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欧州の熱波で労働者にシエスタの必要

7月20日付のニューヨーク・タイムズ(NYT)、29日付のインディアン・エクスプレスが標記の記事を掲げ「怠惰なスペインの習慣と言われたシエスタだが、欧州を襲う熱波により、勤勉なドイツ労働者にもその必要が叫ばれている」と報じた。

10年前のスペイン財政危機の際、神聖な昼寝の習慣シエスタは欧州各国から批判の的とされ、怠惰と呼ばれるのを怖れたスペイン政府は、生産性向上に向けてシエスタ廃止を公約した。しかし消滅の噂の中でもシエスタは生き続け、今でもスペイン各地では午後2時~4時の店舗閉店、街頭には人がいない状況が見られる。

他方、欧州では度重なる熱波の襲来にシエスタの必要性が改めて見直され、勤労が美徳とされるドイツでも今週摂氏32.2度を記録する暑さに、政府関係者や専門家が日中の休憩の必要を指摘した。ドイツ保健大臣は「熱波に対するシエスタの考えは悪くない」と語り、中央医師会会長も「熱波の際には南の国の労働習慣を見習って良い」と述べた。

シエスタの起源には諸説あり、一つは農夫が日中の最も暑い時間の日差しを避けるため休憩して、気温が下がってから仕事に復帰した習慣だとする。他の説は1936年のスペイン内戦後に多くの人が午前と午後に分けて2つの仕事をするようになり、それが数十年のスペインの習慣になったと言われるが、現在の都市部にシエスタは少ない。それでも、南部スペインのグラナダなどでは店舗は閉店、住民は家に籠り、敷石の街路は30度以上の熱気を持つ。バレンシア地方ではシエスタ時間に住民の休息を妨げないよう、住民や訪問客に静粛を保つよう法制化している。夜食は21時~22時にずれ込む。

昼寝についてはマサチューセッツ工科大学(MIT)やロンドン大学でも調査結果を発表しているが、昼寝は生産性向上に役立つとされ、「昼寝習慣の人とそうでない人の頭脳の老齢化には2.6年ないし6.5年の違いが見られる」とされる。

こうして、ドイツなど欧州諸国の労働組合からもスペインに学ぶべきとの声が上がっており、600万労働者を代表するドイツのナショナルセンターであるドイツ労働総同盟(DGB)の代表は「35度以上では仕事を休み、労働者の負担を軽減すべきだ」と語った。

一方、7月14日のBBCなどは欧州の記録的熱波を報じる中で、ギリシャやローマで40度以上、チェコで38度、ドイツ、スペイン、フランスでも極度に暑い気温を予測している。