2025年 インドの労働事情(インド・スリランカチーム)
以下の情報は招へいプログラム「インド・スリランカチーム」参加者から提出された資料をもとに作成したものである。
1.取り組みを進めている最近の課題について
ITUCの取り組み
課題と取り組み
課題
- 労働時間 労働者はしばしば適切な報酬無しに長時間労働を強いられる。
- 最低賃金 未組織労働者の賃金は低く、最低賃金割れさえ発生している。
- 社会保障 インフォーマルセクターで働く人々の多くは有期雇用、ないしは日雇いで、実態として、健康保険、年金、出産手当など、社会保障制度による保護を受けることができていない。
取り組み
- インフォーマルセクターの労働者を組織化する努力を続けている。組織化することで、プラットフォームを通じたギグエコノミーに従事する多くの労働者の労働条件の改善や雇用保障に繋げることを目指している。とはいえ、労働者は様々な分野に分散しており、困難な取り組みが続いている。
HMSの取り組み
全インド防衛産業労連(AIDEF)の取り組み
- 軍需品製造部門の法人化について
2021年、インド政府は軍需品製造部門(兵器工場)を法人化する方針を閣議決定した。その上で、兵器工場を7つの防衛法人に転換することを通知した。以降、AIDEFはこの一方的な決定に対する抗議行動を行っている。法廷闘争も行っているが、未解決状態が続いている。法人化されると組織は政府機関のままであっても経営者が民間となる。すなわち、民営化の一歩手前の段階を意味しており、民営化に反対の立場にある労働組合としては、その前段階の位置付けである法人化にも反対している。
- 確定給付型年金から確定拠出型年金への移行について
2004年1月、公務員に対して、新たな確定拠出型年金であるNPSが導入された。AIDEFをはじめとする主要労動組合は、これに一貫して反対し、全国的な抗議活動を展開してきた。というのは、旧制度は、給付額が約束されている確定給付型で、最終給与額の半額が年金として保証され、インフレ対応や遺族年金なども制度化されていた。また、拠出は政府のみで本人拠出はゼロであった。しかし、NPSは市場に連動して給付額が変動する確定拠出型で、給付額は不安定かつ不十分で、加えてサラリーの10%の本人拠出が求められることとなった。その後、政府は複数回にわたり制度改定を行ったが、労働組合がNPSへの反対の姿勢を変えることはなかった。
こうした経過をたどった後、2025年4月1日に、インド政府は新たな制度として「統合年金制度(UPS)」を導入した。この新制度は旧制度とNPSとのハイブリッド型で、旧制度の要素も取り入れたものだが、このUPSに対しても全ての公務員が反対を貫いている。
BMSの取り組み
インド政府は2019年から2020年にかけて労働法制について、29の個別法を4つの労働法典へと再編したが、その下で、労使関係法典と労働安全衛生・労働条件法典については労働者に不利益となる改定が盛り込まれた。そのため、それらについて改正するよう、政府に求めている。
改正が必要な領域は、雇用保障、労働法の適用対象となる企業の規模の基準、ストライキ権行使要件、労働組合の権利、契約労働者や工場労働者の労働条件である。
2.直近に発生した労働争議について
INTUCの事例
- ビハール州などでは、州政府が労働時間を1日8時間から12時間へと延長するという労働条件の悪化を招く提案を行った。これに対し、某有力実業家に至っては、労働時間を「12時間から15時間の範囲」に設定することを表明した。こうした動きに対し、労働組合は強く反対した。結果的に、州政府が労働時間改悪の通達を撤回することで決着した。
- インド政府による反労働者的な政策に反対する労働組合の取り組みが続いている。(BMSを除く)中央レベルの主要労働組合10組織が共同の連合体(共同プラットフォーム)を結成して取り組みを進めており、大々的にキャンペーンを展開している。7月9日には全国レベルでのゼネストが予定されており、とりわけ、団体交渉権の弱体化や解雇規制の緩和を狙った労働法改正への反対、雇用保障制度の改善(農業における雇用制度で、年間の就労保障日数を100日から200日に引き上げ)要求、最低賃金と社会保障の全労働者への適用実現要求などが掲げられている。
