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英国ドーバー海峡のフェリー会社が800名の突然解雇

2022.04.18掲載

3月18日のニューヨーク・タイムズ(NYT)、20日のガーディアン紙及び22日のUSニュースなどが「英国南部のドーバー海峡を運行するドバイ船籍のフェリー会社が800人の英国従業員を突然解雇した」と報じた。

このP&Oフェリーズ社はドバイ政府が一部所有するDP WORLD社傘下の小会社で、アイルランド、フランスやオランダにも就航している。3月17日朝に800名の英国従業員に待機を通告、その後261名には同社ビデオで解雇を通知、その他従業員についても同様にEメールや携帯テキストなどで通知した。理由は会社生存のための競争力強化のためとしている。

このため同社組合員はドーバー港、リバプールやハル港、北アイルランドのラーン港などで一斉に抗議活動を展開した。NYT は海運関係のノーティラス国際労働組合のディキンソン書記長の「英国では海運労働者がエッセンシャル(必要不可欠)とは考えられていない。フランスやオランダからの海運停止で食品や薬品の輸入が止まり、物不足に直面する」とする怒りを伝えた。

同社社長は通告の中で「会社は生き残りと成長のために人件費を50%削減する。そのため外国企業との協力で労働者の確保を目指す。この突然の発表は残念ながら最終決断であり、人員整理なしに会社生き残りはない」と述べ、代替えの従業員を雇ったが、時給2.38ポンド(3.12ドル)(USニュース)で働くと言われる。

ガーディアン紙等の報道によれば、運輸省が同社の意向を通知されながら関係先への通報を怠ったために政府対応が遅れたことが議会で指摘され、全英鉄道海事交運労働組合(RMT)のリンチ書記長からは「同様の事態を防ぐための法律を即時に制定する必要がある」との要求、更には国教であるカンタベリー大主教からも「非人間的で倫理にもとる。非人道的な労働者の扱いは実業界だけでなく神の目から見ても、罪である」との批判が起きている。
こうした事態に産業省や運輸省は同社に対し「政府救済の余地も与えずに、今回の措置に及んだことは許されない。大量解雇の際の法律無視は無制限の罰金を受ける可能性がある」と通知した。

なお、英国の労働法は労働組合との協議や23歳以上の最低時給8.91ポンド(11.75USドル)を定めている。また、P&Oフェリーズ親会社のDO WORLD社は過去1年間に1億3,100万ドルの利益をあげている。