活動報告 各国の労働事情報告

2023年度 アルゼンチンの労働事情(中南米チーム)

2023年10月20日 報告
本労働事情については、ナショナルセンター・参加者から提出された資料に基づき「労働事情を聴く会」、参加者との意見交換を基にまとめたものである。

 

参加者情報

アルゼンチン労働総同盟(CGT-RA)
 ・国際関係局員
 

1.はじめに

 新型コロナウイルスの世界的感染拡大が平静に戻りつつある中、2015年から2019年までの連立政府が国際通貨基金との間で取り決めた対外債務などによる、アルゼンチン共和国全土に及ぶ高いインフレの結果として、労働者の購買力が直接的な負の影響を受けている。このことから労働組合運動は、インフレの災難と闘い、労働者の生活の質を向上させるための賃上げ要求を対等な立場で継続的に交渉している。
 以下、本レポートは今回の参加者からの報告要旨をまとめたものである。

 

2.アルゼンチンの労働事情

(1)  社会保障制度

 アルゼンチン共和国では、社会保険制度は国家が運用しており、社会全体にとって、より多くの利益となっている。その意味で、労働者が様々な社会保障の恩恵にアクセスできる様々なモラトリアム(支払い猶予)計画の実現が強調される。

 

 ◎現在の課題とナショナルセンターの取り組み

 アルゼンチン共和国の社会保険制度に影響する問題の一つは、雇用主による然るべき登録が行われていないためにインフォーマルな状況に置かれている多くの労働者が存在することである。社会保険制度に該当する保険料の支払いができず、それにより制度自身の資金も減ってしまうという状況にある。

 

 ◎社会保険制度見直しの傾向

 労働法制と同じく、アルゼンチン共和国の特定の政治部門が選挙キャンペーンのプロジェクトとして、現行の社会保険制度に変更を加え、社会の権利や恩恵を減らすことを提案している。

  • 直近発生した問題視されている労働争議

 最近、特にフフイ州で組織化された組合運動が、第864/23号州法(以下・州法)に平和的に抗議した。これに対し、抗議行動を非合法化し、労働組合のスト権を制限または縮小化し、スト権を行使する労働者に罰金を課し、政治的な弾圧を許したりするなど労働者や組合に対する違反行為の捏造なども行おうとする動きがあった。政令実施に反対する組織化された労働組合運動による平和的な抗議行動の結果、警察部隊は自由にデモをする権利を行使していた労働者を弾圧し、負傷者およそ170人以上、逮捕者68人という結果を生んだ。この中には未成年や障がい者もいた。

  • その労働争議の経過と結果

 前述の紛争の原因は州法の公布である。この州法により、自由にデモをする権利や、スト権を全面的に行使する権利が侵害された。この原因は、問題の州法の公布と並行して、労働者のグループが、アルゼンチン共和国全土が陥っている高いインフレの結果、購買力が落ちたことを理由に、賃金の再編を対等な立場で交渉中だった。
 これまで述べてきたように、組織化された労働組合運動は、自由にデモを行う権利やスト権を全面的に行使する権利といった労働組合の基本的な権利を侵害する州法の廃止を求めている。その理由として、アルゼンチン共和国ではスト権が憲法で守られており、同様に、アルゼンチンはILOの第87号条約と第98号条約を批准していることも強調される。この意味で、組織化された労働組合運動により出された要求は州法より上位のランクで法的な裏付けを得ていたと言える。
 州法に反対する組織化された労働組合運動の要求と、それに続く、自由にデモを行う権利を全面的に行使していた労働者に対する警察部隊による弾圧は、アルゼンチン共和国全土で大半のマスコミにより報道され、国内のすべてのナショナルセンターと社会の大半の支援と連帯を生んだため、州政府は、憲法と国際条約に定められた基本的な組合の権利を侵害していた同法の廃止を決断した。

  • 労働法制

 アルゼンチン共和国の労働法制は一般的に、憲法、国際条約、労働契約法、職業規約、そして、必要な対等の立場での交渉を通じて定期的に更新されるそれぞれの集団労働協約の指導原則に基づいている。

 

 ◎現状での問題認識とナショナルセンターのイニシアチブ

 前述の法制の指導原則を遵守することとは別に、組織化された労働組合運動に対し、雇用主が然るべき登録をしないことから、多くの労働者がインフォーマル状態に置かれているという問題に取り組んできている。そのことから、労働組合運動は以前から、ディーセント雇用の創出を促進する政策の実現とインフォーマル雇用の減少を生むような労働監督局の増設を要求している。

 

 ◎デジタル化、スマート化への対応

 急速に発展するデジタル化社会に適応するため、労働組合のオンライン業務を積極的に展開するなど新しい形態を構築している。

 

 ◎労働組合の改革と構築

 労働組合の組織体系構築の強化と草の根の労働組合の活力を引き出し、新規組合員を継続的に推進するなど、今後5年間の活動課題を整理し推進している。労働組合幹部の育成も強化している。