2017年 南アフリカの労働事情
アフリカ組合連盟(FEDUSA)
エビデンス・ゾンケ・セベクル
FEDUSA社会公正委員
マエバ・タヒール・デボコ・ムハマド
FEDUSA中央執行委員、公務員労組副事務局長
1.南アフリカの労働情勢
2015年 | 2016年 | 2017年(見通し) | |
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実質GDP(%) (出典元) |
1.3% (南アフリカ統計局; 財務省) |
0.3% (南アフリカ統計局; 財務省) |
0.7% (南アフリカ統計局; 財務省) |
物価上昇率(%) (出典元) |
4.6% (南アフリカ統計局; 南ア準備銀行) |
6.3% (南アフリカ統計局; 南ア準備銀行) |
4.8% (南アフリカ統計局; 南ア準備銀行) |
最低賃金 (出典元) |
不明 | 不明 | 不明 * |
労使紛争件数 (出典元) |
110件 (労働省) |
122件 (労働省) |
不明 (労働省) |
失業率(%) (出典元) |
25% (労働省) |
26.6% (労働省) |
27.7%(第2四半期) (労働省) |
法定労働時間 (出典元) |
8時間/日 (労働省) |
40時間/週 (労働省) |
時間外/割増率 通常の1.5倍 (労働省) |
休日/割増率 通常の1.5倍 (労働省) |
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通貨名:ランドとセント 0.070セント=約1ドル(2017年10月27日現在)
*最低賃金が全国経済開発労働審議会(NRFLAC)で審議され、2017年初頭に労働団体、政府、経済界の間で月額3,5000ランド(時給20ランド)で合意、現在議会で審議に入っており、2018年5月に全国最低賃金法として施行予定。
2.裁判所の構造、労働法制、社会保障の特徴
労働問題を扱う裁判所は、最高控訴裁判所、高等裁判所あるいは労働控訴裁判所、労働裁判所と3段階になっている。高等裁判所と労働控訴裁判所はどちらに訴えを起こしても良い制度になっている。
南アの主要な労働法令には、労働関係法(LRA)、雇用基本条件法(BCEA)、雇用均等法(EEA)がある。労働関係法は南アのすべての雇用労働者に適用される。軍隊に勤める人たちにも適用される。軍人にはスト権はないが、その他の権利は他の労働者と同じ権利を持つ。政府職員にのみ適用される法律として、公共サービス法がある。雇用均等法は反差別法とも呼ばれ、アパルトヘイト時代の不平等、格差改善に取り組むために制定されたもので、雇用において黒人、女性が優先されるとするものである。重要なのは雇用基本条件法で、労働時間など雇用時の最低労働条件を定めている。
社会的保護は、労働災害補償法、年金準備基金、失業給付基金など様々な法律に細分化されている。
3.インフォーマルセクター労働者の現状
南アでもインフォーマルセクター労働者は大きな問題となっている。労働法が適用されていないため、社会的保護がない。労働省は、法律上中小企業が労働法制を守っているかどうか査察する権限が付与されているものの、監督官の絶対数が足らないために査察の機能を果たしていない。現在、南アの3つのナショナルセンター(FEDUSA、COSATU、NACTU)はILOの支援を受けながら、インフォーマルセクターのフォーマル化の方法を確立することに取り組んでいる。
4.労働組合の直面する課題と取組み
南アはアフリカ大陸第2の経済を持つが、金、プラチナ、ダイヤモンド、石油などコモディティ中心の経済で、他の国と同じ問題を抱えている。鉱山の所有者は多国籍企業がほとんどで、利益至上主義の経営方針である。そのような方針の使用者の下で、紛争は時として暴力的ストに発展し、従業員が解雇され、組合員数が減ることになる。現在、鉱山では国有化の動きが進んでいる。
もう1つの直面する課題として、第4次産業革命がある。南アは分野によっては他の西側諸国と比べて非常に進んだ技術を持っている。しかし、デジタル化と雇用の問題のバランスを見いだしていない。ここで、技能育成課徴金法が非常に重要な意味を持ってくる。使用者は従業員が最新技術について行けるよう訓練を提供する義務を負う。この法律では、使用者は従業員の人件費総額の1%を政府に納めることが義務づけられ、従業員に適切な訓練を提供すればこの額が返還されるという制度になっている。
5.その他の特徴的問題
南アの労働市場は非常に活気があるにもかかわらず、経済が成長できないのは、政治が不安定だからだと労働組合は考えている。ズマ大統領の内閣改造に伴い、政治リスクが高まっていると判断され、格付け会社が南ア国債を格下げした結果、南アへの投資が減っている。大統領は月に2回も内閣改造を行っていて、使用者も労働組合もこれを非難し、経済の混乱を招いたのは大統領の責任だという考えで一致している。
経済に変化はつきものだとしても、経済発展の果実は国民に配分されるべきであり、指導者は責任を持ってそれを行うべきである。