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米国大手医療機関で3日間のストライキ

2023.10.26掲載

10月6日のニューヨーク・タイムズ(NYT)およびワシントン・ポスト(WP)などが「8州に医療機関を持ち、1,300万人に医療サービスを提供する米国有数の医療機関、カイザー・パーマネンテで10月3日、労働組合が3日間のストライキに突入したが、協約締結には至らず、再度のストライキが予測される」と報じた。

焦点の一つは深刻な人手不足問題で、パンデミックによる退職者の増加に加えて労働市場の需給逼迫が背景にある。また歯止めの無い重要医療の外注問題、そして賃げについて労働組合は最低時給25ドル、協約最初の2年間は各年7%、次の2年間は各年6.25%の要求だが、会社回答は21-23ドル、賃上げは3.5%ないし4%とされる。
また、労働組合が組合員の多くは時給20ドル以下と主張するのに対し、会社は組合員平均35.75ドルであり、年収は74,000ドル、プラス諸手当があるとして、大きな食い違いを見せている。一方、経営状況は2021年に純利益81億ドルを計上したのち、2022年は売り上げ950億ドルで45億ドルの純損失を計上した。

3日間のストライキにはX線技師、受付、医療助手、衛生職員などが参加したが、病院側は数千人の外部労働者を雇い入れ、一般病棟や緊急治療に当たった。しかしスケジュールの見直しを余儀なくされ、カリフォルニア州南部では106ラボの半数が閉鎖された。そのため病院は患者に対し、薬品取得は郵送、診断はインターネットを使うよう勧めている。こうした状況に、スー労働長官代行が労使双方と会談して解決を図っている。但し今回、医師や公認看護師などはストライキに参加していない。

医療業界では全米各地で労働条件の悪化や物価に追い付かない賃金への不満が噴出しており、特にパンデミックもあって、激しい人手不足による過重労働から今年10数か所でストライキが起きている。

カイザー・パーマネンテ連立労働組合(CKPU)は10以上の労働組合の連立体であり、同医療機関労働者の半数を占める75,000人を組織するが、最大はSEIU(サービス労組)医療労働組合、テネット労働組合などがあり、各組合とも危険なまでの職員不足状態の解決と設備改善を要求している。

交渉は12日に再開され13日に暫定合意が成立したが、妥結内容はカリフォルニア州で最低時給25ドル、その他の州は23ドル、4年協約の期間中に21%の賃上げ、医療の外注にも制限が設けられる。18日に組合員による批准投票が予定されている。