活動報告 その他

ネパール POSITIVEフィージビリティーワークショップ

2023.09.05掲載
開催: 2023.08.01 2023.08.02
「ワークステーション」の技術領域を学ぶカラフルペンシルゲーム

国際労働財団(JILAF)は、ネパール労働組合会議(NTUC)との共催で、8月1日~2日にネパールのカトマンズ市において、労働組合主導の参加型安全衛生改善プログラムであるPOSITIVEフィージビリティワークショップを開催しました。同ワークショップには、過去のPOSITIVEトレーナーなど16名が参加しました。

ILOの中核的労働基準に「労働安全衛生の原則」が追加されたことから、労働安全衛生改善プログラム「POSITIVE」のアセットがネパールにおいて、現在どのような形で蓄積・継承されているかを2日間のフィージビリティワークショップで検証しました。

POSITIVEフィージビリティ調査は、昨年度のパキスタン(オンライン)、インド、今年度のバングラデシュに続いて4カ国目(最後)となります。ネパールにおいては、NTUCとの長年の信頼関係に加え、JILAFカトマンズ事務所のきめ細かな準備と対応があり、万全の体制でワークショップに臨みました。

本ワークショップの参加者は全員がトレーナー経験者であり、ワークショップの参加者のパフォーマンスは①ネガティブな点ではなくポジティブな面に焦点を合わせていた、②低コストで現地の良好事例から学ぶ視点を持ち合わせていた、③技術領域のプレゼンテーションスキルが十分であった、④数名が過去の工場の改善事例を写真で示した――こと等から、同プログラムのアセットがネパールで蓄積・継承されていることを確認しました。

ワークショップの開会式で、加藤プログラムマネージャーはNTUC定期総会で選出されたヨゲンドラ・クマール新会長をはじめ新執行部に対して祝辞を述べるとともに、本POSITIVEフィージビリティワークショップ開催の趣旨を説明しました。

ヨゲンドラ会長からは「POSITIVEプログラムは企業の生産性向上に寄与するとともに、労使関係を改善させ、労働者の生活のためにも必要なプログラムである。また、組織化のツールとしても有効であり、使用者側の理解も得られやすい内容である」と、自身のトレーナー経験も踏まえて同プログラムの特長を強調しました。

次に、加藤プログラムマネージャーが「アジアにおけるPOSITIVEプログラム」と題して、①アジア12か国のプログラム展開状況、②トレーナー養成の戦略、③フィージビリティワークショップで実施した3か国の概要―—等を概説しました。

続いて、参加者にトレーナーとして良かった点、改善点を経験共有して頂きました。良かった点としては、①プログラムを実施してから対立的だった労使関係が良い関係に変わった、②労働者がヘルメットなど個人防護具を着用するようになった、③ローコストに重きを置いているため使用者が積極的に協力してくれるようになった、④職場で世代間ギャップがなくなった――が挙げられました。一方、改善点として、①提案して取り入れた改善が長続きしなかったため評価とモニタリングが必要、②時代に合ったチェックリストに改定する必要がある、③職場でトレーニングを行う環境が整っていないため、やり方を考える必要がある、④使用者から理解が得られないケースも多く、使用者団体に対してもプログラムを実施してほしい――等が挙げられました。

その後、長須専門家が「参加型アプローチによる職場環境改善」、「模擬チェックリスト実習」、「物の運搬と保管」「経営者への改善提案方法」のセッションをファシリテートし、松井コーディネーターが「ワークステーションチェンジ」の技術領域を担当しました。なお「作業場環境」の技術領域については、トレーナー経験があるNTUC副会長のパリケ氏とシュレスタ氏に担当して頂きましたが、トレーナーとして高いパフォーマンスを披露してくれました。

また、今回初めて「どのようなアプローチが労使関係の改善と組織化に有効か」と題したグループ討議を行いましたが、労使関係の改善では①トレーニング実施の際は使用者にも同席してもらう、②生産性が向上するなど、使用者にもメリットがあることを伝える、③工場の生産状況などもしっかりと収集して交渉する――等の意見が出されました。

閉会式では、ヨゲンドラ会長が「COVID-19以降、安全衛生の取組みは益々重要性を増してきているが、職場で労働法さえ順守されていない状況下にある。POSITIVEプログラムを実施していた頃は組合員の意識もポジティブになり、職場も働きやすい環境に変わっていった。POSITIVEプログラムの復活を切に願う」と挨拶しました。

これを受け、加藤プログラムマネージャーは、「質問票の回収・分析等を含めて、今後JILAF内部でPOSITIVE2.0の開発検討を行うが、10年以上前に実施していたプログラムが今でも実行できる状態にあることに驚いた。新役員の多くがトレーナー経験者であることもあり、自主的に取組めるところから活動を始めてほしい」と述べ、最後に参加者全員に修了証を授与してワークショップを締めくくりました。

参加者の様子

  • 過去の工場の改善事例を発表する参加者
  • 経営者に対する最終改善提案