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ジープ・チェロキー工場が部品調達困難で閉鎖へ、1,350人のレイオフ/マイクロソフトに最初の労働組合誕生

2023.01.23掲載

ジープ・チェロキー工場が部品調達困難で閉鎖へ、1,350人のレイオフ

12月11日のCNN、23日のニューヨーク・タイムズは「ステランティス社がジープ・チェロキーの電気自動車化を急いでいたイリノイ工場がマイクロチップの調達難、部品価格の高騰で閉鎖を余儀なくされ、1350人が転勤、転職の危機にある」と報じた。

3年前までジープ・チェロキーの売り上げは好調で、イリノイ州のベルビディア工場は5,000人の従業員により3交代で190,000台を生産していた。ところがそれ以降、売り上げは減少し3交代制が2交代に、今年は20,000台の生産に止まる状況にあるが、同社は2月末をもって57年の歴史を持つ同工場の閉鎖を発表。1,350人が少なくとも6か月以上のレイオフを受ける。
中型規模のSUV、ジープ・チェロキーは2年来の世界的マイクロチップの供給不足に直面する中、部品は大型で利益率の良いグランド・チェロキーやRAMピック・アップへと回され、ジープ・チェロキーは幾度かの生産停止を受けてきた。競争の激しい車種のなかで、2014年に最後の大きなモデルチェンジしたチェロキーに対し、シボレー・エクイノックスやトヨタ・RAV4はこの4年間で新型が登場しており、今年夏にはホンダ・CR-Vが発表されたばかりである。

一方で自動車産業は100年来の構造変革と言われる電気自動車への移行時代を迎えており、数十億ドルの巨額投資を続けている。約6社がジョージア州、ノース・カロライナ州、ミシガン州、テネシー州、ケンタッキー州にバッテリー工場の建設を急いでおり、これを受けてコンピューター・チップ・メーカーも7月に米国議会承認のCHIPS&科学法による補助金支給を活用しつつ、オハイオ州、ミシガン州、ニューヨーク州、アリゾナ州に新工場を計画している。

こうした動きの一方では、イリノイ州北西部、ベルビデア市では、最大の雇用主であるチェロキー工場の休止による影響で、関連部品や近隣住民の生活への影響は計り知れないものがある。
2年前のフィアット・クライスラーとプジョーの合併により誕生したステランティス社は初年度の半年間には85億円の純利益を計上するなど好調であったが、他方ではテスラやGM、フォードに対抗してEV投資を拡大しており、今年、インディアナ州のバッテリー工場建設に25億ドルを支出する。自動車産業はコロナ・ウイルスや世界的マイクロチップ不足に直面しているが、最大の問題は電気化に伴うコスト増大だと言われる。

この点についてNYTが伝える、シカゴ連邦準備銀行の政策担当者は「各メーカーとも事情は同じだ。EVシフトへの巨額投資を行いながら、売行き減少の現行工場はフル稼働させ続けるという難題を抱えている」と語る。ステランティス社は2025年までに355億ドルを電気自動車に投資しつつ、4年以内に欧州売上の70%、米国では40%を電気自動車により占めてゆく計画である。

他方、来年に協約改定交渉を控える全米自動車労組(UAW)は同工場における新型車生産による操業継続を要求する構えである。UAWは現在、会長選挙の最中で、カリー現会長、改革派のフェイン候補とも同工場の操業継続を主張しているが、改革派は今までのUAWは会社に譲歩し過ぎたとして、批判を強めている。同工場閉鎖は産業変革に伴う新たな状況の一つと言えるが、地方での経済問題の域を越えて、会社との協約交渉やUAW執行部選挙にも影響を与えている。

マイクロソフトに最初の労働組合誕生

1月3日のウォールストリート・ジャーナルとニューヨーク・タイムズなどが「マイクロソフト(MS)のZENIMAXビデオ・ゲーム部門に300名の労働組合が誕生する」と報じた。

労働組合はZENIMAX部門の品質保証関係労働者300名により結成されるもので、11月からの署名とオンライン投票を通じて結成が承認される見通しで、全米通信労組(CWA)に加盟する。労組誕生についてMS社は「誠意をもって団体協約締結に当たる」と声明した。

IT産業全般に労働組合を忌避する風潮が強い中、MS社は労組結成を従業員の選択に任せる態度を貫いており、CWAシェルトン会長も「他企業では労組攻撃と労組結成妨害が多い中、MS社は労組承認の是非を従業員の選択に任せるとの約束を守った」と評価した。

2,300名の同部門はMSが2021年に75億ドルで買収したもので、DOOMやFALLOUTなどのゲームで知られる。他方、現在MSはCALL OF DUTYゲームで有名なACTIVISION社(7,000名)に700億ドル規模の買収を仕掛けており、成功の際には同社で結成進行中の労働組合を承認すると言明している。しかし同社買収には、連邦取引委員会(FTC)から公正競争を損なうとの訴訟があり係争中だが、CWA 会長は同委員会に買収支持を要請した。

MSはこうしたスタジオを20以上保有しているが、コロナ流行による在宅増加からのゲーム需要の高まりで、アップルやプレイステーションを持つソニーなどとの企業競争が激化しており、勝ち残りが至上命題とされる。

米国では上記の他、アマゾン、アップル、スターバックスなどで労組結成が増加しており、昨年9月30日までの12か月間に2,500件以上の労組結成申請が全国労働関係委員会に提出され、前年比53%の増加を示している。