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ドイツ経済の低迷とストライキの波

2024.04.11掲載

3月24日のニューヨーク・タイムズ(NYT)は、「過去四半世紀の間、団体協約に守られストライキの少なかったドイツ経済に顕著な変化が見られる」として、下記のように報じている。

過去最長のストライキには1950年代のキール造船所の114日ストがあるが 、今年初めからのドイツ東部のSRW金属スクラップ工場のストライキは135日を超えた。
労使協調の歴史を積み重ねてきたドイツでは信じられない出来事だが、今年1-3月のストライキ件数は過去25年間の中でも多数を記録しており、鉄道、空港、病院、銀行など各産業に及んでいる。
欧州経済の原動力であったドイツの成長力は今や、20か国中最低となっており、2023年は後退、2024年も停滞が予測され、そのうえ昨年は50年来のインフレに見舞われた。

直接の被害を受けたのは低・中間所得層で、その実質所得は戦後最大の減少を見せた。同時に抱えたのは労働力不足と老齢化問題だ。労働力不足は2035年までに700万人に達すると予測され、ドイツの福祉制度は重大な影響を受けるとされる。

ドイツ経済は過去数十年、中国への好調な輸出やロシアからの安価なガスの輸入に支えられてきたが、ウクライナ戦争と中国の国内生産増強で事態は一変した。
ドイツ経済を担う製造業は国内生産は、フランスや英国の2倍の比重の20%を占めており、停滞の影響や製造業に依存する低所得労働者への影響も大きい。
低所得労働者の40%には貯蓄がほとんどないといわれ、将来への不安が増大しており、社会福祉制度の先行きへの不安も大きい。

上述のSRW金属スクラップ工場労働者のストライキでの要求は8%の賃上げと労働条件改善、休暇日数増などだ。しかし現在、ストライキで夜間シフトは中止、生産ラインは4本のうち1本しか稼働していない状況となっている。他方、空港で行われているストライキでの要求はインフレ対応の15%賃上げのほか、6時間立ち放しの勤務シフトの変更がある。会社側も現状の労働条件では新規労働者の応募に影響があるとして、時間短縮と週4日労働を考慮せざるを得ない状況にある。

その他の問題として、富裕層に緩やかで中・低所得層に厳しい税制、パートよりも夫婦共稼ぎ家庭に重い税制など、諸々の要因がドイツ経済停滞の要因と言われる。
先週のベルリン空港とハンブルグ空港のストライキでは、570便が欠便となり9万人の乗客が影響を受け、鉄道乗務員ストライキでは1日で1億ユーロの損失が出ていると言われる。
経済専門家は「国民の心理的懸念が大きく影響しており、ウクライナ戦争と極右の台頭など経済的、政治的に国内が分裂する状況の中、収入の増加と共に安定を求める声が強まっている」と指摘する。