活動報告 各国の労働事情報告

2023年度 ブラジルの労働事情(中南米チーム)

2023年10月20日 報告
本労働事情については、ナショナルセンター・参加者から提出された資料に基づき「労働事情を聴く会」、参加者との意見交換を基にまとめたものである。

 

参加者情報

ブラジル中央統一労働組合(CUT)
 ・郵便・電信関連会社労働組合SINTECT

ブラジル労働組合の力(FS)
 ・サンパウロ ゴム・タイヤ産業労働組合SINTRABOR
 ・ポルトアレグレ貿易商業労働組合

ブラジル一般労働組合(UGT)
 ・電話労働組合 – Sintetel

 

1.はじめに

 ブラジルからは、3つのナショナルセンター「ブラジル中央統一労働組合(CUT)」、「ブラジル労働組合の力(FS)」、「ブラジル一般労働組合(UGT)」から参加した。本レポートはそのナショナルセンターからの報告要旨をまとめたものである。

 2016年大統領が交代し労働者階級の攻撃が増えた。労働関係法の改正、社会保障制度の改革によって失業率が高くなり貧困が増加傾向になった。郵政民営化の動きも加速しており、これが現実化になると大量解雇(10万人規模)と地域での郵政事業の空白化が生じる。4年間の闘いで退職に追い込まれる労働者が発生した。

 2022年、ルラ元大統領が復活した後、政権第一目に郵政民営化のプロセスを戻すことをスタートさせた。新型コロナ後、事業の再開のため、感染予防手続きを国内で始めて定めたナショナルセンターもある。一方、もう一つのナショナルセンターでは、クリスマス時期にボーナスを支給することを決定。労働時間短縮や有給休暇、少子化対策なども充実できるよう実績を上げた。企業内組合に出向き、直接、組織拡大にも成功している。

2.ブラジルの労働事情

(1)社会保障制度

 長年にわたり、ブラジルの社会保障制度はいくつかの課題に直面してきた。それは 2つの主要な制度で構成されている。一般社会保障(RGPS) と独自の社会保障システム (RPPS)。RGPS は人口の大部分をカバーしており、国内の労働者のための社会保障制度もカバーしている。

 国立社会保障研究所(INSS)がその管理を担当し、資金は労働者、企業、政府からの寄付によって提供されている。拠出金は労働者の所得に基づいて計算され、拠出額には上限が設定されている。2019 年の年金改革以前は、RGPS には最低退職年齢はなかったが、拠出期間要件(男性は35年、女性は30年)を満たす必要があった。改革後、漸進的な退職最低年齢が設定された(男性65歳、女性62歳、最低拠出期間は15年)。

 RGPSはまた、有害物質にさらされた労働者や鉱山労働者など、健康や身体的健全性を損なう危険な活動を伴う職業に対する特別退職金も規定している。

 RPPS は公務員 (連邦公務員、州公務員、地方公務員) のための社会保障制度であり、各連邦機関が独自の制度を持っている。RPPS は公務員および連邦機関 (連邦、州、または地方自治体) からの寄付によって資金提供されている。2019年の年金改革以前は、ほとんどのRPPSには最低年齢が設けられておらず、公務員は最低年齢(男性60歳、女性55歳)を満たした後、全額拠出期間を満了して退職することが認められていた。この改革により、男性は65歳、女性は62歳という漸進的な最低年齢が設けられ、最低拠出期間は両方とも25年となった。財政の持続可能性は、ブラジルの社会保障制度にとって長期的な主な課題である。

 人口の高齢化と平均寿命の延長により、現役労働者に比べて退職者数が増加しており、制度の財政バランスに悪影響を与える可能性がある。さらに、この制度は不平等であると批判されており、一部のカテゴリーの労働者が他のカテゴリーよりも有利な給付金を受け取っている一方で、低所得の退職者は十分な退職後の収入を確保するのに苦労する可能性がある。これらの課題に対処するために、ルールを調整し、制度の持続可能性を確保することを目的とした社会保障改革が長年にわたって提案されてきた。2019年の社会保障改革は、労働者にとって最も影響力のある改革の一つであり、最低年齢と給付金計算ルールの変更が実施され、退職金へのアクセスがより困難になり、ブラジルのいくつかの貧しい家庭の維持に深刻な問題を引き起こした。

(2)直近発生した問題視されている労働争議

 2016年以来、ブラジルの郵便電信会社とその従業員は厳しい攻撃にさらされている。2020年の給与キャンペーンは、パンデミックに加えてECT経営陣が労働協約条項の70%の撤回を提案したため、33日間のストライキを開始した。しかし、TST(労働裁判所の機関・労働高等裁判所)では数十年にわたる闘争で勝ち取ったACT(集団労働協約)の50条項を除外する判決が下された。さらに、2021 年初めにボルソナロ政権は郵便局の民営化を扱う法案「ブラジルの郵便サービスに関する法案でブラジル政府が提出し民営化を目指している。以下(PL 591)」 を提出した。

(3)その労働争議の経過と結果

 連邦上院によるプロジェクトの承認を阻止するために総動員力を集中し、その後、上院におけるPT指導部内で郵便局防衛全国委員会を組織し、PL591の処理を遅らせるいくつかの活動を実施した。そして、ルラ大統領が再選した後、民営化や人員削減の可能性をきっぱりと排除するという動きがあらわれた。大統領は就任初日、コレイオスとその他の公開企業の民営化プログラムからの撤退を決定する法令に署名した。

(4)労働法制

 2017年に労働法の改正が行われた。この結果、労働条件の低下、失業者が増え、曖昧な雇用が増えた。この改正により、労働者は組合費の支払いを拒否できるようになり、組合の資金と影響力が減少し組合運動にも大きな影響が出ることになった。労働者の権利を制限し、雇用主の自由度を高める内容となった。今後、再改正が行われるが、包括的な交渉の基準、企業のニーズに応じた交渉も期待感が持っている。ルラ大統領の選出に伴い、団体交渉の重視と実体組合の強化に基づいたブラジル労働組合制度の改革について新政府と議論する作業グループが結成された。