活動報告 各国の労働事情報告

2022年 アルゼンチンの労働事情 (中南米チーム)

2022年8月5日 報告

国際労働財団(JILAF)ではアルゼンチン労働組合役員を招へいし、労働を取り巻く最新情報の共有や日本の労働組合の特徴、労使関係と生産性運動、労使紛争未然防止の取り組み労働委員会の活動について学ぶためのプログラムを準備作成した。しかし、新型コロナウィルスの影響により来日交流が困難となり、「オンラインプログラム」による取り組みとなった。従来の「海外の労働事情を聴く会」も開催が不可能となったことから、今回はナショナルセンター・参加者から提出された資料に基づき、参加者との意見交換や外務省、JETRO、JILAFの資料を参考にまとめたものである。

ナショナルセンター アルゼンチン労働総同盟(CGT‐RA)

1.基本情報

アルゼンチン共和国は面積278万平方kmで日本の約7.5倍、チリとともに南アメリカの最南端に位置しチリ、ボリビア、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイと国境を接し、フォークランド諸島の領有権を実効支配している英国と争っている。人口は約4600万人、首都はブエノスアイレス、欧州系白人が中心で公用語はスペイン語、宗教はカトリック、立憲共和制をひき上下院の2院制をとっている。
経済的指標は実質、GDP成長率△9.96%、名目GDP総額3831億ドル、一人当たりの名目GDP8555ドル、失業率11.7%、物価上昇率42.2%となっている。
1990年代は高い成長率を続けたが、数度の金融危機を契機に景気が低迷し、2020年9月にはデフォルトに陥りIMFとの交渉が重要課題となっている。
主要産業は、農畜産物加工品、牛肉、穀物、自動車、燃料でパンパと呼ばれる大草原があり世界有数の農業国である。これらを、アメリカ、中国、ブラジル、EUに輸出、医療、電子機器、農業資材をアメリカ、中国、ブラジル、EUから輸入している。
日本との関係は、日系人も多く伝統的に友好関係を維持している。経済面では経済協力として有償・無償資金協力とJICAによる技術協力を行っている。アルゼンチンから果物、
魚介類、飼料、アルミ合金を輸入して、自動車部品、自動車、原動機、有機化合物を輸出している。
ナショナルセンターはアルゼンチン労働総同盟(CGT-RA)とアルゼンチン労働者センター(CTA)がるが、公認されているのはアルゼンチン労働総同盟だけである。組織人員は約600万人、産業別組織は建設、運輸、エネルギー、金属、商業部門が中心でITUCに加盟している。

2.最近の労使紛争の状況

(1)労働問題発生の背景

新型コロナウィルスの世界的感染拡大によって、経済が減速して脆弱化したアルゼンチン経済と社会・労働環境に対して、パンデミックは雇用・貧困・格差・インフォーマル化という分野に大きな影響を及ぼした。
アルゼンチンは日本と異なり職種別労働組合が中心で、団体交渉による労働条件その他の要求事項は職種別労働組合で要求内容を決定して事業者団体に要求、労働省がこれを管轄して承認する方式である。労働組合から各企業への直接要求と交渉は行っていない。
したがって労使紛争の形態は、労働組合と企業というより政府方針や交渉結果を起因とした紛争で、労働組合と政府との対立になっている。

(2)パンデミックと労使紛争

最近の紛争は、パンデミックによって企業側が経営不振により労働者を自宅待機させてその後解雇したことから始まった。労働組合側は、これに反発して政府に対して解雇の取り消しと雇用の確保について法的手段をもって要求した。結果して労働者を復職させる事に成功した。アルゼンチンの建設関係労働組合では、このように全員による行動を示すのではなく、あくまでも文書をもって対応する戦術をとっている。

(3)問題解決のためのアクション

 労働組合としての問題解決のための取り組みは

  • 様々なレベルでの活発な団体交渉とテーマの拡大
  • 賃金購買力の確保と収入配分の改善
  • 増大するインフォーマルセクターの労働者をフォーマルセクターへ転換
  • 強制労働と児童労働の根絶とジェンダー平等の促進
  • 三者構成会議を含めた対話の促進
  • ディーセントワーク促進のためのプロジェクトチームの創設
  • 全国経済・社会審議会への積極的参加

などとなっている。

3.労働組合としての新型コロナウィルスの対策

アルゼンチンにおける新型コロナウィルスは、感染者940万人、死亡者13万人となっている。3月から感染者が減少傾向にあり4月から入国制限や国内の規制が大幅に緩和され、空港・駅・レストランなどの公共施設ではマスクは不要となっている。
労働組合は様々な業種の使用者団体と合同で新型コロナウィルス感染予防手順の設計を開始、健康と安全をケアするための重要性を認識。
建設労働組合では、パンデミックによって自宅待機の労働者に対して、働ける条件作りのための議定書を作成。建設関係労働者が移動可能な就労条件作りのためプロジェクトをスタートさせた。