死亡し、40名が逮捕される銃撃戦をモスクワのど真ん中で繰り広げる、チェチェンの大物カディ―ロフが財産分与に介入するなど、スキャンダルの多い会社である。

そのWB社で労使紛争が続いている。事の発端は2023年WB社側がPVZ(注文受取拠点)職員への罰金制度を強化したことにある。

 

WB社のビジネスモデルではPVZが重要である。地域の注文受取拠点に荷物が運び込まれ、基本的に顧客はここに荷物を取りに来る。配達してもらう場合は、料金が高くなる。だから多くの顧客は荷物をPVZに取りに来る。私もベラルーシでPVZを見たが、荷物が所狭しと置かれている小さな事務所で職員数名が働いていた。このPVZの職員が罰金制度の対象となった。例えば、誤配送、破損、返品(ロシアではオンラインで注文し、試着した後、返品するケースが多い)等、事故が倉庫で発生したものであっても、全てがPVZ職員への罰金となる。しかも罰金は自動的に給料から天引きされ、時には給料が無くなることさえあるという。これが怒りに火をつけた。

まずPVZの職員達はSNS(テレグラム)を使い、「ワイルドベリーズ:職員の真実」というサイトを立ち上げ、不満を述べあい、労働組合結成に動いた。

ワイルドベリーズ従業員組合は23年3月に結成され、ロシア独立労働組合連盟(FNPR)という公式の労働組合ではない、ロシア労働組合連合(UTR)という旧ソツプロフ系の組合が中心となって結成したナショナルセンターに加入した。そしてすぐにストライキ行動に移り、全国各地のPVZでストが行われた。

この労組の指導者となったアレクサンドル・シベツは優秀な人物で、この時期に彼の指導の下ポドリスクの組合支部は547名にメンバーを拡大し、1,000件以上の訴訟を労働者に有利に解決した。2025年6月シベツに対し、証拠の偽造という刑事案件が浮上した。刑事事件と言うのは、金銭取引のない領収書を作り、裁判所で労働者のために使った時間を記録し、後に会社に払わせるためのものであり、(これは一般的に認められているのに)これを証拠書類の偽造=詐欺=刑事事件としてでっち上げる試みである。

昨年11月裁判所はこれを認め、彼を1年6か月の矯正労働(減給処分)とした。そして今年の1月12日からWB社の幹部の指示により、会社の警備・保安部によって彼は事実上職場に入れなくなっており、これをもって会社は無断欠勤とし、彼の矯正労働(減給処分)を変更し、6カ月の刑で刑務所に送ろうとしている。

シベツはFNPRのモスクワ州支部に助けを求め、そこに職を得ようとしたが、会社側は認めなかった。(ドーハ紙2026年4月6日WB社は労働組合のリーダーを刑務所送りにしたい) これは労働組合の弾圧以外何物でもない。

このようなやり方はロシアではよく見られ、労働組合の活動家を職場から排除するために、よく使われる手口である。会社の警備・保安部が国家保安機関と結び、会社にとって邪魔な労働組合役員を追い出す図式は、今ロシアで拡大している。

4月9日独立系ナショナルセンターKTP(ロシア労働組合総連盟)執行委員会名で航空管制官労組と船員労組事務所への国家保安機関による捜索が行われたことに対する抗議声明が出た。どうやら国家保安機関は、プーチン体制を支持するFNPR以外の労組組織を一掃しようとしているかに見える。ロシアにおける労働組合の弾圧は黙視できない段階に入って来ている。(I)

以上