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(1)フランスの航空管制官スト、広がる運輸労働者のスト、(2)インド・フォードが工場撤退で解雇労働者への退職金を積み増し

(1)フランスの航空管制官スト、広がる運輸労働者のスト

9月16日のニューヨーク・タイムズなどが「フランス航空管制官労組による賃上げ要求ストで数百便が欠航した」と報じ、8月30日のピープルズ・ディスパッチ紙(PD)はフランス全土に広がる運輸労働者のストライキを報じた。

全国航空管制官労働組合(SNCTA)は「数か月にわたる賃上げと人員補充に関する交渉に進展がなく、インフレへの対応もない。9月28日から更に3日間ストを行う」と言明した。今日のストライキにより、ドゴールやオルリーなど全国の空港で400便以上が欠航になったが、航空会社関係者はEU当局に対し、介入を求めた。

他方、PDが伝える運輸労働者については、労働総同盟(CGT)、民主労働総同盟(CFDT)、キリスト教労働者連合(CFTC)、労働総同盟「労働者の力」(FO)などに加盟する労働者が、公共バスや一般運輸を含めて一斉にストライキを表明しているが、要求は一様にインフレに対応する賃上げとコロナ以降の欠員による過重労働の解消である。近年、多くの運輸会社が公共交通を含めて、サービスを低下させ、従業員を解雇、契約労働者を増員するなどして、労働協約と労働者の権利を弱体化させ、賃金やボーナスを減額してきた。(以上PD)

最近のインフレにより、世界各地の空港や鉄道、運輸関係でストライキが発生しているが、米国では貨物鉄道ストが寸前に回避され、組合員の批准投票を待つ状況にある。他方欧州では、パンデミックが終息の兆しを見せて航空需要が高まりを見せた今、レイオフした従業員不足を背景に、インフレに対応した賃上げと過重労働解消を訴えるストライキが多発しており、7月のドイツ・ルフトハンザ航空の3,000人による48時間ストでは130,000人の乗客に影響が出た。

フランスの欧州の中でも最も低いインフレ率を維持してきたが、8月は6.6%と今年年初から2倍のペースになっており、政府はエネルギー価格の上昇を来年初めまでに15%に抑え込むとしている。

(2)インド・フォードが工場撤退で解雇労働者への退職金を積み増し

9月22日のAUTO ニュース、インド・ビジネス・トゥデイなどが、「インドからの生産撤退を発表したフォード・インディア社(10,000人)が労働組合との間に最終的な退職金協定で合意した」と報じた。

同社発表によると、退職金は平均で勤続1年につき140日分で、当初提案の130日分を10日分引き上げる。その上に追加一時金として15万ルピー(26万円)を支払うという。個々の金額は最低345万ルピー(604万円)から最高865万ルピー(1,514万円)、平均で62ヵ月分、最低47ヵ月分、最高105ヵ月分となり、9月末には支払いの予定という。

1995年創立で総額20億ドルを出資したと言われるフォード・インディア社は2021年9月に工場撤退を発表し、グジャラート州サナンド組立工場は2021年第4四半期、タミール・ナドゥ州チェンナイのエンジン工場は2022年第2四半期までとしていた。

サナンド工場はインドのタタ・モーターズに約900万ドルで売却されたが、希望する従業員の雇用も条件となっている。パワートレインのチェンナイ工場は当面の間、タタ・モーターズから設備をリース・バックして生産を継続するが、従業員の雇用は、タタ・モーターズに引き継がれる。

フォードは1953年にも撤退を余儀なくされたが、当時は厳しい輸入制限による高額な生産コストが理由であった。現工場は1995年に創立されたものだが、今回もまた世界第4位の自動車市場から撤退する。

売却に応じたタタ・モーターズは、2008年のフォード倒産時にもフォード傘下のジャガーとランド・ローバーを現金で買い取り、救済に協力したが、今回も工場買収に協力する。

フォードの失敗は輸出を重視する余り、排気量と車両サイズを基準とするインド国内の自動車税制を軽視して、1.2L以上、主要車種には1.5Lを採用したことであり、安全装置や新装置でもタタやスズキ(シェア45%)、ヒュンダイ(17%)、起亜などに対抗できなかった。

因みにインドで成功のスズキ車は大半のサイズを税金の安い4m以下に抑え、エンジンも0.8L、修理代も考慮してバンパーをプラスティックでなく金属製に変えている。なお、GMはインドでの販売を2017年に中止している。