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アップル社のサービス・センターで労働組合結成の申請

2022.05.16掲載

4月20日のニューヨーク・タイムズ、24日のウォールストリート・ジャーナル、16日のワシントン・ポスト(WP)などが「アップル社の労働組合結成の動きが活発化し、ジョージア州アトランタ市のサービスセンターでは同社初となる労働組合の結成申請が労働関係委員会(NLRB)に提出された」と報じた。これは最近のスターバックス、アマゾン、REIアパレルでの労組結成成功に続く動きとなる。

同センターの従業員は営業職や技術職の約100名、70%の賛成署名を集めたと言われるが、結成後はAT&Tモビリティ社やベライゾン社の組合が所属する全米通信労組(CWA)に加盟するとみられる。
労働者は「仕事は好きだが、会社は本社勤務と小売りセンターとを階層で区別する別々の賃金体系を設けて、センター勤務者は下層扱いにある。昇進基準も曖昧で、透明性がない」との不満を述べる。これに対し会社は「待遇は他社に勝る。健康保険や有給休暇、授業料補助、持ち株の権利、最低賃金も20ドルの水準にある」としている。NLRBは30%の賛成要件と投票の可否、郵便か直接投票かなどを検討して投票日時を決めることになる。

アップル、アマゾン、スターバックスの3社には違いもあり、アマゾン社が全米1,000以上の拠点で100万名の時間給労働者による集荷出荷業務、スターバックス社は少人数拠点の時間労働に対し、アップル社は世界に500店舗、全米に270店舗を持ち、65,000名の従業員による小売りを主力に株価総額も2兆7千億ドルの世界最大規模にある。しかし組織化に際しては、既成組合の助力を得るものの、自力での努力が大きい。
アップル社での労組結成が顕在化したのは昨年夏からで、コロナ蔓延の中でも安全対策を講じない会社に不満が増大した。この時に各種ハラスメントや不平等賃金、秘密主義の会社文化なども取り上げられ、広く待遇改善を要求する「#AppleToo」と呼ばれる運動に広がった。昨年末にはオミクロン株の広がりで20ストアが閉店する事態に発展、クリスマス・イブには数十名が賃金労働条件の改善を求めてストライキを起こしている。

WPによれば、アップルストアに対してはサービス労組(SEIU)傘下のワーカーズ・ユナイテッド(WU)も動いており、スターバックス店舗10数か所での労組結成成功を背景に、ニューヨーク市グランド・セントラルなどのアップル4店で賛成署名を集めている。

他方、CWAの注目される動きとしてはNYT(2021/1/4)のニュースがある。CWAは昨年1月にカリフォルニア州オークランド市でグーグル労働者400名の労組結成に成功した。話題を呼んだこの労組はグーグルの親会社名”アルファベット”を使って「アルファベット労働組合」と呼ばれる。しかし同労組は、全米に26万名従業員を持つ同社に対し、従業員の過半数の参加が必要な労使交渉のための一般的な労働組合ではなく、同社における”構造的な定着活動”に重きを置く自発活動労組(Minority Union)とした。CWAは社内での労組結成投票を実施せずに、労組活動の統括を図ることになる。会社には少数組合との労働協約締結の義務はない。アルファベット労組によると、グーグル社の従業員の約半数は、派遣社員や契約社員という非正規雇用形態で勤務しており、正規雇用形態社員と同等の待遇を受けられないことに不満を表明している。

また、CWAは最近、カンザス市のグーグル・ストアで10数名の労働者の労組結成を申請。マイクロソフトが取得中のビデオ・ゲーム・メーカー”アクティビジョン・ブリザード社”のウィスコンシン州拠点でも組織化申請を出している。