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労働組合はなぜ伸びないのか、労働関係委員会元議長の見解

2024.03.11掲載

2月29日のワシントン・ポスト(WP)は、クリントン政権時の全米労働関係委員会議長で、現在のスタンフォード大学名誉教授、W・グールド氏による標記見解を掲載した。

2023年は、労働組合が過去の巨大な遺物だとする評価に一時ストップをかけた年と言われ、全米自動車労働組合(UAW)やチームスターズ労働組合はストライキの成功で2桁の賃上げや労働条件の改善、物価調整手当の復活などを獲得し、ハリウッドでは脚本家や俳優がAIからの新たな補償を実現した。
このことで労働運動の復活が期待されたが、1950年代から始まった労働組合員減少には針先ほどの変化もなく、2023年の組織率は10%に低落、民間企業の組織率においては、6%にすぎない。2024年にも幾つかの協約改定交渉が予定されているが、組合員の増加には新たな戦略が必要である。

過去2年間、労働組合は大胆にストライキに取り組むと同時に、従来手を付けなかった分野のスターバックスやamazon、Apple、Googleなどの組織化に取り組み、ニューヨークのアマゾンでは8,000人を獲得、スタンフォードやMITなどの有名大学では研究に携わる大学生や大学院生を組織化した。UAWは工場閉鎖の場合のスト権を獲得、ステランティスについては閉鎖予定工場の合意到達までは操業続行と言う前代未聞の協定を結んだ。

2022年と2023年、労働組合結成投票の申請はそれ以前を50%上回る実績を記録、結成成功率は80%上昇したが、それでも数字は20年前の半数にも満たない。UAWの成功で組織化拡大の希望もあったが、非組合企業のホンダやトヨタ、ヒュンダイ、テスラはいち早く賃上げを発表して、その動きを封じた。

労働組合の勝利は労組支持を高めるのが通常で、1990年代のラスベガス労組の拡大時にも良好な労働協約が組織化への強い武器になった。こうして、アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)は最良の労働協約のリストを作成、公表した。

しかし何故組合員は増加しないのか?
理由として指摘されるものに、複雑かつ不当な労働行為からの脆弱な救済規定しかない全国労働関係法がある。スターバックスやamazonで労働組合が結成されながら、協約交渉を回避できるという法律の欠陥もある。最高裁はスターバックスの係争中の不当解雇労働者の即時再雇用訴訟を審議する予定だが、見通しは良くはない。最高裁は2018年に「労働協約の利益を受けるとしても、非組合員への組合費支払い義務は法律違反だ」とする判決を下した。
また、裁判所は「UberやLyftで働く多くのギグ労働者は従業員ではなく自営業者だ」と規定して、労働組合拡大への分野を狭めている。

しかし、法律だけが労働組合の成長を妨げているわけではない。反労働組合的と言われる1947年労使関係法(タフト・ハートレー法)が施行されて以降の10年間にも労働組合の成長が止まることはなかった。しかし、労働組合に友好的なクリントン、オバマ、バイデン時代には逆に組合組織率が減少した。

そこには他の理由がある。
25年前、労働運動は組織化に向けた予算を巡って分裂し、サービス労組を中心として結成されたChange-to-WinがAFL-CIOを脱退、 それ以降、2010年に143億ドルだった労働組合の純資産は2022年には327億ドルに増大して、年率11%の増加となった。
つまり、組合員が減少した時代に組合資産は増加した。重要なのは、この資産が若年労働者の組織化に使われているということだ。1930年から1940年代の爆発的な労働組合員の増加時にも組合費が同じように使われた。
組合員の増加が組合役員の地位を高めるわけではないし、組合員は外部の非組合員の組織化より組合内部の苦情処理や協約内容の確実な実施を好む。しかし、強い組合を作るには組合員の増加が最善の策なのだ。
バイデン大統領はH・トルーマン以来最も労組に有効的な大統領である。

職場の変化を起こす資金はある。その資源を有効に使う責任は労働組合にある。正しい使い方をしてこそ、効果的な組織的キャンペーンの展開と不平等な所得分配の解消、対等な労使関係の回復、米国社会の民主化が促進出来る。