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UAW執行部選挙で現職役員への批判濃厚, 不可解な低投票率

2022.12.27掲載

12月2日のニューヨーク・タイムズ、5日のロイターなどが「組合員の直接投票による全米自動車労組(UAW)の執行部選挙で、カリー現会長と改革派のフェイン氏がそれぞれ35%以下、残りを3人の候補が分け合った。この結果、裁判所任命の連邦監視官は『来年1月に決選投票を行う』と表明」と報じた。

同時に行われたのが14名の執行部役員選挙だが、改革派は事務局長候補が60%を得票するなど6名が当選し、最終的には過半数の8名を獲得する勢いにある。現在決定を見たのは11名で12月12日に正式承認となるが、残り3名は会長、副会長、地域本部長各1名の計3名、1月12日に投票用紙が配布され、2月28日締め切りの決戦投票にかけられる。現職組合員40万人と退職組合員60万名に投票権があるが、投票率は低率の10.5%、106,790人に止まった。

UAWは1935年創立以来、役員選挙は大会出席の代議員投票により決められてきたが、このことが一般組合員ではなく現役執行部の一方的な意向を反映してきたと言われる。しかし今回の選挙は2人の元会長を含む数十名の役員による100万ドル以上の組合費横領や高額旅行費、個人的な経費支出の発覚でFBI捜査を受け、連邦政府の監視による「組合員による直接選挙に同意した」ことで行われた。

カリー現会長(57歳)はノース・カロライナの組立工出身でビジネスの学位を持ち、10年間執行部役員を経験した後、汚職会長の後を受けて2021年に現会長に選任されたが、体制派とみられている。得票数は84%開票の段階で32%の34,582票。  これに対しフェイン氏(54歳)は組合員歴20年、インディアナ州のローカル役員などを務め、”民主主義のための全団結労働者”(UAWD)と呼ばれる改革派の支援の下、執行部全体の刷新と戦闘的労使交渉を標榜している。得票数は34,412票である。

自動車業界は今大きな変革期にあり、電気自動車時代を目指して、各メーカーはバッテリー工場の建設を急いでおり、GMのオハイオ新設工場では7日にUAW選挙が行われるが、続いてテネシーとミシガンに2工場、フォードはケンタッキーとテネシーに2工場、フィアットとプジョー合弁のステランティス社はインディアナ州に新工場を予定しており、それぞれで組合結成投票が行われる。

更にUAWは来年9月に3メーカーとの契約改定交渉を控えている。改訂にあたっては物価鎮静と自動車メーカー経営難の時代に廃止された物価調整条項の復活を望む声が強く、また現在の二重格差賃金廃止の声が高い。これは2007年以前採用の組合員が時給32ドルと年金を保障されるのに対して、それ以降の組合員の時給は低く設定され、32ドルに達するまで5年を要し、年金も確定納付の401(K)を押し付けられたままでいる。他方各メーカーは過去10年間に好業績を回復し、その傾向は今年も続いている。

数十年前には150万人組織を誇ったUAWだが、トヨタやホンダなど外国メーカーからの攻勢で衰退したビッグ3の下、UAWは南部と中西部に広がる外国メーカー工場を組織化できずに組合員を減少させた。そうした中で起きたのがUAW会長などによる汚職事件で、ジョーンズ元会長は28か月の刑期のうち9ヵ月を終えて今年出獄、その前のウイリアムズ元会長は21ヵ月のうちの9ヵ月で出獄している。

それにしても筆者に不可解なのが10.5%という異常な低投票率である。特にUAW組合員のうち10万人と推定される正義感の強いUAWD指向の大学院生組合員を考えると、自動車労働者の推定投票率は極端な低率しか推定できない。これは何を意味するのか? 今後の報道に注目しつつUAW自動車組合員の動向を見ていきたい。

なお上記GMオハイオ・バッテリー工場だが、8日のワシントン・ポストによれば、GMとLG合弁によるアルティウム・セル社900名従業員の投票で、UAWが710票対16票の圧倒的多数で承認され、南部州における反労組気運への懸念が払拭された。デトロイトの時給30ドルに対してEV業界賃金が15ドル程度と言われる中、協約交渉にも注目が集まる。

連邦政府は電気自動車奨励のため、UAW製のEV車については購入者に7,500ドルの補助金を支給しているが、電気自動車販売の64%を占めるTESLAが65,000ドルと45,000ドルの高級車を揃えるのに対し、GMシボレー・ボルトは25,600ドルの車種で対抗している。またヒュンダイとフォードも参入を急いでいる。