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UAWストライキ, GMとステランティス部品センターに拡大、そして今後の展望

2023.10.12掲載

9月22日のワシントン・ポスト(WP)、23日のニューヨーク・タイムズ(NYT)などが「全米自動車労働組合(UAW)はGM18か所とステランティス社20か所のディーラー・サービス工場向けの部品センターを目標にストライキを拡大した。しかしフォードは対象外にある。ストライキへの新規参入は5,600名になる」と報じた。

この点でUAW執行部は「フォードでの交渉で一定の前進があったため」と説明しているが、カナダでは、自動車労働者を代表するUNIFOR労組がフォードとの労使交渉でスト無しに大幅譲歩を獲得し、賃上げで3年間に25%アップ、ボーナス支給、年金改善、電気自動車(EV)移行には雇用の確保などが合意されたとされ、これが米国協定にも適用されると理解される。

これに対しUAWの要求には、4年間で40%の賃上げ、退職年金の引上げ、労働時間の短縮、初任給と熟練賃金32ドルの格差を是認する二重格差賃金の廃止などがある。その中でフォードはインフレ調整手当やプロフィット・シェアリング引き上げに同意し、さらに重要な工場閉鎖時のストライキを容認したとされる。UAWは電気自動車移行に当たっての既存工場の閉鎖を強く懸念している。

一方、19日のNYTは「UAWのストライキは労働運動を更に刺激して組織化を促進する可能性があるが、ストライキが長期化すると自動車3社が企業力を損ない、中西部をリセッションに落とし込む危険性がある。また、UAWのやりすぎや不満足な妥協があると世論の支持が失われる可能性がある」と指摘した。

フェイン会長は「UAWの戦いは巨人企業に対する一般人の戦い、富める者と労働階級の戦い」と唱える。この観点では、UAWは1937年にGMに対するストライキに勝利してUAWを承認させ、それを2-3年で鉄鋼や石油、繊維、新聞産業などに波及させた実績を持つ。
他方、事態が逆転すると数千万の非組合一般労働者にフラストレーションと反感を招き、自動車産業底辺の多くの中小部品企業が被害に苦しむことになる。UAWの強気の要求が米国への投資を弱め、海外企業との競争で劣勢に立たされることにもなる。

2008年の食肉産業労働運動の大きな勝利に貢献したブラスキン氏は、UAWの活動を高く評価しながらも「UAWが大きな勝利なしに、特に二重格差賃金の廃止が出来ずに終われば、将来に大きな禍根を残す」と指摘し、「自動車メーカーがメキシコ移転を加速させるなど戦術に勝利しながら、戦争に負ける事態を憂慮する」と述べる。

バイデンのEV国内生産奨励策の効果で多くのメーカーが国内生産を増強しているが、それでも3社はオートメーションを進め、非組合の南部各州への展開やUAW協約の影響を受けない海外メーカーとの合弁で南部州にバッテリー工場を建設する可能性が強い。他方、UAWが大きく勝利すれば南部諸州の非組合工場の組織化を促進することになる。

更にNYTによれば、フェイン会長の幅広い労働戦線の呼びかけには戦略的優位が感じられ、最近のギャロップ調査では自動車労働者支持が75%、会社支持は19%と出たとされる。
このように多くの支持が労働者に集まったのは1980年代のレーガン時代の航空管制官ストとは違う現象である。当時は過激なストに反対する風潮の中で、民間企業は容易にストライキ労働者を解雇、代替労働者を採用した。「航空管制官は労働運動を味方につけることに失敗した。しかし、UAWは幅広い連帯と支持を呼びかけ、異なる将来の可能性を呼びかけている」との評価がある。しかし、強い要求を唱えながら期待を下回る妥協を繰り返してきた従来のUAW執行部に対する組合員の失望も大きい。