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熾烈な弾圧の中、出口が見えないミャンマー労働運動

2026.04.10掲載

3月後半ヤンゴンを訪れた。思えば、スーチー率いるNLD(国民民主連盟)が複数回の選挙で圧勝し、民意が軍政から民主主義への転換を求めていることが明確になった1990年代から、NLDは一歩一歩自らの地位を固めて行った。この動きと歩調を合わせ、労働組合のナショナルセンターCTUM(ミャンマー労働組合総連盟)も前進した。しかし2021年のクーデターにより軍政に逆戻り、今ミャンマーは軍政からの出口が見えない暗闇の中にある。

政権側は昨年12月に選挙を行い、NLDがこれをボイコットする中、軍政の息のかかった政党だけの議会が出来、4月3日に軍のトップであるミン・アン・フラインを大統領に選出した。一方、市民生活は物価高の中苦しい。そもそも最低賃金が1万6000円と他のASEAN諸国と比べてもかなり低い中、ガソリン価格の値上がりが生活を直撃している。今給油所の前には車が長蛇の列で、タクシー運転手の話では「3時間列に並ばなければ、給油できない。結局収入を得られない労働時間が増えた」とのことだった。

私は数人のミャンマー人の友人がいるが、その中で今回ニュエンさん(仮名)と会った。彼女は1989年ラカイン州で生まれ、15歳の時ヤンゴンに来た。ミャンマーに8つある主要な少数民族の1つ、ラカイン族に属している。ヤンゴンに来た当初は言葉で苦労したと言う。例えば、ビルマ語で学校の授業が行なわれていたとしても、ヤンゴンのビルマ語をマスターするのは大変だったそうだ。

彼女の政治的立場は「反軍政」で、12月の選挙にも行かなかった。「友人も圧倒的多数が反軍政」と言う。ラカイン族には独自の軍隊、アラカン軍があるなど、少数民族問題の深刻さが察せられた。大学で工業化学を専攻し、食品加工会社に就職、その後、工業化学の会社で品質管理に従事した。最初の会社の給料は35万チャット(約1万6000円)、次の会社の給料は78万チャットに上がった。このようにミャンマーでは転職を繰り返すと給料は上がる。勿論「日本のように安定した仕事の方が良い。しかしミャンマーには安定した仕事はない。給与の額が職を選ぶ基準だ」とのこと。

しかし日本で働きたいとの気持ちが募り、昨年11月に仕事を辞め、今は日本語学校に通っている。私も大変驚いたのだが、今ミャンマーは大変な「日本語ブーム」である。人々は日本語を習得しようと学校に通い、オンラインの授業も盛んである。日本大使館で日本文化の理解促進に取り組む加藤岳書記官によれば、「ミャンマー人の親日度は大変高く、ミャンマーにおける昨年の日本語能力試験の受験者は約10万人である。これは中国に次いで全世界で2番目の数である。大使館としては日本歌謡のど自慢大会やスピーチコンテストなどを開催し、この機運を盛り上げている」そうだ。円安で日本の給料はそれほど高くないが、親日家が多く「日本は特別」という感覚が若い世代を中心に広がっている状況だ。

2021年の軍事クーデター後、諸外国は制裁を実施し、多くの多国籍企業が撤退した。日本は既存のODA供与を継続しているが、日本企業はレピュテーション・リスクを恐れ、進出を控えている。欧米市場で「ミャンマーの軍事政権を支援している企業」とレッテル貼りされ、ターゲットにされることを恐れているとのことだ。ニュエンさんに労働組合のことを聞くと、彼女の働いた会社に労働組合は無く、会社のHR(人事部)が同じような役割を果たしていたという。ナショナルセンターCTUMは全く知らないそうだ。

困難な状況にあるCTUM(ミャンマー労働組合総連盟)

2021年の軍事クーデター以降、CTUMは極めて厳しい状況下にある。「政治的な話は。。。」と誰もが口をつぐむことは、この国では言論の自由が保障されていないことを意味する。

労働組合が勢力を温存し、発展を図るには、言論の自由があることが前提条件であり、ミャンマー国内では労働組合活動は実際にはほとんど見られない。組合リーダーの多くは国外に亡命しており、そこからミャンマー国内に影響を拡げようと努力している。

2025年2月CTUMは第3回全国大会を開催し、183人が参加し、新執行部を選出した。この大会は、CTUMが健在であることを国際的にアピールする意味でも重要だった。なぜなら今軍政はCTUMがミャンマー国内で活動できないことを利用し、MLC(ミャンマー労働会議)という団体を作り、巧妙に労働組合を演出している。

政府系紙では、MLCが主導し、民主的にストライキが行われたたということが報道されている。ヤンゴンのラインタヤという繊維産業を中心とする工業団地で、2021年のクーデター以降、労働組合の徹底的な弾圧があった地域でも起こった事件がある。

「2025年1月MLCは組合教育ワークショップを開催したが、これは事実上CTUMの金属産別IWFMの大会であり、親軍政の旧メンバーを指導部に押し出すためのものだった。」(インダストリオール2025年2月「軍政はCTUMとパラレルの組織を作り、正統な組合を攻撃する」)今軍政は「ミャンマーは普通の国」というキャンペーンを国際的に展開しており、労働組合という領域でもMLCがあるという建付けである。

国内での影響力を失っているCTUMにとっては非常に厳しい現実がある。
我々は軍政で仕方がないという現状追認に陥ることなく、現実をしっかり把握していく必要があろう。(I)

以上