米国最高裁がまた労働組合に不利な判決
6月1日付のワシントン・ポスト(WP)、及びューヨーク・タイムズ(NYT)などが「米国最高裁はコンクリート会社のストライキについて、労働者が会社資産の損傷を意図したものとの会社主張を認める判決を出した。ストライキの際の組合側の経済的責任を問うもので、労働組合の敗訴と言える」と伝えた。
事件は2017年8月、ワシントン州のグレーシャー北西コンクリート会社(GNWC)とチームスターズ労組(全米トラック運転手組合)との労働争議の際に起きたもので、「運転手が配達の様子を見せたためミキサー車にコンクリートを積載したが、彼らがストライキに突入したため、会社は緊急にトラックを回収、直ぐに固形化するコンクリートの処理に当たった。廃棄コンクリートやトラックのメインテナンス、環境問題など多くの損害を受けた」とされる。
判決は、共和党派6名、民主党派3名の最高裁判事の中で8名が「全国労働関係法(NLRA)はストライキの際、労働組合は使用者財産保護のための合理的な事前通告の必要があると定めているが、今回の組合の行為は法律保護の対象にはならない。損害賠償についてはワシントン裁判所に委任する」との判断を支持した。
NYTが紹介するある専門家は「意図的な会社財産の損傷はスト行為にはそぐわない。そこに法律の保護はない」と述べたが、チームスターズ労組は「損害回避に合理的手段を講じた。会社がトラックへのダメージ無しにコンクリ処理できるよう、トラックを運転状態のままにしておいた。損害は廃棄されたコンクリだが組合に責任はない」と述べた。
これに対しワシントン・ポスト(PW)は、唯一の反対意見、民主党派のジャクソン判事の「判決はスト権を侵害する。ストライキの際、労働組合が会社損失のないことを確認する義務はない。労働者は主人が痛痒を感じなくなるまで労働を強いられる主従的雇用ではない。経済損失が生じようとも、彼らはNLRAに守られた団結権と平和的決意をもってストライキを実施した従業員だ」とする主張を紹介した。
また別の専門家は判決について、「労働組合はストライキの際、陳腐化する製品への配慮など、一層の注意を払う事になり、労組の力が削がれる懸念がある」というが、保守派多数の米国最高裁は2018年の判決でもストライキでなく仲裁裁定重視の判断、また同年、公務員労組による非組合員からの組合費徴収の禁止など、労働組合に不利な判決を重ねている。こうした状況に、労組幹部は「ストライキ実施という力が無くなれば交渉力は減退する」と指摘する。
アマゾンの場合でも労働組合は会社の最大の弱みであるホリデイ・シーズンを狙ってストライキを行ったが、現在スト中のハリウッドの脚本家組合や、今夏に協約期限切れの発生する小荷物輸送最大手のユナイテッド・パーセル・サービス(JPS)の労働者で結成している全米パーセル労組なども法的責任を回避するために、より多くの事前通告を余儀なくされ、通告期間の間に会社は代替労働者を雇うなど対抗措置を強めることになる。ハーバード大学のブロック教授は「民主党優勢の州で労組保護的な法律が成立しても、米国最高裁がそれを阻止するという現状にある」と述べている。